その3 迷宮?迷わなければ迷宮じゃないにゃ!
地下にある迷宮の1番奥に座する『黄泉の魔王』こと『グラープ』は部屋に浮かんでいる無数の水晶を観ながら怒りに震えていた。
豪華な衣装に黒いマントを羽織っており緑髪に顔は不健康そうな色白の青年であるが半分だけ仮面で覆っている。
3大魔王のビアシンケンが治めるメガロが魔王狩りシシャモによって大打撃を受けたのを聞いてビアシンケンの討伐及びメガロの支配を企てたのが2日前。
休むことなく動かせる死者の軍団で攻め始めたばかりと言うのに突如現れた魔王狩りシシャモとその仲間。
自分の軍がただのハリボテのようにただ壊されていく様を見て歯軋りをするしか出来ない。
1体のスケルトンがグラープに近づき歯をカチカチ鳴らす。
「もう来たか……だが俺の本領はこの迷宮だ。この黄泉の迷宮に迷い、恐れ、後悔しながら死んでいくがいい!」
グラープの高笑いが響く。
***
「ここが迷宮の入り口か。スケルトンを辿っていったら簡単に発見できて良かった」
森の奥にある滝の裏からスケルトン逹が整列し規則正しく出てきているのを見て燕は滝に突っ込んでスケルトンを吹き飛ばす。
滝の裏には洞窟があり3つの入り口らしき穴と祭壇が置いてあった。
祭壇には魔方陣が描かれており、魔方陣が光る度にスケルトンが現れる。
燕が祭壇を破壊するとスケルトンの召喚が止まる。
「これでスケルトンの軍が増えることはないはずだ。さてどこから行けば良いのか」
燕が3つの入り口の真ん中辺りにある看板を読む。
──迷宮攻略に関しての注意
1 3つの入り口どれを選んでも最新部までたどり着けます。
2 難易度はどれも変わりません。どこを行っても地獄です。
3 命の保証は致しておりませんが、お亡くなりになった場合、肉体の所有権は黄泉の魔王のものとなります。
4 ゴミは捨てないで持ち帰って。来たときよりも美しく!
「ふむ、どこを行っても一緒か。なら一番左を選ぶとしよう」
燕が入り口の地面に大きく自分の名前を斬って刻むと入り口へ入る。
***
「1番乗りは燕か、流石や。さてうちは真ん中にしようか」
バトが真ん中の入り口の地面に名前をビームで焼いて刻む。
***
「あたしが1番最後かにゃ。一直線だから1番早いと思ったのににゃ」
シシャモは地面にある燕とバトの名前を見て1番右の入り口に入る。
短い廊下を進むと『巨大迷路』の文字が書いた扉が見える。注意書には「死者の大群を退けながら暗い迷路を君は突破出来るか!」と書いてある。
特にコメントもしないシシャモが扉を開けると天然の洞窟を利用した迷路が広がっていた。
しばらく進むと行き止まりにあたりスケルトン逹が襲ってくる。それらを蹴散らし。元来た道を戻ると何かを踏んだ感触を感じる。
突然目の前に巨大な刃物がブランコの様に振られシシャモに襲ってくるので手で払い破壊する。
下から槍が出てくるので避けて破壊。毒ガス噴出してくるので拳圧で風をおこしガスを掻き消しながら装置を破壊。坂道から岩が! 蹴り飛ばし破壊。
「……」
シシャモは右手に力を込め構える。
『必殺
薄暗い迷宮に赤い光が放たれ一直線に迷宮が破壊される。
「めんどくさいにゃ。真っ直ぐ行けばいいはずにゃ」
シシャモが空いた穴を通って歩いていくとき他の洞窟でも同じことが起きていた。
全ての壁を切り刻みながらただただ真っ直ぐ進んでいく燕。
火の迷宮と呼ばれる辺り一面の灼熱の炎をものともせず、銃弾をばらまきながら真っ直ぐ進むバト。
着実にグラープの元に突き進むシシャモ達。
***
「おいおい、どう言うことだ。迷宮の意味全然ないじゃないか。
おい! ゾンビの大群とドラゴンゾンビはどうなった?」
グラープが怒鳴ると側にいるスケルトンがカチカチ歯を鳴らす。
「そっか死んだか。いや元々死んではいるんだが戦闘を見ることもなく瞬殺か。
そうだ! それより奴らはどこにいる。この地下10階に広がる巨大迷宮いくら奴らでもすぐに攻略は出来るわけないだろう!」
スケルトンがカチカチ歯を鳴らす。
「真っ直ぐ地面を破壊しながら下りてきてる? まじで!? で今どこよ?」
黄泉の魔王の間にある大きな出入り口の扉が轟音と共に破壊され吹き飛ぶ。
「多分ここにゃ、扉が大きいしにゃ」
「そういったものか」
「そういったものや」
3人がわいわい言いながらグラープの元へやってくるとグラープを見つけ嬉しそうにシシャモが寄ってくる。
「ほら見るにゃ! 多分こいつが魔王にゃ」
シシャモがグラープの頭をペチペチ叩くと「ー4000」が連続で表示されていく。
「やめて! 死ぬ! そのままいくと本当に死ぬから。俺が黄泉の魔王グラープだから。ごめん許して」
グラープが必死に許しを乞うのを見てシシャモが叩くのをやめる。グラープは後ろに下がり土下座で許しを乞う。
「にゃんか哀れにゃ。このタイミングで進軍してきたからこいつが最悪の魔王かとも思ったけど違うみたいにゃ」
3人ともグラープに背を向けて帰って行こうとするがシシャモが足を止めるとグラープの元に詰め寄ってくる。
「ひいぃぃ!」
怯えるグラープの襟首を掴むシシャモがいつになく真剣に語り出す。
「お前の迷宮ちょっとやったけど単調にゃ! 同じような罠に同じような敵。
フロアも燃えてるか凍ってるか、じめじめしてるかで面白くないにゃ。挙げ句スケルトン逹が迷わないように出口まで小さく目印つけてるし、やる気無さすぎにゃ!
それに1番問題にゃのは飴が無いにゃ! なんで罠だらけの迷宮に入ってお前に会いに行かなきゃならないにゃ!
無駄に広いだけの迷宮作るなら辞めてしまえにゃ! お前センス無いにゃ!」
捲し立てるように言うとスッキリしたのかシシャモは去っていく。
残されたグラープは地面に手を付き涙を流していた。
「そうか……そうだったのか。道理で誰も来ない訳だ。初めて指摘してくれて叱ってくれた魔王狩りシシャモ……いやシシャモ様ありがとうございます」
シシャモが去っていった方に頭を下げシシャモが喜ぶ迷宮作りを誓うグラープであった。
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