その20 青函トンネルを抜けて次は……にゃ!

「こなくそ! こっちのスキル補正を無視してなんで避けれる」


 苛立つポムに自慢げにエリーは答える。


「ふふふふ独自に開発した弾丸起動予測と弾丸コーティング。そして対魔法用の魔法コーティングこれで君たちの対策はバッチリって訳さ」


「んじゃあこれはどうだよ」


 ポムの放つ弾丸が空中で弾ける。


『必殺 精霊召喚・イフリート』


 空中で描かれた魔方陣から炎に包まれた大きな腕が伸びエリーを捕らえようとするが既に遠くに移動していて空を切るだけだった。


「さっき見せてもらったけどその魔法は発動するまでの時間がちょっと長いよね。弾丸予測ができれば避けるのは、かんたん、かんたん!」


 ドーーーーン


 エリーの後ろで激しい破壊音がトンネル内に反響して響く。

 エリーが後ろを振り返ると新幹線ロボ日輪の右腕が宙を舞っていた。


「えぇ! 嘘でしょ対魔法のコーティングしてるのに!?」


 エリーの叫びも虚しく次は日輪の左腕が吹き飛ぶ。


「なるほどね、ダメージが通りにくいだけで耐久値を超えたら壊れるんだ。

 この狭い空間で爆発させると大変だから凍らせましょうか」


 ペンネの引く矢が冷気を放ち飛んでいく。

 日輪に当たると弾けあっという間に全身を氷で包みトンネルごと氷付けにする。


『必殺 グレッチャーザルク』


 日輪を氷の棺に閉じ込めるてしまうと列車の上で涼しげに立つペンネはエリーの方へ向かってゆっくり歩いてくる。


「ちょっと待つにゃ」


 シシャモが車両の中から上がってきてペンネを止める。


「ここはポムに任せるにゃ」

「だね♪」


 自分を迎えに来てくれた(と思っている)シシャモに抱きつくペンネがぶら下がったままのシシャモがポムを指差す。


「ここはポムに任せたにゃ」


 そう言って嬉しそうなペンネを連れて車両に入っていく。

 残されたポムは笑う。


「くくくくくく、ああいいね、こう言う感じ好きだぜ! 任せろあたいがこいつを倒してやろうじゃねえか」


 元々目付きの悪い目を更に鋭くしギザギザの歯を見せ嬉しそうな顔をするポム。


「な、なによこいつ。どう考えても頭おかしい奴じゃないの」


 エリーが仮面をパンパン叩いてフロッピーディスクを差し込む。


 ガッチャン! リーディングOK!「ジャガー!!」

 デデデデン 装着! 「ジャガーモード!!」


 体にジャガーの模様を浮かび上がらせたエリーが2丁のビーム拳銃を構える。


「私は悪には負けない!」

「んだよ、悪とか正義とかてめえら人間はほんとうるさいな!」


 ポムとエリーの撃ち合いが始まる。

 銃弾予測で避けていくエリーに対して自身の動体視力と身体能力で避けていくポム。


 ポムは時々召喚を混ぜて撃ってみるが魔法発動を予測できるのか早い段階で避けられる。


(ちぃぃ、ジリ貧だな。精霊の種類を変えても召喚の時間を考えたら一緒か)


 頭の中で考えながら撃つポムにエリーがナイフを数本投てきしてくる。


「うおっ、あぶねえな」


 避けながら撃つとエリーがランチャーを構えミサイルを撃ってくるのに対して、精霊フェンリルを撃ちミサイルを凍らせ無力化する。

 休む間もなくエリーは剣を振りながらビームを撃ってくる。


「ああもう! ビックリ箱かよ。次から次へと鬱陶しい。あたいは銃弾で召喚するしか……」

(いや待てよ。召喚ってまだやってねえじゃねえか)


 ポムが鋭い歯を光らせニヤリと笑うと銃のマガジンを装填する。


「てめえ調子に乗んなよ。消し炭にしてやるよ」


 ポムが銃弾を連続で放つ。


「だから銃弾は予測出来るから意味ないって」


 エリーを横切る銃弾が赤く光空中で静止すると魔方陣を描き始める。それを警戒して下がって身構えるエリー。


「私の真横で魔法を使っても……ってこれは」


 エリーの目の前に7つの赤い魔方陣が空中に描かれそれは縦に3つ、それを挟むように左右に2つ、下に足のように2つ。

 左右の魔方陣から燃え盛る両手が飛び出すと

 一番上の魔方陣から牛の様な頭に大きく長い角をはやした顔が現れ胴体両足が姿を現すと全身の炎を吹き上げながら吠える。


 ぐおおおおおおおおお


 その低い唸り声はトンネルに響き耳を塞ぎたくなる。実際エリーは耳を押さえている。

 そしてその巨体故に車両の屋根がへこみ始める。

 車両の中ではシシャモ達が前の車両に避難を開始している。


「なによ、なによこれ!?」


 慌てふためくエリーがビームを撃ちナイフを投てきするが炎に掻き消される。


「完全召喚、イフリートってやつだ。じゃあ行くぜ!」


『必殺 豪腕破裂』


 巨体に似合わぬ素早い一歩踏み込むと太い腕を振り下ろし車両の屋根ごと爆発と共に吹き飛ばす。


「ちょっと、うそでしょ! うそでしょ!」


『必殺 爆炎球』


 イフリートが手のひらに生み出した巨大な炎の弾を投げてくる。


『必殺 業火砲』


 炎の球が到達する前にイフリートが口を大きく開き太いビームのような炎を吐く。


「まずいよ、まずいよ。想定外」


 フロッピーディスクを差し込みアルマジロモード変身すると丸くなって路線に飛び込む。


「撤退、てったーーーーい!!」


 派手に爆発するトンネルの中逃げ回るエリー。


「ちっ、逃げたか。トンネル壊しちまったけどまあ良いか。お前もご苦労さん」


 イフリートはポムを見て頷くと消えていく。


 やがて列車はトンネルを抜けホッカドーに到着する。


「着いたぜよ。敵の姿も見えんしここまま弟子屈カンパニーまで乗り込むぜよ!」

「よし行くにゃ!」


 6人が沈みかける夕日をバックに広い大地を歩きだす。


「足元か夕日辺りに俺たちの戦いはここからだ! とか書いてそうな絵面だね」


 紅葉がバトの背中で呟く。


「ちょっと待ったあああ!!」


 落雷と共にスピカが落ちてくる。


「なんにゃ? 性悪女神。今から敵陣に攻め込むのににゃ。盛り上がってるとこにゃ」

「大変だから来たってのにもうちょっと敬いなさいよ。いいポムちゃんの島に人間を乗せた船が大群で向かってきてるの。

 それと、この間行ったメガロの町に『黄泉の魔王』が死霊を引き連れ攻めこもうとしいているの」


 必死で説明するスピカの内容に驚くシシャモ達。










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