その6 水の舞いと炎の迷宮にゃ!
ペンネの攻撃は激しく海は荒れ、雷が走り、炎が舞い、氷が降り注ぐ。次々と船が沈んでいくが数隻の船が荒れ狂う海を突っ切り浅瀬に乗り上げ船を止める。
兵達は船から逃げるように飛び降り島に侵入を開始する。
浅瀬を走る兵の1人の頭が弾け倒れると空中に青い魔方陣が描かれる。青い魔方陣から女性の手が出て海の水を掻くと大きな波が起き十数人の兵を呑み込む。
「今のはなんだ。どこから攻撃がきた」
「分からんが、後ろにいる魔物の攻撃に比べれば大したことない。突き進むぞ」
再び進軍を開始する兵に連続で銃弾が放たれるが兵には当たらず海面の水が5回跳ねる。
空中に縦3つその左右に1づつの計5つの青い魔方陣が描かれる。
1番下の魔方陣から裸足の女性の左足が出てきて海面に足をのせると左手、青く長い髪が見えたと思ったらくるっと回転するように女性が全体を現れる。
青い髪に青い瞳、手足は長く水色の布を巻いたようなドレスがスタイルの良さを強調させる。
少しタレ目で眠そうな目がスタイルの良さとは真逆の幼さを感じさせる。
「じゃじゃ~ん! ウンディーネ、さんじょぉ~」
のんびりとした口調で自己紹介を始めるウンディーネを前に兵達が一瞬止まってしまう。
「さっそくいくよ~」
『必殺
ウンディーネが屈んで海面の水を両手ですくうと目の前にいた兵に水をかける。
水をかけられ何が起きたか分からない兵がキョトンとしてニコニコするウンディーネを見ている。
突如海が震え始める、地面ではなく水が震える。陸側の海面が立ち上がり10メートル程の高さをみせたかと思うと崩れるように落ち、海側に向かって大きな波が起こる。
大きな波は数百人の兵を呑み込み海に沈めていく。
「つぎ~」
『必殺
海上を滑べって踊る様に移動しながらいつの間にか召喚した2本の青い水の刃で次々と兵を真っ二つにしていく。
華麗に舞うウンディーネを止めようと魔法や矢を飛ばそうとするがウンディーネが移動する際に水面に起こる波紋の揺れがそれらを阻害、バランスをくずし手間取ってる間に切られてしまう。
海面が真っ赤に染まりはじめるとそれを洗うかのように
そんな様子をポムはスコープで除きながら呟く。
「つええけど、ウンディーネの性格なんであんな感じになったんだろ?」
***
ペンネの攻撃とウンディーネの惨劇を迂回し上陸を果たすもの達が島に侵入し避難している無人の住宅を走り抜け島民を探す。
5、6人の小隊を作り移動を開始する。
ガチッン
「なんだ? 鉄の盾?」
1人の兵が地面に落ちている盾を踏んでしまう。なんの変哲もない鉄の盾を踏んだまま違和感を感じ見ているとその盾が突如消える。
すぐに割り込む様に盾が再び現れた瞬間上空に向かって弾けると宙高く舞ってしまった兵士が仲間の元落ちてくる。
死に至るほどの怪我はないがその小隊は軽いパニックを起こし怪我した兵を連れ足早に移動を開始する。
「おい! バリケードがあるぞ、こっちは通れない回り込もう」
紅葉は攻撃を仕掛ける前に島民と協力して避難場所に繋がる道はバリケードを作りほぼ閉鎖してある。
右往左往始める小隊の1つがバリケードの破壊を試みると盾が出現し弾け吹き飛ばされてしまう。
バリケードから撤退する兵の周りを大きな盾が囲い5人が狭い場所に閉じ込められる。
上空に出現する巨大な船の
惨劇の後は盾も錨も無かったかのように消えてしまう。
この錨は前回人間が攻めてきたとき浅瀬に下ろされた物で島民達が処理に困っていたものを紅葉がアイテムボックスに収納したものである。
「よっと、レベル上がって身体能力上昇しても運動神経悪いからぎこちないなぁ。
足が速くてジャンプ力もある、力も強いけどセンスがない。
無駄に能力が高い分、達が悪いや。おっとっと」
屋根の上をよろけながら移動する紅葉。そのすぐ下の地面に土煙が上がり空中に赤色の魔方陣が人型に7つ並ぶ。
「タイミングバッチリ。ボクも上手く合わせていこう」
***
ぐおおおおおおおお!!!
住宅街に怒号が響く。
兵達が状況を把握しようと周囲を警戒しながら進むと家の角から全身が燃える牛の顔をした巨大な化物、イフリートが火の粉と砂塵を散らしながら走って向かってくる。
パニックを起こした兵達は背を向け逃げるが燃える拳で殴られ鎧ごと焼かれながら絶命していく。
逃げ場のない迷路のような住宅街をイフリートに追いかけられ次々と焼かれ死んでいく。
逃げる最中にも突如現れる盾に阻まれイフリートに捕まる者、武器が降ってきて命を落とす者、刺され、潰され、燃やされ次々と命が散っていく。
混乱極まる住宅街に船から降りて向かってきた兵が押し寄せ更に狭く逃げ場を失っていく迷宮でただただ死の順番を待っているかの様に並ぶ兵達の命の火が消えていく。
***
沈む船を見ながら次のターゲットを探すペンネ。
「あの奥にある3隻の船、奥の1隻を守っているみたい」
ペンネの瞳に映る4隻の船。1番奥にある大きく金色のきらびやかな装飾の施された船。それを守る様に大きな3隻の船。どれも武装が凄く兵の数も多いのが遠くからでも確認出来る。
「気になるのはあの魔法障壁。かなり強いものだよね」
ペンネが直接魔法を放ってないとは言え大波の影響を受けていないその船は明らかに他とは違う雰囲気を醸し出している。
ペンネが弓からパネルを空中に展開するとボタンを押す。
「ポムさん、1番奥にある大きな4隻の船見えますか? あれに向かって攻撃を仕掛けてもらえませんか?」
〈うおっ!? ビックリするなコレ。つーしんてやつだっけ。ああと待ってくれよ……ああ見える。あの金色の派手な船とその周りにいるやつだろ? 攻撃すれば良いんだな、いいぜ!〉
ポムの攻撃を待つペンネは呟く。
「なんとなく嫌な感じがするんだよね。気のせいだと良いけど」
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