魔王シシャモ誕生にゃ!
その1 シシャモとペンネ実家へ帰るにゃ!
シシャモの魔王宣言があって今、皆は一旦別れ行動をしている。
シシャモが魔王として支配すると宣言したミキシング島は現在、城を建設中である。
グラープの不死の軍団が24時間体制で製作し島民も手伝うことで着々と建築が進んでいる。
ビアシンケンは国に帰り自身の領土拡大を報告し復興と町を広げる事に力を注ぐ。
そしてルイはシシャモに連れられ実家へ戻っていた。
***
「ただいまにゃ」
「お帰りにゃ」
玄関を開けて久々の実家。今までと違ってダンジェロの部下が居着いているが構わず中に入ると、マグロ、メバル、カレイが迎えてくれる。
「お姉ちゃん誰にゃその子?」
「この子はルイにゃ、この森も含めて今後支配してもらう予定にゃ」
「余はルイーサ・ラセルナなのだ。姉上のご家族よろしくなのだ」
深々と頭を下げるルイにカレイが近寄り興味津々に見ている。
「ねね、わたしより年下にゃ?」
「12歳なのだ」
「わたし13! じゃあルイは妹だにゃ。カレイ姉さんと呼ぶがいいにゃ!」
勢いよく話しかけてくるカレイに押され気味ながらも嬉しそうにルイは笑う。
「分かったのだ、カレイ姉さん」
カレイが家を案内してる間にシシャモは両親に魔王になることを打ち明ける。
「あら? 知ってるにゃ。だってシシャモの名前この森まで知れ渡ってるにゃ」
「ああそうだにゃ、多くの魔王を無慈悲に惨殺していく魔王狩りシシャモってにゃ。いやあ我がミケ族から魔王が現れるなんて父さんは嬉しいにゃあ」
泣き始めるマグロをメバルが背中をさすってなだめている。
「まあ喜んでるみたいだし良いのかにゃ」
正直、魔王危ないから反対される可能性もあるかもと思っていたシシャモにとってはホッとする結果であった。
魔王になることも、ルイのこともすんなり受け入れるシシャモ一家の心が広いのか、深く考えていないのかは定かではないがシシャモは久々の実家を満喫するのだった。
その夜ルイが夜お風呂に入って借りた寝巻きの尻尾の穴が小さいと言う新たな苦情を受けることになる。
シシャモはルイと共に久々の実家を満喫するのだった。
***
今日も魔界の森では魔物達が生きていくために凌ぎを削って生きている。そんな森に1人の少女が降り立つ。
「う~ん、森は落ち着くなあ~。久々にお父様に会うけど元気にしているかな」
森を歩くペンネの頭上の木が揺れる。1人の少女が風を纏う剣を振るう。
その剣をそっと指で摘まむと剣ごと少女を投げる。投げられた少女は背中の羽を広げ空中に留まると剣から炎の魔法を連続で放つ。
ペンネに当たる前に炎は全て掻き消されてしまう。
「ペンネ……強くなったもんだ」
「イーネお姉さま。いきなり攻撃するのやめてもらえませんか」
ペンネが呆れた顔で見るとイーネは舌を出して謝る。
「ごめん、ごめん。ペンネがめちゃくちゃ強くなったって聞いたからさ試したくなったんだ。合格、合格!」
「相変わらずむちゃくちゃです。何に合格したんです」
イーネと一緒にペンネは父ダンジェロの元へと向かう。久々に通る門や廊下を見て出る前と変わらない様子に懐かしさを感じながら歩くペンネ。
やがて大きな扉を通り抜けるとダンジェロの姿が現れ隣には長女ファルファッレが立っている。
ペンネを目の前にして玉座から立ち上がるダンジェロが手を広げペンネが飛び込むのを待つようなポーズをとる。
ペンネが一向に飛び込まないので広げた手のやり場に困りながら平然を装い語りかける。
「ぺ、ペンネ……よく無事で。もう鬼畜猫から解放されたのか」
「いえ、私はシシャモのお妃になります。その御報告と魔王シシャモの誕生をお知らせします」
「はい?」
娘の言動に困惑するダンジェロに対してペンネは話を続ける。
「そしてこの森は父上が支配しつつも、魔王ルイーザが監視することとなりましたこともお伝えします」
「なに! ルイーザ? どこの魔王か知らないがそんなこと──」
ペンネが魔力を解き放つと一瞬周囲に暴風が吹き荒れる。その圧倒的魔力に威圧されるダンジェロと姉2人。
「威圧して申し訳ありません。ですが父上この条件をのんで欲しいのです。別にルイーザの監視下になっても父上のやることは変わりません。
近々人間との戦闘になる可能性もありますので父上達の身の安全の為にもお願いします」
頭を下げるペンネに戸惑いつつもダンジェロが問いかける。
「鬼畜……魔王シシャモは信頼できるのか?」
「はい! もちろんです。そうでないとお妃になりたいなどと言いません」
「そうか!」
とびきりの笑顔を見せるペンネを抱き締めるダンジェロ。感動的な場面の横で姉2人がこそこそ話している。
「なあ姉さん、シシャモって女じゃなかったっけ?」
「え、ええ間違いありませんわ」
「じゃあなんでお妃なんだ?」
「わたくしに分かるわけありませんわ」
妹のよく分からない発言に困惑している姉2人の疑問は尽きない。
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