魔王シシャモのいる世界にゃ!!

その1 シシャモ島と魔王シシャモ城にゃ!

 落雷と共に現れた6人+1人に島民達が気付き集まってくる。

 落雷=シシャモ登場のイメージに文句をつけるスピカをバトがなだめると落ち着いたスピカは帰っていく。見送った後、城に向けて移動する。


「にゃんか賑やかになってないかにゃ? 町ってこんな感じだったかにゃ?」


 シシャモが首を傾げポムは落ち着かないのかキョロキョロしている。


「なんだありゃあ」


 ポムが口をポカーンと開けて見る視線の先には立派に建て直された教会があった。

 丁度ドアが開くとライムが出てくる。


「おや、さっきの雷はやっぱりシシャモ様御一行かね。ポムも元気でやってるみたいだねえ」

「いやそれよりばあさん、この教会どうしたんだ? なんで建て直してるんだ?」

「なんでって、おかしなことを言うのねポムは。この教会は魔王シシャモ軍の1人ポムの実家で魔王シシャモ本人が泊まった由緒ある教会なんだから綺麗にするのは当然じゃないか」


 そう言いながら教会の扉を開け中を見せてくれると中も勿論綺麗なのだが真ん中にあった古い女神像がなくなりシシャモの像が据え付けられていた。


「にゃ、にゃんにゃこれ……」

「シシャモ教だよ。何でも岩など固いものを叩きながらにゃーにゃーいうのが始まりとか砂漠の民が言っておりましたよ」


 ライムの説明に何となく思い当たる節のあるシシャモはそれ以上は突っ込まない。


「紅葉さまー!」


 後ろから聞いたことのある声がして振り返るとマオカが新しい服を着て立っていた。


「可愛い服だね。買ってもらったの?」

「そうです! 紅葉様に見せたくて急いで来たんです」


 マオカが嬉しそうにくるっと回り紅葉に見せている姿をみてポムがライムに訪ねる。


「おい、ばあさん。あんな服この島で手に入ったか? 見たことねえけど」

「そりゃあ、あんた洋服屋で買ったに決まってるじゃない。商店街にいけば手にはいるからね」

「商店街だあ? 朝市しかないボロボロのとこだろ? あそこに服なんて」


 信じられないのか声の大きくなるポムの前にマオカが立つと指をビシッと差す。


「ポム様、時代は流れています。いつまでも昔のままの島ではありません。ここは魔界大陸を支配する魔王シシャモ様の住む『シシャモ城』がある『シシャモ島』ですよ。発展するのは当然です!」

「お、おう。すまない……」


 マオカに圧され謝まってしまうポム。勝手に名前が決まってることに突っ込む気にもならないシシャモは城に向かうように促し再び歩きだす。


 城に近付くとスケルトンを中心としたアンデット系のモンスターが城を建設していた。シシャモたちに気付いた黄泉の魔王グラープがそそくさと近付いてきて深々とお辞儀をすると建設中の城の説明をして案内を始める。


「どうでしょうかシシャモ様。お気に召しましたでしょうか?」


 建設中の部屋を除きおよその説明を終えたグラープがシシャモに恐る恐る訪ねる。


「ちょっと派手すぎだけど良いにゃ。やっぱりグラープは迷宮より建物を作る方が向いてるにゃ。

 さっき町を見てきたけどあの建物もグラープの配下が作ったにゃ?」

「はっ! お褒めに預かり光栄です。町の方はビアシンケンと話し合い建設しました。町のことは奴の方が詳しいですから」


 シシャモに誉められ上機嫌のビアシンケンが嬉しそうに答える。


「何だかんだで仲良くやってるみたいで良かったにゃ。今後の計画でお前たち3人が必要となるから助かるにゃ」

「私たち3人がですか?」

「3人揃ったら説明するにゃ。今は無理せず頑張れにゃ」


 手をあげて去るシシャモに深々とお辞儀をして見送るグラープ。


「なんか落ち着かねえな。みんな嬉しそうだから良いけどよ」

「ちょっと見ない間にこんなに発展するんだね」


 ポムとペンネが話ながら廊下を歩くと6人の前に熊の魔物の一団が現れる。5体の熊の魔物はシシャモ達を見ると跪き頭を下げる。

 真ん中にいるピンクの毛の熊が顔を上げるとシシャモに挨拶をする。その左目には深い傷が縦に入っており迫力ある顔をしている。


「魔王シシャモ様、私はベアーぐま族のおさのクマミと申します。ご無礼だとは知りながら城にて待たせて頂きました」

「クマミ? どっかで聞いたようにゃ……」


 首を傾げ思い出そうとするシシャモにクマミは話を続ける。


「魔界の森に住む我らベアーぐま一族、魔王シシャモ様に忠誠を誓いたいのです。お許しを頂けないでしょうか」

「にゃ? 忠誠? めんどくさいにゃあ。まあ好きにするが良いにゃ。今度人間の大陸に攻めるから気が向いたら参戦してくれにゃ」

「ありがとうございます! 是非とも人間どもとの戦いに参加させて頂きます。では我々は準備を致しますので下がらせて頂きます」


 クマミたちベアーぐま一族がお辞儀をすると足早に去っていく。


「なんかシシャモのこと大陸中に広まってるんじゃない?」

「ビアシンケンのときからすでに有名になっちょったっぽいし。3代魔王まで従えた今シシャモに従う魔物は多いんやないのか」


 紅葉とバトの言葉に嬉しそうな顔をするペンネ。そんなどや顔風のペンネに触れないシシャモ。


「この作戦が成功して最悪な魔王を倒せれば終わりが見えてくるにゃ。この作戦の為にも従う魔物は多い方がいいはずにゃ。あたしはとっと終わらせて元ののんびりした生活に戻りたいにゃ」


 少し間が空いてボソッとシシャモが呟く。


「……無理な気もするけどにゃ」


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