その2 レベル100にゃ!?

 バトが屋根の上を移動していると前に来た貧困街にやってくる。

 そのまま走っていると下から呼ばれる声がするので声の方へ向かって降りていく。

 下ではマル、ヘレ、ランプをはじめとした住民がいた。


「おお、お笑いトリオやないか。ちっくとは面白うなったか?」

「なんだよそれ! 面白いとかどうでもいいんだよ」


 マルが憤慨しつつもヘレに宥められバトに頭を下げてお願いをしてくる。


「スケルトンの軍が攻めて来たって聞いてモルシャー様が向かったんだ。

 厚かましい願いなのは分かってるけどモルシャー様を助けてはくれねえか」

「ええぜよ。ついでやき」


 あっさり了承するバトにマルをはじめ皆が驚く。


「あ、有り難いけど良いのか? 俺らお前に金あげたり出来ねえぞ」

「金とかいらんき今度面白いことしとーせ」


 バトはそれだけ言うと建物の上に飛び乗り城の塀に向かっていく。

 そんな後ろ姿を住民は無欲な「銀の乙女」に感動し感謝の念を送りながら見送る。


「面白いことってなにすれば良いんだ?」


 マル達は悩む。



 ***



「あれか」


 バトはスケルトンの軍とビアシンケンの兵が小競り合いをしている中にモルシャーの姿を捕らえる。

 塀から飛び降り腕を伸ばしながら周囲の敵を斬りつつツインテールを飛ばしたチェイスの攻撃を繰り出し敵を一掃していく。


「モルシャー元気にしちょったか? うちはこのまま進んでいくき、ここの防衛は頑張っとーせ」


 モルシャー達が答える間もなくバトが背中から2本の砲台を展開し両肩にセットする。


『必殺 バトキャノン』


 2つの砲身から放たれる2本のビームは目映い光と共に周囲の敵を消し去る。


「充電、充電♪」


 バトは楽しそうに過ぎ去って行く。残されたモルシャー達は周囲が焼け野原になり動くものが全くいないことに唖然とする。


「恐るべし銀の乙女だな」


 モルシャーはボサボサの髭を触りながら世の中の広さを感じていた。



 ***



 スケルトンにも他の生き物より鈍いが気持ちはある。ただ、怒り・嬉び・恐怖の3つぐらいではあるが。

 そして今、恐怖がスケルトン達を支配している。

 魔物の兵を攻め仲間が倒れても倒れても恐れることなく数で押していく。それがスケルトン達の戦法でありこれまで勝利を重ねてきた実績あるものである。


 それは突然戦場に現れると「にゃーにゃー」言いながら仲間のスケルトン達を粉砕していく。

 あまりの圧倒的力の前に敵の魔物も手を止めその様子を見ている。

 そしてスケルトン達に絶対に敵わないという恐怖心が芽生えそれは伝染する。

 ただ逃げる事は生まれたときから出来ない存在であるため進むことも出来ずただ立っているだけの者が出てくる。


「次はこれにゃ!」


 ガッチャン! リーディングOK!「イーグル!!」

 デデデデン 装着! 「イーグルウイング!!」


「おお! 飛べた! 飛べたにゃ! ペンネ程じゃないけど飛べるにゃ」


 空ではしゃぐシシャモがベルトのボタンを連打すると拳を構え急降下する。


『必殺 シシャモパンチ・イーグルバージョン』


 数体のスケルトンを巻き込み地面に拳を突き立てるとシシャモを中心に衝撃波で地面がへこんでいき範囲に入った者達は粉々に砕け散っていく。


「これはどうにゃ」


 ガッチャン! リーディングOK!「タイガー!!」

 デデデデン 装着! 「タイガークロー!!」


「ネコがタイガーになる意味はあるか分かんにゃいけど」


『必殺 白虎流星脚』


 連続で繰り出される蹴りに周囲のスケルトンが粉砕される。


「強いけど集団戦より個人戦に向いてる技にゃ。次はこれにゃ!」


 ガッチャン! リーディングOK!「ドラゴン!!」

 デデデデン 装着! 「ドラゴンモード!!」


 頭にドラゴンの頭の被り物が噛みつき口の中に顔がある様な格好になり両手を両足に太い爪が装着する。


「こ、これは強いのかにゃ? あいつ火を使ってたからにゃ、えーーと」


 ベルトのボタンを連打する。

 両腕を自分の体の前で大きく回し右手のひらを正面に向けたまま肘を引き力を溜める。

 手のひらに赤い光が集まりだし大きくなったところで勢いよく前に出す。


『必殺 描撃紅蓮竜波びょうげきぐれんりゅうは


 右手から放たれる紅蓮の竜は生きているかの様にスケルトン逹を炎に包み消し去っていく。

 辺り一帯のスケルトンが消え去るときシシャモにレベルアップのファンファーレが鳴り響く。


 ──プップクプーーーー♪


「にゃ? こんな音だったかにゃ?」


〈お久しぶり~元気にした?〉


「お前はスピカより偉い神様にゃ」


〈そうそう、覚えくれてて嬉しいな。それよりレベル100超えおめでとう!!〉


「にゃに!? 100?」


 シシャモが自分のステータス画面を開くとレベル100の文字が表示され、カンストしていた部分の桁が増え数値が進んでいる。


〈色々聞きたいことはあるだろうけど今はそっち優先でね。ペンネと燕も超えるだろうし残り3人も近々超えそうだね。

 後さスキルはちょっと待ってて調整が難航しててね。じゃあ頑張ってね~〉


「なんにゃ、勝手なやつにゃ。取り敢えず先に進むにゃ」


 スケルトン軍を1人で圧倒していく魔王狩りシシャモはその存在を周囲の記憶に焼き付けながら進んでいく。

 そして着実レベルアップを重ねその力は更に増していくのだった。

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