その7 刀と剣にゃ!

 ラルは突然大きな公園に立っていて困惑していた。


「テレポートか……確かにそんな技術はあるが今のは違うな。だろ? そこの侍被れ」


 ラルが睨む先には静かに立つ燕の姿があった。


「転移魔法とだけ言っておこう。拙者の名前は燕。お主の名は?」

「今更自己紹介かよ。ラルだ。で、なんだ互いの名前知ってデートでもしてくれるのかよ」


 燕がラルを真剣に見て言葉を選んでるかのようにゆっくり話す。


「申し訳無いが、拙者の好みでは無い。顔立ちは整ってて好む者もいるとは思うが……

 それにお主から信念を感じられない。なぜ戦う?」

「はん、真面目かよ。それに信念だあ? 強くなって優越感に浸りたいだけだ。そのためにもお前らを倒す必要があるんでね」


 ラルがベルトを巻きフロッピーディスクを差し込む。


「変身するぜえ!」


 ラルが紫色の仮面の戦士『ルイ』に変身すると剣と銃を手に取りビームを撃ちながら向かってくる。


「死ねよ化物!」


 ビームを弾きラルの剣による猛攻を捌いていく。燕の神速の抜刀に苦戦しながらも攻撃に食らいついていくラルの成長ぶりに感心する燕にポムの通信で相手がレベル150であることを知り益々感心する。


『必殺 アマツバメ』


 高速で駆け抜けながらの抜刀をラルが剣から火花を散らし受け止める。

 燕はそのまま上空へ飛び上がり空を蹴ると高速落下からの抜刀。


『必殺 隼』


 それもラルに受け止められる。


「やっぱりな、化物どもの中であんたの攻撃は読みやすいな」


 ラルの剣技に流派はなく我流だが洗礼されており、その攻撃に銃撃や体術も絡めてくる。

 レベル差もあり更に相手を倒し生き残る為の攻撃に燕が押され始める。


「さすがに強いな短期間でレベルをそこまで上げるのには余程努力したのだな」

「あ?」


 ラルが一旦攻撃の手を止め距離を取り手の骨を鳴らす。


「俺らがよお前の仲間の細胞を移植した時のレベルが62だ。そこからお前らの仲間を殺しまくって110でカンストしちまった」


 ラルが愉快そうに話し始めるのを燕は黙って聞いている。


「そこから150まではお前らの仲間や人間を溶かし取り込むんだ。1人取り込んだらレベルが1上がる。それを繰り返して今のレベルになったってこった。

 でもよ、ここでまたカンストしたわけよ」


 剣先を燕に向けると殺気を放つ。


「んでえ、お前らを溶かし取り込めばレベル200になれるってことなのさ」


 ラルの振る剣を燕が受けると刀と剣が激しくぶつかり合う。火花を散らしながら剣閃が煌めく中、燕が呟く。


「この者達のレベルが150なのはそういうことらしい」


 燕が刀を鞘に納め後ろに下がると違う刀を取りだし腰に差すと右手で宙に触れる。

 抜刀の構えから神速の抜刀が放たれる。


『必殺 地嵐じあらし風食ふうしょく


『スキル発動』


 1、打撃強化

 2、衝撃波発生

 3、峰打ち強化(燕専用)


 ラルが燕の剣筋を読んで受け止めるが一撃の攻撃のはずが何重にも重なる衝撃にラルの剣を折り腹部に刀の峰が食い込むとそのまま周辺の木を折りながら吹き飛んでいく。

 その後を疾風のようなスピードで追いかける燕が追い討ちをかける。その打撃に強化した刀『撲殺刀』による打撃をラルが盾で受け止めても盾ごと飛ばされる。

 左の脇腹を押さえながら荒い呼吸をするラルに燕がゆっくりと近付いてくる。


「拙者のレベルは137だ。ここに来る前にレベル上げしてきたがお主より低い。その分は経験と技術、スキルなんかで補える。

 それでお主はそのレベルまで何をしてきた。ただレベルを上げ基礎能力を上げただけではないのか」


 燕が武器を変える。斬擊に特化した『裁燕』を構える。


『必殺 燕八閃』


『スキル発動』


 1、斬擊強化

 2、攻撃スピード 0.55倍

 3、ステータス攻撃力0.45倍

 4、クリティカルUP


 超高速の八つの斬擊がラルを襲い、その斬擊はスーツも切り裂き血飛沫をあげながらラルが転がる。


「なんだってんだこれは!! レベルは俺の方が高いはずなのに」


 咳き込みながらベルトのレバーを引きボタンを叩くと必殺の蹴りを放つが刀で払われると燕がそのまま刀を振るい斬られる。

 スーツが破けた場所を狙い次々と放たれる斬擊になす術なく斬られていく。


「その固い服でなければお主を切るのは容易い。その服に頼り過ぎではないだろうか」

「うるせええ!!」


 ラルがハンマーを出して振るうがフラフラの体の攻撃はあっさり避けられる。だがその隙を狙ってフロッピーディスクを差し込み翼を背中に生やすと飛んでいく。


「生き残れば勝ちなんだぜ、お前らの内1人溶かせればレベル200になれるからな。そんときお前を殺してやるぜ!」


 笑いながら空を飛ぶラルを見る燕がおもむろに刀を交換する。刀の峰に筒状の物が取り付けられているその名を『峰撃ち丸』


「う~む、麻帆殿に渡されたときは喜んだものの使ってみると何か違う感じがするのだが……まあこの場合良いか」


 剣先を空飛ぶラルに向けると柄にあるトリガーを引く。


『必殺 真・峰撃ち』


『スキル発動』


 1、射撃補正

 2、射速UP

 3、ビーム系ダメージUP

 4、クリティカルUP

 5、ステータス攻撃力0.45倍


 刀から放たれるビームはまっすぐ空を飛ぶラルを撃ち抜く。空に真っ赤な血が花開きラルが落ちてくる。ベルトが外れたのか変身が解け生身で落ちていく。

 薄れる意識を必死に保つラルの目に映るもの。落下地点で赤い稲妻を纏い抜刀の構えで待ち受ける燕の姿。


『超必殺 飄風天ひょうふうあま御空みそら


 落下寸前で放たれる赤い竜巻はラルを中心に全て飲み込み切り刻む。

 断末魔すら上げられないラルはこの世から消えてしまう。


 カチンッと心地よい音をたて刀が鞘に納められる。


「行くか」


 燕は北へ向かって進み始める。

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