その14 シシャモの決意にゃ!

 ミキシング島に雷が落ちるとスピカに連れられシシャモとビアシンケン、グラープ、ルイが連れてこられ目を丸くしてキョロキョロしている。


 不安そうにシシャモの手を握るルイを見て殺気を放ち近付くペンネにルイが怯えている。


「シシャモ、この子は? なに?」

「よ、余は姉上の妹になったルイなのだ。お、お前は誰なのだ!」


 シシャモの影に隠れながらも必死にペンネに対抗しようとする。


「私はペンネ、将来のお妃です!」

「えっと、姉上の奥様だから義姉? あれ? 何かおかしいのだ……えーと、ペンネお姉さまと呼べばいいのだろうか」


 ルイの言葉を聞いて殺気を消すとにこやかに微笑みかける。


「なあんだ、素直な良い子だね。私、可愛い妹欲しかったの」


 ペンネがルイの頭を撫でている横でシシャモがポムと話している。


「なんにゃ、お妃って」

「なんか、こないだから言ってるぜ、魔王軍がどうとか」


 シシャモが頭を抱えるが、スピカの方を見るとスピカが空を指差す。

 白い光が天から降り注ぎふんわりと1人の女性が降りてくる。


「えーと初めましてだね。 声は聞いたことあると思うけど」

「お前が性悪女神より偉い神だにゃ?」

「そそ、アダーラっての」


 軽い感じに答えるアダーラはスピカより一回り小さく、薄い茶色の長い髪に微笑を浮かべるその姿は可愛らしく慈愛に満ちていると言っても過言ではないだろう。


「スピカより可愛いしこっちの方が可愛い女神名乗った方が良いんじゃないかにゃ?」

「ああ、あんたさ、アダーラ様を女だと思ってない?」


 不思議そうな顔をするシシャモにアダーラが恥ずかしそうにもじもじしながら教えてくれる。


「てへ、男の娘だよ♪」

「スピカより可愛いのに男の娘とはにゃ」

「言わないでよ。気にしているんだから」


 ムッとした表情でスピカが答えるのを見てシシャモもそれ以上この話題に触れるのをやめる。


「それよりさ、わたしまで呼んで何か言いたいことがあったんじゃないかい?」

「ああそうにゃ、アダーラに先に説明して欲しいにゃ。最悪の魔王はなんで討伐しなきゃいけないのかって理由とあたし達のレベル、スキルについてにゃ」


 アダーラは皆の注目を浴びて可愛らしく照れる仕草を見せる。


「そうだね、説明しやすい方からいこうかな。

 最初に言っておくけど君たち6人はスピカの元で集まったからこそレベルやスキルを監視出来てるってことを伝えておくよ。

 他の者たちまではとても監視できないからね。

 それじゃあまずレベルが上限を超えたのは2世界を移動したことでレベル99×2の現象が起こったみたいだね。+2はボーナスってところかな。


 でもこれって想定外でね、シシャモ達の世界って比較的新しいんだ。レベルとスキルを組み込んだ新世界だったんだけど、まさか2世界を行き来したら上限超えるとは作った人も思ってなかったんだよね」


 アダーラが一息ついてスキルについて話し始める。


「スキルについて話すよ、シシャモは途中まで覚えてたはずだけどこっちで止めさせてもらったんだ。

 代わりにペンネには試してもらったけどスキルパットを製作し必要なときに的確なスキルを使えるようにするつもりだよ。

 因みにレベル上限突破もスキルパットも君たち6人だけの特別だからね」


 コホンと咳払いをしてアダーラが魔王について語り始める。


「魔王が誰かってのはシシャモと同じくこっちの世界は人間の王じゃないかとしか言えないよ。

 アースの方はあのカラフルな戦士を倒せば見えてくるかな。

 そしておそらく正体はわたしと同じ神。過去に追放された元神の生まれ変わりだと思うんだよね。そしてこの世界とアースの魔王は同一人物だと推測される。

 その者は2つに別れレベル上限突破を果たしているはず。

 そして討伐理由だけど両方の世界で人が消えてるんだよ。特にアースの方は結構な数がね。これってさ2世界でレベルの上限突破を果たした上で人を取り込んでいけば更に限界突破出来ると仮定できないかな?

 薬を使ってレベル限界突破してきた人間いるのはその副産物として考えると辻褄も合うかなって感じなんだけどそれがわたしの見解。

 このまま、ほおっておいていい存在ではないと思うよ」


 そこまでの説明を受けてシシャモが頷く。


「にゃるほど分かったにゃ。レベルを突破してなにするかは知らにゃいけど驚異となるわけだし、既にあたしらを敵として認知してるなら戦うしかないにゃ。

 それじゃあ、あたしが話すにゃ」


 咳払いをするような仕草を見せシシャモの口から語られる決意。


「あたしは今まで最悪な魔王を討伐しろと言われ救世主、又は勇者として2つの世界を救えと言われたにゃ。

 だがにゃ旅を続けていくうちにこっちの世界では魔王狩りと恐れられ、人間達とは小競り合いばっかりな上に魔王は人間側にいそうだしにゃ。

 そしてアースの方では指名手配犯として追われる身にゃ」


 仲間5人が頷く。


「そこでにゃ、人間側への進出をして魔王を倒す為、あたしがこの魔界大陸の魔王となるにゃ! そして3大魔王を魔界大陸の監視者としてあたしの支配下におくにゃ」


 シシャモが紅葉を指差す。


「そしてアース側では紅葉お前が悪の首領となって欲しいにゃ! あっちではもう紅葉一派で認知されているのならそれを生かし悪として活躍し自称正義のあいつらを正々堂々と討伐するにゃ。

 紅葉があっちの世界で生活出来ないならこっちに来て生活して欲しいにゃ!」


 そう宣言された紅葉が決断の内容に戸惑いをみせる。


「シシャモ、ボクのこと……気付いてるよね?」


 シシャモが無言で頷くと、紅葉が左の眼帯を外すと現れる瞳は白く光を映さない。


「中学生のときに見えなくなって、周りから笑われ、それに合わせ中二病演じてみたりして、闇魔法使えると偽ってたボクが役にたてるはずがないよ」

「そんなことないにゃ、紅葉はあたしの大事な仲間にゃ。紅葉が闇魔法使えないのもみんな知ってるにゃ」


 ペンネと燕が視線を反らす以外は頷いている。紅葉は涙をこぼしながら首をたてに振る。


「ボクはシシャモ達といるときは素の自分が出せるし居心地良くて、でも闇魔法使えないって今さら言えなくて……でもこんなボクでも役に立てるならやるよ。あっちの世界に未練が無いって言ったら嘘になるけど悪の首領になって倒して見せるよその最悪の魔王を」


 紅葉の決断を受けシシャモが嬉しそうに頷いて3大魔王を見る。


「ビアシンケンは今の地域、グラープには砂漠エリア周辺、ルイは魔界の森周辺を管轄して欲しいにゃ。ルイは今の森にも行けるようにするにゃ、そしてこのミキシング島をあたしの支配として人間側に睨みを効かせるにゃ。

 そして唯一魔界大陸と人間の大陸と繋がる魔界の森の上にある草原を分断する予定にゃ!」


 シシャモの言葉に3大魔王も戸惑いつつも頷く。


「ペンネ、燕、紅葉、バト、ポム、あたしについて来てほしいにゃ。魔王になっても仲間であって欲しいにゃ!」


「もちろん私はどこまでも」

「無論」

「もちろん」

「あたりまえや」

「いいぜ!」


 シシャモが魔王となることを決意し宣言した瞬間であった。

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