その10 赤と黒の戦いにゃ!

「私のこのスーツの名は『ネーロ』それじゃあさっそくやろうじゃないか」


 龍輝の自己紹介が終わるとすぐにお互いが拳を打ち合う。周囲の木々をなぎ倒し、道路に穴をあけ、人がいない車を粉砕する。

 2人同時にフロッピーディスクを取り出すと差し込む。


『イーグル』


『タイガー』


 龍輝に羽が生えシシャモの腕に鋭い爪が装着される。空中から降りそそぐビームをトラの爪が切り裂く。


『エレファント』


『ドラゴン』


 象の龍輝とドラゴンのシシャモが地上で殴り合っているとすぐにジャガーとトラが爪で斬り合いを始める。


「面白いが、君は動物のフロッピーを数枚持っているだけだ。武器系はないのだろう」


 龍輝がフロッピーディスクを差し込むとマシンガンが手に握られる。ただその銃口から放たれるのはビーム。

 ビームを連続でばらまきながらミサイルランチャーを撃ち込む。


「どうだね、レベル200が放つ弾丸は威力が違うだろう」


 バトルスーツが少し焦げているシシャモを見て笑う龍輝をシシャモが笑う。


「武器のフロピーはいらないとあたしが言ったにゃ。面白いもの見せてやるにゃ」


 シシャモがフロッピーディスクを差し込む。


『ホッパー!』


 目映い光が引くと赤い仮面のままではあるが口回りが銀色のギザギザした歯のようなデザインをしているシシャモが立っている。


「バカな、バッタだと……我々の技術で出来なかった昆虫系をお前は出来るというのか」

「にゃんか知らないけど、この変身においてバッタ、トンボ、カブトムシにゃんかは強いらしいにゃ! その中でもバッタは威張れるとベルトを作ってた奴が言ってたにゃ」


 シシャモが大きく跳ねると必殺シシャモキックを放つ。受け止める龍輝だが受け止めた手を押さえている。

 そこからシシャモの猛攻を受け防戦一方になる龍輝。


「なぜだ、たかがバッタに変わっただけなのに……それに私のスキル『物理ダメージ60%カット』を突き抜けてくるこのダメージは一体」


 シシャモ達の世界にダメージ軽減のスキルは多数存在するが、ダメージを無効にするスキルと無効を消すスキルは存在しない。

 シシャモは『衝撃波発生』のスキルを使用して多重に攻撃を繰り出しているだけなのを龍輝が知るよしもない。


「そしてこんなこともできるにゃ!」


 2枚のフロッピーディスクを連続で差し込む。

『イーグル! タイガー! ホッパー!』


『イ・タ・ホ!』


「にゃんか知らないけどこの組み合わせもなかなか良いらしいにゃ!」


 頭がイーグル、体がタイガー、足がホッパーのシシャモが地面をジグザグに跳ねタイガーの爪で斬りつけるとくるっと一回転して上空へ向かって龍輝を蹴り上げる。

 背中に羽を生やし飛び上がると空中で回転し蹴り落とし地面に叩きつけた龍輝に地面がへこみ亀裂が入るほどの蹴りを入れる。


『必殺 イタホコンボ!』


「にゃんかカッコ悪い名前だけど次はこれにゃ!」


『イーグル! スパイダー! ベアー!』


『イ・ス・ベ!』


 龍輝が放つミサイルをクモの糸で絡めまとめて返すと飛び上がりクマキックを決めクモの糸を龍輝に絡めるとぐるぐる振り回しながら地面に叩きつける『イスベコンボ』を決める。


