その16 ポムの初アースだけど雲行きがにゃ……

 落雷と共に町の真ん中に転がり落ちる6人。


「ぐにゃーーぁ!!」


 いつもと違い回転を加えられた転移のせいで皆地面に叩きつけられ転がってしまう。


「なんにゃあの女神。転移魔法を必殺技にしてダメージ追加する意味ってなんにゃ」


 ご立腹のシシャモ達だが1名テンションが高いのがいる。


「なんだこれ! すげーーな。これ石か? あんな高いところにも人がいるぜ! どうやって上るんだ。あの馬車、馬がいなくても動いてる!? 内蔵式か?」

「ポムやめて、自警団の人達が来るから」


 建物や人、看板を触りまくり車に飛び込もうとするポムを紅葉が必死で止める。


「そ、そうだ! ポムまずは洋服を買ってその後、食事しよう! こっちの料理はシシャモ達も大好きだからね?」

「おう行く! よし早く行こうぜ紅葉!!」


 切り替えの早いポムに呆れながらも少しホッとした紅葉は服を買いに行く。



 ***



(なんと言うか、性格からそんな感じと言うかまんまだよね)


 お馴染みのビュッフェスタイルで食事をする紅葉は目の前で涙を流しながら食べるポムを見て思う。

 パンク風なお姉さんがガツガツ豪快に肉を噛みきり食べている。


(チョーカーとか鎖とか似合うな……)


「そう言えばバトって何食べるの?」

「うちか? 体内にちっくと人には言えんような未知のエネルギーが渦巻いちょってそこから供給しちゅーぜよ」

「……ごめん全然分かんないや」


 皆がガツガツ食べるなかずっと座っているバトはシシャモ達が持ってきた食材の成分分析とカロリーを計算して楽しんでいる。


「さてと、ボクもおかわりをしようかな」


 紅葉が席を立ち何気に入り口を見ると店員さんと自警隊の人がなにやら話している。


「ん? なんか騒がしいな」


 紅葉が立ったまま見ていると自警隊の人達が自分達の席に向かってきて囲まれ自警隊の1人が腕章を見せてくる。


「お前達は春風 紅葉一派だな?」


 シシャモ達が食事を止めて自警隊を見る。


「指名手配犯として同行を願いたい。無駄な抵抗は──」


 隊長らしき人が言い終わる前にシシャモが素早く立ち上がる。


「ペンネ! 燕、バト、ポムは収集にゃ! 紅葉は収納にゃ!」

「はい♪」


 ペンネが周囲に風を生み出し自警隊を軽く飛ばすと燕、バト、ポムが手当たり次第料理を紅葉に投げてくる。


「なにさこれ!? 収納?」


 投げられる料理の所有権がシシャモ達に移りそれを紅葉が収納する……いや紅葉は意味は分かってないが飛んでくるものをただ収納しているだけだが。


「撤収にゃ!!」

「おまかせです♪」


 ペンネの周囲に雷が走り黄色く光る魔方陣が地面に描かれる。

 その魔方陣が強く光を放つとシシャモ達は建物の外に移動する。


「走るにゃ!!」


 シシャモの声で皆が走る。


「……」

「どうした紅葉? 悩み事やか?」

「いやこれ普通に食い逃げじゃ……」


 走りながらも悩む紅葉に半分飛んでいるペンネが近づいてくる。


「紅葉さん安心して下さい。お金は取り敢えず置いてきてます」

「流石ペンネ!……あれ? ペンネこっちの通貨持ってたっけ?」

「通貨レートが分からないので気持ちほど300デーモン置いてきてます」

「……もういいや」


 ***


 逃げ切れたのか追っ手がいなくなったのを確認して休憩をする6人。


「なんで指名手配されてるんだろ? それにシシャモ一派じゃなくてボクなの?」


 項垂れる紅葉にバトがそっと肩に手を置いてくる。


「この6人の中で紅葉にしか無いものって分かるか?」

「なにそれ? なぞなぞ?」


 バトが首を横に振るので紅葉は考えてみるが分からないのですぐに降参する。


「戸籍や」

「えっと、それまた現実的な話だね。なんか疲れたよ、これからどうするのさシシャモ? おじさん達だけでなくボクらも地下で過ごさなきゃいけないんじゃない?」

「ふにゃあ……」


 しばし何やら考えてる様子のシシャモを皆が休憩を兼ねて見守る。


「バト、紅葉こっちの世界で速く移動する方法はなんにゃ? ついでに、大人数で移動するのに都合が良いのはあるかにゃ?」

「車、リニア、飛行機言うたところかな。

 どれも大人数で移動することは出来るよ。……言いたいことはなんとのう分かった。手っ取り早うリニアにした方がええ」


 シシャモがピョンと飛び上がり立つと皆を見る。


「いいかにゃ、あたし達はこの世界で指名手配、いわゆる犯罪者にゃ!

 犯罪者になったついでにゃ、こそこそ隠れず堂々と突き抜けるにゃ! むしろ相手をこそこそさせるぐらいに突き進むにゃ!

 取り敢えずはそのリニアとやらを乗っ取り移動にゃ!」


「流石シシャモ」

「修羅の道とは心踊る」

「えっーーーー!?」

「運転は任せとーせ」

「なんか分かんないけどすげーー!」


 ほぼ全員の同意を得たシシャモは満足そうに頷き声高らかに宣言する。


「それじゃあリニア乗っ取り作戦行くにゃーーーー! 我ら紅葉一派の力を見せるにゃーーーー!!」


 おーーーーーーーー!!

 えーーーーーーーー!?


 大体全員が気合いを入れて作戦に向け歩みを進める。

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