その4 ポムの里帰りにゃ!

「お!? また新しい子だね。紅葉ちゃんから聞いてるけど銃を使うんだってね。後、頭を叩くと回復? だっけ」


 髪も髭をボサボサにした窓際がペンネ達を迎える。ポムは絶対に役に立つと言われ早く島へ行きたい気持ちを抑え窓際の元へついてきた。


「所長、緊急事態だそうですから手短に」


 麻帆が窓際を促しポムに新しい拳銃とスナイパーライフルを手渡す。使い方を一通り聞いたポムがスコープを覗いたりしている。


「超遠距離射撃可能なライフルなんだけど君らが使うと度外視無視なんだろうね。

 それとこれ。このボタンを押すと伸びるピコピコハンマー。これで優しく頭を叩けるはず」


 ピコピコハンマーを手にしたポムが窓際の頭を叩く。


 ピコッ!


 窓際の体力が3800回復する。


「おおおぉ! なんか分かんないけど疲れが取れた気がする。今度からポムくんに叩いてもらいながら作業しようかな」

「所長それはただの変態です」


 ちょっと残念そうな窓際が次の装備を持ってくる。


「紅葉ちゃんにはこれ周囲に浮かんで自動で攻撃を防いでくれるAI搭載の盾と地雷の追加ね。後巨大盾も追加と」


 紅葉にも盾などが渡される。その横で麻帆がペンネのスカートを捲り中に入ろうとする。


「な! 何をしてるんです?」

「ああ新装備を着けてあげようかと思いまして。どうぞ気にせずに」


 そう言ってスカートの中に侵入しようとする麻帆を必死で押さえるペンネ。

 だが抵抗虚しく侵入を許すと太もも辺りに何かを巻かれる。


「フッフッフッフッフ」


 スカートに頭を突っ込み笑う姿はただの変態である。


「なんで私のレベルなら余裕ではねのけれる筈なのにこの人だけは効かないの」


 困惑するペンネに満足気な麻帆が装備の説明をしてくれる。


「ペンネちゃんは基本遠距離だけどもし近距離戦を余儀なくされたときの武器で魔法を媒体としたビームサーベルです。

 バトのとは違って魔力で調整出来るから長さが変えれるのが特徴になります。これを太もものベルトに付けて合計4本お渡ししますね。それと……」


 麻帆が紙袋をペンネに渡すと耳打ちをする。


「良いですか、女性の魅力は中からも滲み出ます。シシャモさんを落とすなら下着を変えて、見えないところからもアピールするべきです」


 麻帆が親指を立てエールを送るとペンネが何度も頭を下げながら紙袋大事そうにを抱き締める。


(うわぁ絶対どうでもいいことしてるな麻帆さん)


 紅葉が呆れた顔で見ていると窓際が話しかけてくる。


「紅葉ちゃんはこれかどうするのかい? 今や悪の組織の親玉みたいになってるけど」

「うん、まあなるようにしかならないかな。お父さん達がいなくて良かったって今は本当に思うよ。おじいちゃんは?」

「おじいちゃんは、紅葉ちゃんと関係無いってことで通してるよ。あの人は大丈夫だと思うよ」


 紅葉が左目の眼帯を抑えながら右目を潤ませつつ喋る。


「おじいちゃんには苦労かけちゃうね。でもボクはこのまま進むよ」

「なんか強くなったね紅葉ちゃん」

「レベル90だからね」


(あ、今あたい空気だ)


 居心地の悪さを感じてるポムの後ろから声がする。


「準備出来ました? ミキシング島にそろそろ行こうかと思うんですけど」


 スピカが現れて出発を促してくる。3人は頷き雷と共に消えていく。


「さてと、こっちの魔王を見つけて対策考えないとね」

「ですね」


 残された窓際と麻帆は作業に取りかかる



 ***



 落雷がミキシング島の中央、教会の広場に落ちると音と光で島民逹が集まってくる。


「おお! ポム元気にしてたみたいだでねえ」

「婆さんも元気みたいで良かったぜ」


 教会から出てきたライムがポムと一頻り会話した後、現在の状況を説明してくれる。

 人間の船がやって来たのが1日前。今島を囲む様に停泊しており今朝早く一隻の小さな船で男逹がやって来て「前回来た兵の行方を教え、献上品となる魔物を選別し差し出せ」といった令状を持ってきたとのことらしい。


「これをね今日の夕刻迄に差し出す魔物を選び人間をもてなす席を用意しろっていうのさ」


 ライムを始め島民逹が本当に困った表情をするなかポムが胸を張り高らかに宣言する。


「任せな! あたいらがどうにかする。3人いればどうにかなるって」


 ライム達島民はペンネと紅葉を見て納得するがポムを見て心配そうな顔をする。


「ポムあんたがかい? ちょっと強くなったくらいじゃ役に立たないよ」

「あ~も~信頼ねえな。まあ役に立つから見てろって」


 半信半疑のライムを無理矢理納得させようとする。

 2人が言い合うなか獣人の女の子と父親が人混みを分けて出てくると紅葉に近付いてくる。


「紅葉様!」

「あれ、マオカ元気そうだね。こちらは?」


 マオカが勢いよく紅葉に抱きつくと獣人の男性が頭を下げてくる。


「マオカの父タマリロです。お礼を言うのが遅くなって申し訳ない。こうして生きていられるのは紅葉様のお陰です、本当にありがとうございます」

「いやいや命を救ったのはポムだよ。ボクは何もしてないよ」

「紅葉様、謙遜しすぎです! マオカととーちゃんの為に戦ってくれたからそれで良いんですよ!」


 紅葉に抱きついたままのマオカが紅葉を見上げると満面の笑顔を見せる。


「マカオは紅葉様の元へいきます。そして紅葉様のお世話をいたします!」


 後ろでタマリロがうんうん頷いている。


「え、なに? なんか話が進んでるけどお世話ってなにさ」

「それはお着替えを手伝ったり、背中を流したり、一緒に寝たりなんかです」

「それいる?」


 困惑する紅葉を知ってか知らずかマカオは話を続ける。


「今回、人間の要求の1つに幼い少女を出せというのがありました。このままだとマオカは差し出されます。でも紅葉様が助けに来てくれたんですよね」

「うん、そのつもりで来たけど」

「でしたらそれはもうマオカは紅葉様のものってことです」

「ん? んん? そうなの? そんなことなの?」


 混乱する紅葉に抱きついて胸元に頬を擦り付けるマオカ。


(あの子凄い! なんて完璧な流れなんだろう。相手に考える余地を与えず畳み掛ける。私も見習わないと!)


 ペンネがマオカに尊敬の念を送る。

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