その20 召弾天使(紅葉命名)にゃ!
ペンネの襲撃を受けその実力を見た兵たちには逃げるしか選択はなかった。
木々の間をほぼ無音でニコライの兵たちは海岸の船を目指して移動する。
ピチャッと水が跳ねる音がする。1人の兵がミスして水溜まりを踏んでしまった皆がそう思った。
天気もよく木漏れ日が心地よく降り注ぐ森この中、兵が足元を見ると足が水に使っていて辺り一面大きな水溜まりが出来ていた。
「み~つけた~♪」
のんびりした声とは反対に機敏な動きで水面を滑り木々の間を縫うようにやってくるウンディーネは次々と兵を切り捨てていく。
兵達が応戦しようとするが水に足を取られ動くことが出来ない。もがく彼らを待つのは水面を滑り華麗に舞う美女に斬られる未来だけ。
『必殺
ウンディーネが舞った後に動くものは誰もいない。いや、倒れ死んだ兵たちに茂みから獣型の魔物が飛び出し血肉をむさぼり始める。
「食物連鎖? よ~し次にいきましょう~」
魔物を後にして次の兵たちを探しにいく。
***
木の上を飛びながら移動する集団。彼らは跳躍などのスキルを持ちその能力を生かして高い場所を跳びながら移動することに長けている集団である。
その隊の小隊長が無言で手を上げると皆が止まる。木の枝の上で皆が周囲を警戒する。
「羽の音か……魔物がいるのかも──」
喋っている途中で隊長の体が斜めにずれながら地上に落ちていく。
そこからは一瞬だった。動くことも出来ず皆が真っ二つに切られ全滅する。
「じゃーーんおいら登場! ってあれ? 誰もいないや」
シルフィードは怒りながら宙をくるくる回ると移動を開始する。
「つぎ、つぎーーマスターの為においらは働くぞーーと」
***
「なんか寒くないか」
海に近い森の後方で陣取る冒険者達は急に冷える空気に空を見上げる。太陽の光を反射させながら氷の欠片がパラパラと降ってくる。
その氷を見張りの男が手のひらにのせると体温ですぐに溶けてしまう。
「なんだ? 雪ではないが、おいそっちはどうだ?」
皆がいる方を振り返ったとき右手に痛みを感じる。
「叫んで……」
突然現れた狼の獣人に腕を斬り飛ばされ男は悲鳴を上げる。悲鳴を聞いた冒険者達が集まり始めたその間を縫うように走り抜け集団の外に出ると姿勢を低く構え両手を大きく広げ宙を引っ掻くようにして前で手を交差させる。
『必殺 グレイシャーウルフ』
大きな氷河のような氷は狼の口の形を作り冒険者達を押し潰しながら移動する。
最後に大きく広げた口を閉じ冒険者達を噛み砕いてしまう。
その攻撃から逃げた冒険者達をフェンリルが凍らせ切り刻んでいく。
「わおーん……」
動く者がいなくなった森でフェンリルがぼそっと遠吠えをする。
「テンション上がった……」
それだけ言うと氷の破片が舞いフェンリルが消え別の場所へ移動する。
***
魔界の森を回り込み後方から攻撃を仕掛ける為ニコライ率いる兵はジガンテスカ大陸の港から船を2隻出していた。
ニコライ達の帰りを待つ守りの兵たちは後方ということもあり気が緩んでいたのもあるが突然の攻撃に慌てふためくことになる。
そしてそれは今まで経験したことのない状況だった。船上にいるジガテスカ国の兵の1人が崩れ落ちるて倒れる。
攻撃がどこから来ているのかも
対魔法障壁を張っても関係なく突き抜け攻撃は続けられる。
「船内に逃げろーー!」
誰かの合図で皆が船の中に入り敵の攻撃を凌ごうとする。
外に出る扉を締め切った為中は薄暗い。バーン! っと音をたて木で出来た船の壁に穴が空く。数回音が響きその内1回1人の兵士の足を貫き、その兵士は血を流しながら唸っている。
その横で縦に並ぶ赤い魔方陣が浮かび上がったと思った次の瞬間燃え盛る魔物が現れ太い拳を振り周囲の兵たちを焼き払う。
突如現れたイフリートにパニックなる船内。そこから逃げ出し再び外に出ると隣の船も同じく船上に兵たちが逃げ出しているところだった。
1人の兵が空を見上げるのにつられ皆が空を見る。
そこには緑色の羽を広げ宙に浮く魔物の少女が空から見下ろしていた。
「ウンディーネも終わったか。こっちに戻ってこい。一気に片をつける」
ポムはウンディーネと念話した後下を見下ろすし大きく息をすう。
「いいかお前ら! よく聞けあたいは魔王シシャモ軍
赤い稲妻を体に走らせ始めるとポムの周りに3つの光が集まり体にぶつかって弾ける。
『超必殺技 4精霊ブレンディング』
赤髪に変わったポムが銃弾を海面に次々と撃ち込むと2隻の船を囲むほどの大きな魔方陣が描かれる。
『超必殺技
水面がせりあがり水が龍の顔を作り出し2隻の船を大きな口が噛み砕き飲み込んでしまう。
4つの光が体から出るとポムが地上に着地する。ポムを挟むように4人の精霊が並ぶ。
「今回もお疲れ。もう一仕事してもらうからしばらく休め」
ポムの命令で4人が足元に魔方陣を描き消えていくとジガンテスカ大陸の方を眺める。
「ペンネはもう行ったんだろうな。あたいも……ん? ああそうかすぐ行く」
ポムがシシャモからの連絡を受けてルイの治療に向かって飛ぶためシルフィードを呼び出す。
「すまん、すぐに移動したい。力を貸してくれ」
「お安いご用ですぜい! おいらに任せなマスター」
羽を生やしたポムがシシャモの方へ向け飛び立つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます