その9 弟子屈 龍輝にゃ!

 道路を削りながら吹き飛んでいく赤い仮面『ロッソ』に変身した悠斗。


「なんだこいつ。化け物かよ」


 ベルトのボタンを叩いて放つ必殺の蹴りもパンチで弾かれ逆にダメージを受けてしまう。

 銃弾もビームも剣も弾かれ、盾を出せば盾ごと殴られる。全く歯が立たない状況に焦る悠斗。


 エリーたちより先に行こうと渋滞する車の間を縫うようにバイクで走っていた悠斗を車の上を跳びながら追いかけてきてバイクに飛び乗ると掴まれ下の道路に投げ飛ばされ今に至る。


「くそっ、レベルを上げて強くなったはずなのになんでだ」


 ネコミミの赤い仮面とい悠斗にとってはふざけた姿のシシャモに一方的にやられることに悔しさを感じていた。

 ゆっくり歩いて近付いて来るシシャモに恐怖してしまう自分が情けないのと同時に怒りを感じ叫びながらパンチを繰り出す。

 だが驚くほどあっさりと拳を掴まれ止められてしまう。


「無駄にゃ。これ以上お前と戦う意味はないにゃ」


 シシャモに拳を捻られその痛みで悠斗は地面膝をつく。


「さっき言っていた人を溶かしてレベルの上限を上げるって方法は誰が教えてくれたにゃ」

「だ、だれがお前なんかに!?」


 シシャモの蹴りで吹き飛ばされ地面を転がる悠斗。そのまま仰向けになりその頭をシシャモが足で踏みつける。


「紅葉一派の中で1番鬼畜なあたし、シシャモに出会った事を後悔するがいいにゃ!」


 悠斗の胸ぐらを掴み宙へ放り投げると地面に叩きつけられもがく悠斗のベルトを引き剥がし投げる。


「これでお前は戦えないにゃ。とっと情報よこして消えるにゃ」


 元の姿に戻った悠斗が殴りかかるのを手で払うとシシャモも変身を解除する。


「あたしは魔物にゃ。生きるためにゃらお前ら人間を倒すことに躊躇しないけどにゃ。お前はなんであたしたちを倒すにゃ? しかもそれは同族を殺してまでやることなのかにゃ?」

「うるせえ。お前らだってレベル上げとかいって同じ魔物を殺すんだろ。一緒じゃねえか」


 シシャモが悠斗の答えに少し首をひねる。


「あたしが言いたいのはちゃんと戦ったのか? ってことにゃ。

さっきから溶かすとか取り込むって言ってる1人で1レベル上限が上がる方法。それはその辺を歩いている誰でも良いってことじゃないか? と聞いてるにゃ。

 つまり子供でも何でも1人取り込めばいいってことにゃのだろ?」


──はははははははっ


 突如笑い声が響かせスーツを着た男が歩いてくる。


「いやはや、ただの魔物の分際で勘の鋭い奴だね」


 シシャモを讃えるように男がゆっくり拍手をする。


「確かシシャモとか言ったかね。前に1度会ったけどあの時は変身してたから初めましてでいいかな。

 私の名前は弟子屈てしかが 龍輝りゅうき、弟子屈カンパニーの社長だよ」


 龍輝が名乗りシシャモが警戒し構える。


「まあ落ち着きたまえ。今はコイツと戦っているんだろう」


 龍輝が悠斗に一本の試験管を投げる。それを受け止めた悠斗が手に握る試験管を眺める。


「兄貴、これは?」

「もう一方の世界で使用しているレベル上限突破薬だ。時間制限があるのが難点だが今より強くなれるはずだ」


 その言葉を聞いて悠斗は躊躇ちゅうちょせず試験管の薬を飲み干すともがき苦しみ始める。


「がああぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」


 トゲが皮膚を突き破り飛び出てくると額に大きな角が2本生え背中にも羽が生える。手や足の爪は鋭くとがり皮膚は緑色に変化し目は真っ赤に光る。


「ほう、あっちの魔物を取り入れるとこうなるのか。悠斗レベルは確認出きるか?」

「アア、レベル170だあ。これであいつを殺せるゼェェェェ」


 魔物のような姿に返信した悠斗の鋭いパンチをシシャモは避けるとフロッピーディスクをベルトに差し込む。


「変身にゃ!」


 ガッチャン! リーディングOK!「ドラゴン!!」

 デデデデン 装着! 「ドラゴンモード!!」


 ドラゴンモードに変身するシシャモにパンチを繰りだすとお互いの拳がぶつかり合う。


「ふはあ、ふあははははは、いいぜえこの体は。お前と互角かそれ以上だな」


 悠斗が飛び上がりキックの構えをしてそのまま必殺技を繰り出す。


『必殺 ロッソインパクトキック』


 上空から落下してくるキックに向かいシシャモが手を大きく回し右こぶしに力を込め天空めがけて必殺技を放つ。


『必殺 描撃紅蓮竜波びょうげきぐれんりゅうは


 マグマのように赤く燃える炎は太陽がまだ高く上っているというのに周囲を赤く照らし近くにいるだけで身を焦がしてしまう熱風を放つ。

 その炎の渦は悠斗を飲み込みその身を焼いていく。


 炎が消えると焦げた悠斗が落ちて地面に叩きつけられる。


「ぐはぁ、なんでだよ俺は強くなってるはずなのに」


 血を吐きもがく悠斗に龍輝が近付くと手を差し出す。その手を握り立たせるとそのまま胸を拳で貫く。


「ご苦労だった悠斗、良いデーターが取れたよ」

「な、なんで兄貴……」


 龍輝は無言で拳を抜くと力なく倒れる悠斗。


「おお、これでレベル200だ。ようやくマックスまでいったぞ。悠斗お前はどうしようもない弟だったが最後に役に立ってくれた。礼を言おう」


 もう動かない悠斗を見て微笑む龍輝がベルトを腰にまく。


「私は人を取り込んだりはしていないぞ。君たちの世界に1度行ってレベルという概念を手に入れレベル上げしてきた結果だ。

 故にスキルなんてものも所有しているのさ」

「あたしらの世界に来たことがあるのかにゃ? どうやってにゃ?」


 シシャモの質問に満面の笑みを浮かべる龍輝がフロッピーディスクを手にとりベルトに差し込む。


「私を倒したら全て教えてあげよう。変身」


 目映い光に包まれ黒い仮面の戦士に変身する。


「さあ!! 戦おうじゃないか。君もその姿の時はレベル200じゃないのかね? 互角の勝負楽しもうじゃないか」


 テンションの高い龍輝がシシャモの前に立ちはだかる。

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