その8 魔法少女か? にゃ?

 欣怡が車から飛び出したとたんに光に包まれ連れてこられた広場に大きな電波塔のある場所。


「昔のテレビ塔跡地……テレポートで連れてこられたってことね」


 周囲を警戒しつつベルトにフロッピーディスクを差し込み変身する。


「変身」


 青い仮面の『メル』に変身を終えた欣怡に向かって炎の矢が次々と飛んでくる。それらをかわしながら矢が飛んでくる方向に向かってビームを撃つ。


「ちっ、手応えがない」


 ミサイルランチャーでミサイルを撃ち周囲の木々ごと辺りを吹き飛ばし牽制するなか欣怡の周囲の地面がパキパキ音をたてながら凍り始めその氷が燃える。

 意味の分からない現象に驚き氷の炎に身を焦がしながら突っ込み突破すると稲妻が落ちて周囲に暴風を巻き起こす。

 再び強引に抜けると物凄いスピードで水の矢が地面を貫き辺り一面が水浸しになり上空に向かって爆発し吹き上がる。

 爆発に巻き込まれ転がる欣怡はすぐに立ち上がりイーグルモードで羽を生やすと飛び上がる。


「ダメージ表示はなくて特に弱点属性も無さそう。むしろなんでも効くみたい」


 空へ飛び上がった欣怡の更に上から魔法少女姿のペンネが降りてくる。


「レベル150もあるって本当ですか? 私はまだ139ですよ」


 驚いた表情のペンネに警戒する欣怡。


「あんたレベルが150ってなんで知っている?」

「仲間に聞いたからですよ」


 ペンネが耳を指差す。パッと見分かりづらいが仲間と連絡を取るためのイヤフォン型の通信機が耳に入っている。


「私も試したいことがあるので付き合って下さいね」


 ペンネが弓に風を纏わせると暴風の矢を放つとそれを欣怡が地上へ逃げながらすれすれでかわす。

 地面に足をつけ空を見上げる欣怡の目の前にペンネが立っていた。


「空を飛んでなくて良いのか? そっちのが有利だろう」

「試したいことがあるって言ったじゃないですか」


 ペンネが指先で宙をぽんっと触れる。


『スキル発動』


 1、変身補正上限突破 1分間(シシャモ、ペンネ専用)


「シシャモ、ペンネ専用~♪」


 身をくねらせ首を横にブンブン振りながら喜ぶペンネに得たいの知れない何かを感じながら欣怡が銃と剣を構える。


 ペンネの姿が消える。


 いつの間にか欣怡は吹き飛ばされ壁に激しく叩きつけられる。

 激しい痛みを感じる欣怡に目の前にペンネが突然現れると不馴れな構えから蹴りを繰り出すと壁を破壊しながら後ろへ飛ばされる。


 木を数本へし折ったところで上空にペンネが現れ弓から炎の矢が8本放たれ手足に当たると爆発しその爆発で地面に叩きつけられる。


「これで1分。クールタイムと合わせて連続で使えるけど他のスキルを入れると使える時間が延びてしまいますね。このスキル事態強いですけど有効打を入れるには違うスキルの方が良いときもありそうですし考えていかないとダメですね」


 ぶつぶつ言いながら考えるペンネを睨みながら欣怡がなんとか立ち上がる。


「そうだ、ちょとお尋ねしたいんですけどあなた方はスキルって持ってますか?」

「スキル? なんか社長もそんなこと言っていたけどね」


 ペンネが皆にスキルの事を通信した後、フラフラの欣怡を見て微笑む。


「満身創痍ですね、そのまま寝ていた方が良いですよ。では最後に1つ質問です。さっきおっしゃっていた社長とはあなた方のリーダーですよね?」


 質問に欣怡が頷くと満足したペンネが羽を広げる。


「逃げる気か!!」

「逃げる? これ以上あなたと戦う意味がないので社長のところへ向かおうと思うのですけど」


 ペンネの物言いにイラッとした欣怡が数発のビームを放つがペンネに届く前に掻き消される。


「お前らが敵う人ではない! どうせお前らも溶かされあの方の糧となるのだ!!」

「え~と、今の話ちょっと詳しく教えてもらえますか?」


 ペンネの質問に答えることなくベルトのボタンを叩き必殺の蹴りを放つがあっさり避けられる。


「話す気はないということですか? なら戦う価値はありませんね、ん?」


 ペンネが耳に手を当てると小さなため息をついて欣怡を見る。


「他の人を溶かしてレベルを上げてたのですね。でもレベルだけ上げても強くなれませんよ。技や魔法を磨く努力は必要ですから」


 再び必殺のミサイルを数発放ち、連続でキックを放つが、暴風が吹き荒れミサイルは飛ばされキックは手で受け止められる。

 ペンネが欣怡のベルトを掴むと無理矢理剥ぎ取り遠くへ投げる。


「シシャモと同じベルトでも使う人でこんなに違うんですね」


 変身の解けた欣怡を哀れむ目でペンネが見ると掴んでいた足を離し地面に落とされる欣怡。上半身だけ起こしペンネを必死で睨んでいるがペンネは羽を広げて飛び立とうする。


「シシャモだ? あの猫耳野郎もあの方に溶かされて──」


 欣怡にとってその一言が負け惜しみなのは自分でも分かっていた。目の前にいる少女に勝てる見込みはまったくないのも知っていた。だから一言だけでも、ちょっとだけでも何か言ってやろうと思っただけだが、言いかけて後悔することになる。


 ペンネを中心にして地面に電流が走る。欣怡はその電流に身を焼くような痛みを感じながら周囲に立つ電気の柱が繋がり鳥籠のような形を作り出されたことに恐怖する。


 赤い瞳を光らせるペンネが右手を握った瞬間に鳥籠は圧縮され欣怡ごと消えていく。


『必殺 フォーゲルケーフィッヒ』


 一際大きい電流が走るとペンネが欣怡が消えた後を見て呟く。


「言って良いことと悪いことがあります。今のは許されない発言ですよ」


 ペンネは大きく羽を広げると羽ばたき空へ飛び立つ。

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