その13 アースの魔王にゃ!

 弟子屈カンパニーの正面玄関を突き破りシシャモ達が乗り込んでくる。

 警備員がシシャモのベルトより一回り小さいベルトを腰に巻くと一斉に変身する。黒いヘルメットに全身タイツみたいなスーツ。


「量産型って感じだにゃ」


 シシャモの振るう拳に次々に量産仮面(シシャモ命名)が飛んでいく。

 歩くシシャモに大量の銃弾が飛んでくるが炎が大きく渦巻くと全て消し去さってしまう。

 シシャモの横を歩くペンネが銃弾を放つ隊員に向かって雷撃を放ち一帯を吹き飛ばす。


 目の前のドアを吹き飛ばして現れる大型2束歩行のロボ。真ん中に量産仮面が座って操縦しているのが確認できる。

 その両手のガトリングが回りだす間も無く切り落とされ燕が鞘に刀を納めると同時に縦真っ二つに切れ崩れ落ちる。


 壊れたドアにポムが滑り込むと銃弾をばらまき待ち構える警備兵を撃ちながら精霊を召喚し部屋を制圧する。


「マスター……建物の奥に一部の人間しか入れない場所あるって……」


 フェンリルがぼろぼろになった1人の男を引きずってポムに伝える。


「そうかありがとよ。シシャモ聞いたか? そこ行ってみようぜ」


 シシャモが頷き4人が進む先にある扉。セキュリティーの端末があり指紋や虹彩認証を求めてくるが燕が扉を切り裂き中に突入する。


 中はシンプルなモニターと壁に赤いランプが付いたヒクイドリの絵が掛けられている。

 4人が並ぶと同時に赤いランプがピコンピコンと音を出し光りながら喋りだす。


「よく来たな異世界からの来訪者達よ。ここまでたどり着けたことは誉めてやろう。だが私を倒すことは出来ないぞ」

「そうかにゃ。そんなことよりお前は昔、神様だったりするのかにゃ?」


 シシャモの質問に思考でもしているのか光が消えしばらくするとピコンピコン光り始める。


「ここまで来た褒美だ、教えてやろう。その通り私はもと神だった。追放され生まれ変わった姿がこの姿というわけだ」

「一応聞くけどにゃ、あたしらの世界の魔王については知っているかにゃ?」

「くっくっくっく、龍輝が言っていたこととのすり合わせなら思っている事と違うぞ。お前らの痕跡を辿ってそっちの世界に行っただけだ。あっちの魔王など知らぬ」


 赤く光るランプが消えると周囲に量産仮面とバト後継機FCM―01が並ぶ。モニターに大きな目が1つ表示されると頭上から武器を持ったアームが降りてくる。


「いくにゃ!」


 シシャモの掛け声で4人が散開し戦闘が始まる。

 圧倒的な戦力に数で挑む敵の攻撃、量産仮面の数が減り始めると蜘蛛型ロボが投入され辺りは激戦となる。


 燕の刀が全てを切り裂き時には峰が打ち込まれ周囲の敵が次々と倒れていく。


 ペンネから放たれる炎は燃やしながら敵を凍らせ吹き荒れる風と共に雷鳴が鳴り響く。そして水は全てを飲み込んでいく。


 ポムの放つ銃弾の隙間を器用に滑りながらウンディーネとフェンリルが切り裂き、銃弾を爆発させながら豪腕を振るうイフリートに宙にいる敵をかき回し切っていくシルフィード。


 そして全てを拳と蹴りで破壊していくシシャモ。大型のロボットを拳で殴ると、ロボはそのボディをへこませながら周囲の敵を巻き込み吹き飛んでいく。


「ペンネさま……」

「ペンネさま~」


 フェンリルとウンディーネが地面を滑りつつペンネを呼ぶとペンネが氷の矢と水の矢を2本つがえ弓を引きはじめる。

 放たれる2本の矢をそれぞれ掴みクロスするように滑っていくと水と氷の大きな波が発生し通った場所を全て流し、凍らせていく。


『合体技 水氷交差』


 大きく戦力を削られ怯む敵に燕が刀を構えると燕に向かってイフリートが炎を吐く。その炎絡めとるように刀を抜き放つ斬撃。


『合体技 業火八閃』


 燃え盛る斬撃が残った戦力を切り裂き燃やす中ドラゴンモードのシシャモが拳に力を入れ構える。

 その周りをくるくる回るシルフィード。


「シシャモさまいくぜい!」


 シシャモの拳の周りを回ると風が舞い始めそのまま放たれる技。


『合体技 暴風ぼうふう描撃紅蓮竜波びょうげきぐれんりゅうは


 暴風を纏った炎の渦がモニターの目玉に直撃し周囲を全て焼き付くす。


「ははははははははは、最初に言ったであろう私は倒せないと!!」


 赤いランプが点滅する。


「ありきたりだがこの建物と共に死んでもらうぞ」


 周囲に分厚い鉄の壁が下ろされると閉じ込めれる4人の目の前のモニター1つにタイマーが作動したことを示すカウントダウンが始まる。


「この分厚い壁の中での大爆発だ。さしものお前たちでも死はま逃れまい!」


 勝ち誇ったような笑い声を気にもせず、赤い稲妻を放つシシャモが拳に力を込め力を溜めると天に向かって拳を突き出す。


『超必殺 天猫昇雲突てんびょうしょううんとつ


 赤い稲妻を纏う暴風の様な赤いエネルギは渦巻き天井を突き破り建物をぶち抜き夕暮れ時のオレンジの雲を吹き飛ばしてしまう。

 4人が建物の中から飛び出してすぐに爆発が起き建物が倒壊していく。


 〈シシャモくん、ご苦労様。スピカさんの言った通りさっき討伐の瞬間大きなエネルギー移動を観測出来たよ。これを辿っていくにヤマギーのメインバンクへ移行したみたいだね〉


「性悪女神の予想通り精神体を分裂させてるわけにゃ」


 〈そうだね、だから一斉にこのアースの魔王が潜伏していると思われるコンピューターを破壊して追い詰める必要があるね。その場所の特定と最終的に追い込む魔王ホイホイを作る必要があるからもう少し時間くれるかな?〉


「いいにゃ。相手が見えただけでも前進にゃ。あとはあっちの魔王を追い詰めれば分かることもあるはずにゃ」


 シシャモが窓際との通信を終えた丁度そのときビルのモニターに紅葉のアップとシシャモ達の目の前にある弟子屈カンパニーが燃えている映像が映される。


「ふははははははは! いいか人間ども!! 我らに逆らう弟子屈カンパニーは全滅させた。そしてこれからも我々の攻撃は続く! 発電所やメインコンピューターなんかも壊してしまうぞ!! 停電とかインフラの障害が起きたり食料も手に入りにくくなるかもしれないぞ! 備えておかないと困るぞ!! 避難経路や場所も把握しておくのだ! よく準備し備えて覚悟して怯えるがいい!! ぬははははははは──」


 紅葉の笑い声が響きモニターがぶつりと消える。


「にゃんかノリノリだけど、最後おかしくなかったかにゃ?」

「紅葉殿らしくいいとしておこう」


 それ以上突っ込むのはやめる4人は紅葉達と合流するために移動を開始する。

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