その11 紅葉とバト潜入にゃ!
──自警隊基地
「うっ」
短いうめき声がして男が倒れる。廊下を歩く銃を持った2人の男の頭上から銀色の手が伸びて掴まれるとぐったりし、そのまま天井裏へ連れ込まれる。
物音に気づいた男達が銃を手に持ち駆け寄るがいつの間にか背中にいたバトに針を刺され眠りにつく。
その男たちを抱えると違う部屋に投げ入れる。
「紅葉こっちの経路は確保した。次のエリアに行ってもええか?」
〈オッケーだよ。こっちも順調そろそろボクも動くよ〉
紅葉との通信を終えるとバトは再び通気孔の中へ入っていく。
***
多くのモニターが並ぶ監視カメラの管制室に動く人影は1つだけ。
いつもは4人ほどの管制官がいるのだが皆上を向いたり下に転がったりして夢の中だ。
パソコンに差した小さな端末のタッチパネルを操作し今モニターに映る画像を差し替え異常が内容に見せかけていく。
「おじさんの作ったツールは凄いや。そこまで知識が無くてもハッキングから操作までお手の物だね。おじさんが悪の組織になったらまずかったね」
紅葉が操作を終えると端末を畳みアイテムボックスにしまう。そして盾の階段を作り出すと通気孔へと入っていく。
通気孔の中を進み目的地である制御室の電気室の上にやって来る。
「下に2人か……」
紅葉がスキルパットを開く。ほとんどが黒く光っていない項目だらけだが一部だけ煌々と光っているページがある。
そこは枠で囲まれ「紅葉専用」の文字が光る。項目にはシシャモたちとは違い変わったものが多い。中にはどう使うか謎の項目もあるが……。
『スキル発動』
1、アイテムスティール
2、広範囲化
紅葉が手を伸ばすと下にいた男たちの装備が消える。あわてふためく男たちが外に出ようと近くのドアに向かって走ると、本来なら自動で開くドアが開かずドアを叩くその後ろに壁が2人を囲うように現れる。
「なるほどね。エリアを制圧したら所有権はボクに移って壁や扉もスティール出来るんだ。なんか無茶苦茶だね」
男たちの頭上に睡眠針が現れ飛んで来て刺さると2人は眠ってしまう。
通気孔から降りると電気の制御盤に端末を刺し込み操作する。
「バトこっちは制御オッケーだよ。準備出来たら教えて」
〈もうちっくとまっちょって〉
***
バトが潜入するエリア、それは兵器関連エリア。
「噂に聞くうちの妹達がここにおるとは。ひーふーみー……10人か。戦闘能力が分からんうちは一応警戒しちょこうかな」
バトが視界に地図を広げると赤く光るマーカーを確認する。
「紅葉がミサイルを手に入れる為にはうちがどこまで引き付けれるかが鍵だね。敵を分散する算段もとれたし──」
バトが紅葉に回線を繋ぐ。
「敵のロボットは10体や。なるべくうちが引き付けるけど紅葉も任せる思うよ」
〈10体かあ、思ってたより多いね。う~ん自信ないけど頑張るよ。じゃあいくよ!〉
基地に警報がけたたましく鳴り響く。
──緊急! 緊急! 外部より攻撃を受けている模様! 各エリアを封鎖し外部からの侵入を防ぎます。 防御壁付近にいる方は離れて下さい。繰り返します──
警報に合わせ防御壁が降りてきてエリアの通路が次々と封鎖されていく。
限定された通路を忙しそうに走る自警隊の隊員たちを横目にバトが兵器エリアに降りると自警隊の隊員とポニーテール型のバトに似ているロボットたち、型番はFCMー01でバトの後継機である。そのロボに向かって肩のビームを放つ。
激しい爆発が起き炎を掻き分け10体のロボが飛んで襲いかかる。
両手の甲からブレードを出しバトと10体のロボが火花を散らし斬り合いが始まる。
斬り合う最中バトが指を動かし宙を叩くと体制を低くし構える。
『必殺 バト2連斬り』
『スキル発動』
1、斬撃攻撃力UP
2、機械生命体 ダメージ1.2倍
3、スピードUP
4、跳躍力UP
バトが残像を残し大ジャンプしながら3体のロボを真っ二つに斬ると宙で手を伸ばし一体のロボの頭を掴むと方向を変え地面に向かってもう一閃斬りつけ2体のロボを鉄屑に変える。
地面に降りてすぐ両手を伸ばし1体のロボの両肩を掴むと肩にキャノン砲を担ぎビームを放つ。ロボがバトの手に捕まれたまま体に大きな穴が空け力なくうなだれる。
両手の使えないバトに向かって2体のロボが襲いかかるが上空からビームが走り2体の頭部が撃ち抜かれる。
バトが手を離し飛んでいるチェイスをツインテールに戻すと自警隊の一斉砲撃が始まる。
煙がもうもうとする中、自警隊の隊員が緊張して様子を見守る。煙の中に青い光が2つぼわーっと光ると煙を斬りながらバトが斬撃を放ってくる。
武器やアーマーごと斬られる隊員たち。
「恨みはないけどうちらの進む道があるんでね。勘弁しとーせ」
次々と襲い来る警備隊を倒しながら周囲を索敵する。
「紅葉ごめん。そっちに2体行った」
〈えーそうなの。頑張ってみるよ。バトも気を付けて〉
「ぷふっ」
〈なにさー今笑った?〉
吹き出すバトに紅葉が怒る。
「いやごめん。紅葉は変わらんなあ思うたんや。そがに強うなっても自信なさそうに話すのがおかしかったんやよ」
〈怖いものは怖いの! でも精一杯はやるよ〉
通信が切れた後バトが紅葉が動きやすい様に敵を引き付けていく。バトに似たロボットの残骸を見て思う。
(うちはただのロボットじゃない。そう思わしてくれる仲間に出会えたのが幸せやった。われらも出会えればまた違うたのかもしれんね)
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