その12 孤高の魔王に会いに行くにゃ!
次に日の朝早く眠そうなスピカがやってくる。
「まったくもう、私さあ女神なわけ、こんなホイホイとタクシーみたいに呼ばないでよ」
「朝早うから申し訳ない。やけんどスピカしか頼れる人がおらんのだ」
「え、あ、まあそうね。なに女神ですから。頼られるのも仕方ないわよね」
バトの言葉に気を良くしたスピカが笑いながら歩いているとシシャモがやって来て耳打ちをする。
「というわけにゃ」
「う~ん、なんか複雑だけど一応相談してみるわね。えっと取り敢えず行けるのは黄泉の魔王のとこまでだけどいい?」
「いいにゃ」
名残惜しそうなペンネを先頭に皆が見送るなかシシャモとスピカが雷とともに消える。
***
雷が地下迷宮の最深部のグラープのいる場所に集まり弾けるとシシャモとスピカが現れる。
「し、シシャモさま!?」
「シシャモさま? まあいいにゃ、お前に聞きたいことがあるにゃ」
突然のシシャモの登場に驚きつつも跪いて敬意を表す。
「にゃんかやりづらいけどまあいいにゃ。お前迷宮作るのにどうやって建築してるにゃ?」
「はっ、スケルトンを無限生成出来ますので不眠不休で作らせています」
「じゃあ普通の城は作れるかにゃ?」
グラープはシシャモの意図が分からないのだろう不思議そうな顔で答える。
「ええ出来ますが、普通ので良いのですか?」
「普通で良いにゃ。まずはどんなものか見たいにゃ。スピカ頼むにゃ」
「はい、はい」
稲妻とともに3人が消える。
***
ビアシンケンの玉座の間は今だ青空が見えている。町の復興に全力を注ぐように命令している為、城の復興は進んでいない。
そんなビアシンケンの前に稲妻が走りシシャモ、スピカ、グラープが現れる。
「ビアシンケン、お前こいつ……」
「グラープです」
「グラープを知ってるかにゃ? 黄泉の魔王にゃ」
黄泉の魔王の言葉に周りの兵達に緊張が走る。ビアシンケンの目にも鋭い光が射す。対するグラープも鋭い眼光で睨みつける。
そんな周囲を無視して話を続けるシシャモ。
「グラープお前、ビアシンケンの城を直すにゃ」
「私がこいつの城を!?」
「そうにゃ。お前今回この町に攻めて来たから責任とれにゃ」
実際、城を壊したのはペンネとバトなのだがそんなことを相手に気にさせず押しきるシシャモ。
それでも少し渋るグラープにシシャモが呟く。
「この城の出来ぐあいでグラープに頼みたいことがあるにゃ」
シシャモがコッソリ耳打ちをするとグラープは驚き喜ぶ。
「分かりました是非とシシャモ様の為にもこの城の復興やらせて頂きましょう」
「てことにゃ、ビアシンケンこいつに任せるにゃ」
少し不満げながらもシシャモに逆らえないビアシンケンはしぶしぶ了承する。
「それじゃあ、あたしは孤高の魔王に会いに行くにゃ。スピカ頼むにゃ」
「はいはい、シシャモさん行きますよー」
やけくそ気味のスピカの雷で2人が消える。残されたビアシンケンとグラープの間に気まずい空気が流れる。
「と、取り敢えずシシャモ様の命令だ、私はお前の城を作って認めてもらう必要があるのだ」
「好きにするがいい」
(俺はシシャモには逆らえないのでもう好きにして)
こうしてビアシンケンの城がアンデットの群れにより不眠不休で復旧されることになる。
***
スピカと別れたシシャモが『孤高の魔王』の住む孤独の森を1人歩く。
「にゃんか森とか久しぶりにゃ。しばらく家に帰ってにゃいけどみんな元気にしてるかにゃ」
少ししんみりするシシャモの頭上に大量の矢が降ってくる。大きく横に跳び全て避けると道から外れた森に走って入る。
木々をジグザグに蹴って高速移動するシシャモが逃げる1人の敵を捉え空中で蹴って地面に叩きつける。
再び木々を蹴り枝に身を潜める者達を次々と地面に叩きつけていく。
地面でのびる敵は皆見た目は人間の様な外見だが、トカゲの様な尻尾と頭に枝のような固い角、背中にはドラゴンの羽が生えている。
「にゃんだけ? こういう種族ドラゴニュートだったかにゃ?」
まあいいやとばかりにシシャモは走り森の奥に進む。その間も敵の襲撃や岩が転がってきたり落とし穴があったりするが全て破壊していく。
木々の間に潜む敵の困惑する声が聞こえてくる。
「なんだあれは、我々の攻撃が一切効かない」
「あれが魔王狩りなのか……」
何度目の罠か分からない槍が飛び出してくる魔方陣トラップを配置してる地面ごと蹴って削りきる。
「なんにゃ最近罠が流行っているのかにゃ。それにしても1人で来いって呼び出す割りにこの歓迎はどうにゃ」
文句を言いながらも森を凄い勢いで突き進むシシャモ。やがて森のが拓け大きな広場のような場所に出る。
「ここが最深部かにゃ?」
シシャモがキョロキョロしているとどこかから笑い声が聞こえてくる。
──ふははははははははは(棒読み)
──お前が魔王狩りだな。死にたくなければ帰るがよいのだ!!
「お前が呼んだのに帰れってどういうことにゃ? お前バカかにゃ」
──な、な、ななな、ば、バカじゃないのだ!!
「まあいいにゃ、じゃあ帰るにゃ。お前は関係無さそうだしにゃ」
──ちょ、ちょっと待つのだ!
「どっちにゃ! やっぱお前バカにゃ!」
──話ぐらい聞いてやるのだ。ちょっと待ってるのだ。
──よいしょっと、おっとっと、ひゃ!
──飛べる……余は飛べる、えい!
──ああ服が枝にぃ!! お気に入りなのにぃぃぃうぅぅぅ……
前にペンネが使っていた拡声魔法だろうか声が入りっぱなしになっているのか声が丸聞こえである。
ここまで20分少々、今だ声の主は現れない。
「もういいにゃ、帰るにゃ」
──ま、待て! お願い待つのだ! もう少し、もう少しで降りられるから。
イライラしながら待つシシャモが地団駄を踏んでいた足をピタリと止めると声の方へ向かって走っていく。大きな木の幹を蹴り枝を蹴りながら木の中腹まで上ったところで声の主を見つける。
太い木の枝にしがみついているドラゴニュートの女の子。綺麗な緑色の髪と茶色の瞳に気の強そうな顔。お姫様のような服装をしている。
「ま、待ってと言ったであろう。なんで来るのだ」
シシャモは無視して枝にしがみついたままの女の子に近付き抱えると飛び降りる。
「うわわわわわ!!」
「うるさいにゃ」
地上に降りてそっと地面に下ろされる女の子は生まれたての小鹿のように足をプルプルさせている。
ため息をつくシシャモが女の子を抱えると近くにあった切り株に座らせる。
「で? お前誰にゃ?」
「余はこの孤独の森の支配者『孤高の魔王』なのだ!!」
「にゃんですと!?」
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