その6 本当は強いのよビアシンケンにゃ!
ジガンテスカ王の城の一部が倒壊する様子を見て驚愕する各地にいるロルフ、アリア、テオの軍の前に魔物大群が押し寄せてくる。
アリアの前に獣人を中心とした魔物軍が押し寄せ開戦する。
怒号と地響きがぶつかり互いに血を流す中、それぞれに強き者同士がぶつかり始め戦場に華を咲かせる。
「我が名は灯火の魔王ビアシンケン様の側近が1人ボローニャ! 名のある戦士とお見受けした。名を聞かせてもらえぬだろうか?」
銀の鎧をまとったボローニャが1人の戦士に名を名乗ると戦士は答えてくれる。
「魔物にも礼儀正しい者はいるのだな。私の名はジガンテスカ王国・魔法軍の ルミー・エリクソン!」
名乗り終えると2人が剣をぶつけ合い激しく火花を散らす。そこにアリア軍の魔法兵士がボローニャに魔法を放つがもう一本手にした剣で掻き消しながらルミーとの戦闘をこなしていく。
「ぬるい、ぬるい! ペンネ様の魔法に比べたら蝋燭の火にそよ風レベルだぞ!」
魔法を放つ兵士たちが次々とビアシンケン軍に討伐されていく。
「なんだこの魔物たちなんでこんなに強いんだ……」
ルミーが驚きの表情を見せるとボローニャが笑いながら答える。
「この数日、魔王シシャモ様方に鍛えられた我々がお前ら人間に遅れをとるわけがなかろう! あの地獄を生き残った我々の中に弱者などおらぬわ!」
ボローニャの剣がルミーを切り裂き絶命させる。
「いくぞ! 我々の力を見せるのだ!!」
「おおぉぉぉぉ!!」
ボローニャの掛け声で軍が進軍する。
***
アリア軍の兵士が振るう剣ごと風の魔法ので切り裂くローブを羽織った女性の獣人は刀を構える。
「なんだこいつ、刀に風を這わせいるのか。それにしては切れ味がはんぱないぞ」
腰が引けている兵が真っ二つに切られると周囲の兵たちも次々と切られていく。女性の獣人は血を払うと刀を構える。
「我が名は灯火の魔王ビアシンケン様の側近。そして花の剣士ファンクラブ会長のウィルだ!! この燕様から指導頂いた剣技とくと味わうがいい!!」
ウィルが刀を華麗に操り兵たちの屍を築いていく。魔法以上に剣技の才があったウィルだが短期間でここまで強くなれたのは熱い思いあればこそである。
***
魔物軍が優勢な戦況を見てアリアが立ち上がると試験管を取り出す。以前の緑色と違い赤い液体が入っている。
『血異闍薬DX』レベルは140まで上がるが制限時間は2時間。レベルが戻ったときの身体への負担が大きいのが特徴だ。
「正直これを飲んでも魔王シシャモに勝てる気はしないけどねえ」
そう言いながらもアリアが血異闍薬DXを飲み干すと戦場へ向け業火の炎を放つと魔物たちを跡形もなく吹き飛ばす。
そのまま単独で戦場へ突っ込むと燃え盛る杖を刃とし魔物たちを次々と切り裂き消し炭に変えていく。
そんなアリアの姿に勢いを取り戻した兵たちが魔物に襲いかかる。
「ジガンテスカ王国の魔法軍統括アリアドナ ・ サリナス。通称『業火のアリア』魔物どもよ恐れを知らぬならかかってくるがいい!!」
名前の通り戦場に業火が舞い魔物を散らしていく。
魔物たちの勢いを削ぐ業火の火球がアリアから放たれるが突然現れた大きな剣に弾かれ空に飛び爆発する。
身の丈の3倍はあろうかという剣を軽々と操るトラの獣人。
「俺は灯火の魔王ビアシンケン・メガロ。業火のアリアよ覚悟しろ」
「はん、あんたも魔王かね。魔物ってのは王だらけなんだねえ」
大剣と業火の杖がぶつかると炎が周囲にほとばしり草木を燃やしてしまう。
「その剣はなんだい、普通の剣はこの炎で溶けているはずなのに」
「この剣は魔王シシャモ様より譲り受けた俺専用の剣『
炎を剣の力で強引に消すその力強い剣技に業を煮やしたアリアが兵たちに叫ぶ。
「お前たち下がれ! このままでは本気が出せん巻き込まれたくなければ下がるのだ!」
その言葉に兵たちが下がり始めるとアリアの炎が大きく燃え上がり始める。
「これであんたに勝ち目はないなよ魔王さん!!」
アリアが燃え盛る赤き太陽を作り出すとビアシンケンに落とし燃やし潰す。
『超固有技 業火日輪』
凄まじい炎が吹き上がり空に火の粉が舞散る。その業火が大きく吹き上がると消えてしまう。
「くははははは! 熱いな! なかなかの攻撃だったぞ!」
深く抉れた地面の中心に身を焦がしながらも豪快に笑うビアシンケンが立っている。それなりにダメージは受けているがまだ戦えるといった感じで剣を振り回す。
「なぜ……この技を耐えれるレベル差ではないはずだよ! あたしのレベルは140どう考えてもおかしいだろ」
信じられないといった表情のアリアを笑うビアシンケン。
「ぬははは、俺のレベルは100だ。ボーナスで1増えたがこれでカンストだ。お前とのレベル差は40だな」
「40の差を埋めるものなんてないだろう! なにがあるってんだい!!」
アリアが叫ぶと抉れて地面から土を払って4人の人影が現れる。
「単純なことよ。俺とこの4人で受け止めただけだ」
「ボローニャ」
「ウィル」
その2人に加え巨大なバイソンの魔物を使役するテイマーの「デラ」とビアシンケンの兄「モルシャー」がそれなりのダメージは受けているが皆が武器を構える。
「全員レベル99でカンストだ。お前たち人間は自分のレベルが抜かれることを恐れていないか? 自分が強者であり続けようとしてないか。お前は自分の兵に逃げろと言ったが一緒に戦うそんなことを言う奴が1人もいないとは底が知れるわ!!」
ビアシンケンが大剣を構えるとまさに虎が飛びかかる勢いそのものの姿で剣を振るう。
『必殺技
大剣による乱舞技。その大きさを感じさせない豪快で速い乱舞を懸命に受け続けるアリア。
(レベル差でもっているがこのままでは……)
その勢いに受け続けるしか出来ないアリアが耐え続けるが左腕に鋭い痛みを感じる。見ると刀を振るうウィルの姿が気がつくと5人に囲まれお互いの斬撃を当たらない様に振るいながらアリアの身を削っていく。
レベル差を上回る5人の斬撃でダメージを受け始めるアリアは遂にビアシンケンの大剣の刃が突き刺さると振り抜かれ叩き斬られる。
薄れゆくアリアの意識
(ここでおしまいだねえ。シンツイア逃げておくれよ──)
アリアが討伐され隊列を崩しバラバラになる兵たちに魔物が襲いかかる。それを見たビアシンケンは大剣をアイテムボックスに納める。
「お陰で助かった。俺1人じゃ敵わなかっただろう」
堂々と4人にお礼を述べるビアシンケンの姿に兄モルシャーは少し嬉しそうに微笑み、3人は少し照れたような表情をみせる。
「よし、まだまだいくぞ!」
ビアシンケンが気合いを入れ戦場を蹂躙していく。
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