「お前の負けにゃ。とっと知ってることを話せにゃ」


 黒い仮面が割れて倒れている龍輝に向かっていい放つシシャモに対し変身を解除した龍輝が試験管を取りだし飲み干して笑い出す。


「ははははははは、私は負けていない! これでレベル200を超えることが出来るはずだ!」


 龍騎の顔がドラゴンの顔になり全身に鱗や尻尾が生えてくる。ドラゴニュートのドラゴン寄りな姿となった龍輝が地面を破壊しながらシシャモへ鋭い爪で攻撃を繰り出す。


 シシャモがガードした腕に大きな爪跡が残りうっすらと血が滲む。


「どうだ! ダメージが通るぞ! 何せ今の私はレベル210だ! これで君の勝ちはもうない──ごはっ!?」


 龍輝の腹を殴るシシャモがそのまま拳を振り切り龍輝を遥か彼方へ吹き飛ばす。


「にゃんか人間ってレベル上がっただけで強くなれると思ってないかにゃ? レベルは基礎能力の向上にゃ」


 地面に埋まってた龍輝が瓦礫を吹き飛ばし立ち上がる。


「知ってるさ。だから私は薬も使わずレベルを地味に上げてきたしスキルも手に入れた。お前と何が違う」

「お前は強い奴と戦ったかにゃ? 仲間と協力したり意味の分からない状態で試行錯誤の中戦ったりしたことあるかにゃ? さっきの奴を倒すのを見ていたら抵抗出来ない奴を一方的にやったんじゃないかにゃ」


 そこまで言ってシシャモが龍輝を指差すと仮面の中でニヤリと笑う。


「ただにゃ、レベルが30の差がつくと種族間の違いはあるけど一方的な勝負になり始めるらしいにゃ」


 シシャモが指した指をピンっと弾くと一瞬で龍輝に詰め寄りパンチを繰り出し終わっていた。

 何が起きたかも分からない龍輝が自分の右肩を見ると吹き飛んで無くなっていることに気が付き叫ぶ。


「ぐああぁぁぁぁぁ!! なんだ何がどうなったというのだ」


 肩を押さえ暴れる龍輝の肩が凍り始める。


「知る必要はありません。貴方は知ってることを話してくれれば良いのですから」


 ペンネが空から降りてくる。爪に力を込め始める龍輝の手をポムの銃弾が弾き、慌てて立ち上がろうとする喉元に燕の刀があてられる。


「観念しろにゃ、お前の負けにゃ。魔王について話すにゃ」


 4人に囲まれ観念したのか力なく空を仰ぎ見る。


「私はまだ負けてない。君たちは正義の為に魔王と呼ぶ我らの神を倒しに来たのだろう? だが今や君たちはこのアースにおいてただの悪人だ。そんな君たちに何が出来る? 誰が君たちの話を聞いてくれるというのだ」


 今だ負けを認めない龍輝にビルのスクリーンに映る紅葉の姿を見せる。

 その内容に驚きの表情を見せるが笑い始める。


「ははははははは、驚いたよ。勝てない訳だ君たちの覚悟はそこまでのものなのかね。まあいい。君たちに話したところで我が神の勝利は揺るがないからね」


 そう言って話す魔王の内容、といっても龍輝も声だけで実際には会ったことはないらしい。

 ある日ホッカドーの弟子屈カンパニーに落ちてきた水晶を拾ったら龍輝に語りかけてくる。その声に従い必要な機械を作り、窓際が作ったベルトを奪いにいきベルトの情報を盗み、そして人間や魔物を溶かしレベルを上げる方法の研究をしてたこと。


 転移装置を作り1ヶ月の充電で1人だけ転移出来る装置を作りだし1往復だけ成功させる。それが龍輝でありそこでレベルを手にいれた事を語る。


「その水晶はどこにあるにゃ」

「もうないよ。水晶は役目を終えたから割るように言われ割ったからね」

「じゃあどうやって命令を受けてたんです?」


 ペンネの質問にゆっくり答える龍輝は少し苦しそうに見える。


「壁に赤いランプがあって、そこが声に合わせ光るのだよ。その声を神の声といって指示通りに動いていたのだよ」


 そこまで答えた龍輝が苦しそうに左手で胸を押さえる。


「どうやらここまでのようだ。体がもたない……」


 龍輝の体が崩れ始める。


「君たちの行く末天国から見せてもらうよ。早く地獄へ落ちていくのを楽しみにしているからね。くはははははは──」


 笑いながら崩れていく体。


「こいつ結局なんだったんだ?」

「さあにゃ、とりあえずこいつの会社に行って赤いランプを見に行くにゃ」


 変身を解除したシシャモにペンネが飛び付く。


「シシャモ! 腕の傷!? どうしたの?」

「ああこいつに切られたにゃ。舐めとけば治るにゃ」

「舐める? ……舐める! 私舐める!」


 ペンネに追いかけられ逃げるシシャモを助ける為ポムがピコピコハンマーを取りだし走って追いかける。

 その様子を呆れた顔で燕が走って追いかける。

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