その22 魔界大陸分断作戦にゃ!

 紅葉がモニターを開き草原の一部に線を引く。


『スキル発動』


 1、モミジーマップ(※クールタイム+10分)

 2、火属性強化

 3、爆発範囲増加

 4、クリティカルUP

 5、衝撃波追加


 紅葉がスキルを発動すると空に空間の歪みのようなものが現れる。


「これは流石にノーモーションでは出てこないみたいだね」


 紅葉がスキルを発動した頃、魔界大陸の草原に怒号をあげながら勢いよく攻め込む大量の兵たち。

 その頭上に巨大な白い筒が大量に落ちてくるとその筒は地面に刺さったり転がったりして大陸に1本の白い線を引く。

 その大きな筒の下敷きになったりして犠牲になる者はいるがその攻撃事態の威力はあまりない。


「バトお願い!」

「まかしとき!」


 バトが両肩にビーム砲を展開すると狙いを定める。


『必殺 バトキャノン』


 2本のビームが壁の上から放たれるとまっすぐミサイルに向かっていき弾頭部にヒットする光と熱と轟音を撒きながら次々と爆発が連鎖していく。その威力は紅葉のスキルの力が加わり自警隊が想定しているものと比べ物にならないものであり大陸の地面を大きく破壊する。


 遠くで起こる爆発の熱と風がシンツィアの方まで吹き荒れる。


「なんの魔法だこれは……これほどの威力見たことがない……」


 ミサイルの威力に驚くシンツィアを他所にバトが叫ぶ。


「紅葉! もう1度や! 流石に大陸を壊すには1撃ではいかん」

「りょうかーい! 丁度時間経ったからいけるよ」


 再び落とされるミサイルとビームによって草原の一部が大爆発を起こす。大地が割れ海水が流れ込み始める。その大陸の両端に空から降りてくるペンネとポム。


「いくよ!」

「おうよ!」


 2人が通信で息を合わせ必殺技を放つ。ペンネの水の魔法は大きな渦を産み出し大地を削りながら中央へと進んでいく。

 ポムが放つ弾丸で起こすウンディーネの大波も大地を削り中央へと進んでいく。

 2人の起こした水の流れが中央でぶつかり大きな水しぶきをあげる。


「大陸を分断したのか。そんなバカな。ここまでの力が魔物たちにあるというのか」


 シンツィアと兵がその光景を見ることしか出来きず佇んでいると燕が刀を鞘に納める。そして紅葉とバトがのっている大きな壁が消え落ちてくる紅葉をバトが受け止める。


 シンツィアと対面するように3人が横に並ぶと更にその両端にペンネとポムが降りてくる。

 並ぶ5人の魔物に怯えるシンツィアたちの前に落雷が落ちるとネコの獣人が立つ。


「あたしが魔王シシャモにゃ。そこのお前、よく記録しておくにゃ。そしてお前たちの王に伝えろにゃ。魔王シシャモが来るから怯えてろとにゃ」


 シシャモに指を差されるシンツィアはその圧倒的な存在感に威圧されるてしまう。

 シシャモがベルトを腰に巻きドラゴンモードに変身して空中をソッと触れた後拳に力を込める。


『必殺 描撃紅蓮竜波びょうげきぐれんりゅうは


『スキル発動』


 1、変身補正上限突破 1分間(シシャモ、ペンネ専用)


 1分間だけレベル800となるシシャモの放つ必殺技はシンツィアの左側にいた兵たちを全て消し去る。

 その後も一撃のパンチで百数人という単位で人の命が消えていく。先程まで燕が華麗に舞うように戦っていたのとは正反対に力で粉砕していくその戦いかたは突き抜けた美しさすら感じる。

 丁度1分間、数万人いた兵たちは誰もいなくなりシンツィア1人だけが立っている。

 震える足を押さえながら放つ雷撃はシシャモに手で軽く払われてしまう。


「ま、魔王シシャモ。他の兵は、先発で進軍してきた兵たちはどうなった?」


 震えながらもシンツィアが言葉を発することが出来たのはエトを思えばこそかもしれない。


「人間はお前と後方にいる隊を残して全て全滅させたにゃ」

「う、うそ……」


 ガックリと力なく崩れ膝をつくシンツィアにシシャモは冷たくいい放つ。


「お前の役目は王に伝えることにゃ。ペンネ連れていくにゃ」


 放心状態のシンツィアの襟の辺りをペンネが掴むと魔方陣を描き後方の部隊の場所まで転移し驚く兵たちにむけ投げるとすぐに戻る。


「ペンネ、お疲れさまにゃ」


 戻ってくるなりシシャモに抱きつくペンネをねぎらう。


「みんなもお疲れさまにゃ、ついでに性悪女神もにゃ」

「ついでって適当な扱いじゃないの。一応シシャモが邪悪な魔王を倒すって名目で手助け出来る範囲でやってるけどさ、これって大量虐殺じゃないの。勇者とは言い難いわ」


 端っこでふて腐れるスピカが文句を言うがシシャモは平然とした顔で答える。


「そもそも勇者になった覚えはないにゃ。

 それにあっちが攻めてきたにゃ、魔王があっち側にいる以上あぶり出してこっちから攻めるきっかけが必要なのにゃ。人間たちも攻められても仕方ないと納得する要素になるし王の責任を攻める理由にもなるにゃ。

 つまり攻め終わった後王が魔物を刺激した為に起きた争いだから魔物に手を出すのはやめておこうって意見が出るのが期待できるにゃ」

「む~誰よそんな知恵つけるのは」


 スピカがバトを見るが目を反らされる。


「まあ、これからあたしたちの城に行って宣戦布告して人間側に攻め込むにゃ。こっちの魔王を倒して、アースの魔王も倒して終わりにゃ!」

「とっと終わらしてよ。最近私さあ、ただの移動と演出係になってない?」


 頬を膨らませるスピカの背中をシシャモがポンと叩く。


「その通りにゃ!」

「なんですって!!」

「いいから早く城に送るにゃ」


 怒る性悪女神をおちょくる鬼畜ネコの見慣れたやり取りを聞きながら転移する6人+1人。

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