その14 ドラゴンにゃ!

 キラキラと飛ぶ光りは城の裏にある洞窟に入り地下へ地下へと降りてやがて広い空間に降りる。

 洞窟の地面に着地したシシャモは辺りを見回す。薄暗いがネコの獣人であるシシャモには見ることが出来る。


「ずいぶん深くまで連れてこられたみたいだにゃ」


 壁を触って見上げると魔方陣の様なものが至るところに描かれている。


「なんにゃ? これ」

「我輩を閉じ込める封印よ」


 シシャモの背後から洞窟に響き渡る太い声がする。


「我輩はファイアードラゴンのエポワス。小さき者よ名を名乗れ」

「あたしはシシャモにゃ」


 洞窟の奥で赤く鋭い2つの光が地鳴りと共に近づいてくる。やがて姿を表すドラゴン。

 ファイアードラゴンの名に恥じぬ赤く輝く体は触れただけでも燃えそうな暴力的強さを感じる。


「我輩の所に来るとはシシャモよ。お前は強きものだな」

「それは知らにゃいけどここから城に向かうにはどうしたらいいのにゃ?」


 ぐわはっはははははは──


 洞窟に響く大きな笑い声にシシャモは頭のミミを塞ぐ。


「その態度気に入ったぞシシャモ。本気で戦え! お前となら悔いなくやれそうだ」

「あたしは最悪な魔王を倒したいだけお前を倒す意味がないにゃ」


 ドラゴンが顎の辺りを擦るような仕草でシシャモを見下ろすとニヤリと笑う。


「この場所から抜けるには我輩を倒さねばならん。上にいる魔王が倒せぬ奴を我輩に押し付けここに送りつけるのだ」

「にゃに」

「シシャモお前がその気がなくてもいくぞ! 元業火の魔王と呼ばれた我輩を倒してみよ!!」


 エポワスは巨体に似合わぬ俊敏な動きで燃える拳を打ち込んでくる。

 シシャモが避けた場所は地面がえぐれ燃える。


 避けながら空中でベルトを巻きフロッピーディスクを差し込む。


「変身にゃ!」


 光に包まれ姿を変えるシシャモを見て嬉しそうなエポワスは尻尾を燃やしながら素早く回転する。

 それを避けるが尻尾によって起こされた熱風がシシャモに襲いかかり壁に叩きつけられる。飛び散る岩の破片を払うようにシシャモが壁を蹴り『必殺 シシャモパンチ』を放つがエポワスが手で受け止める。


「ぐぬううう」


 シシャモのパンチを受け後ろに下がるエポワスにシシャモが更に『必殺 シシャモキック』を放ち手を弾く。


 地面に降りたシシャモは地面を蹴りエポワスの腹に必殺のキックを決める。


「ごおぉぉ」


 血を口から流しながらも耐えるエポワスは両手を組むとシシャモに振り下ろし地面に叩き付け口から炎を吐き焼き払う。


「まだまだいくぞ!!」


『固有技 ドラゴンブレス』


 エポワスの固有技がシシャモがいた場所にきまり大爆発が起きる。


「流石に熱いにゃ」


 炎中をシシャモが歩いてくる。


「ほほう、面白い。久々に本気でいけそうだ」

「強いにゃ」


 2人が構えると突きと蹴りの応酬が始まる。拳通しがぶつかれば天井や壁がへこみ、明日がぶつかれば地面が砕け亀裂がはいる。


『必殺 シシャモパンチ』

『固有技 フレアパンチ』


 技同士がぶつかり周囲を砕き燃やす。


「強いなシシャモよ。この姿になるのは何百年ぶりか」


 エポワスが全身に力を込めると周囲に熱気を放ちながら体を変化させいく。

 一回り大きく筋肉質になり鱗は逆立ち赤く燃えている。鼻先には剣のような角が生え背中にも背骨に添って剣の様なトゲが生えている。


 一瞬で間合いを詰めるとシシャモに強烈なパンチを放ち地面に叩きつける。


「ぐにゃ!?」


 地面にぶつかりバウンドしたシシャモを蹴り飛ばし吹き飛んだシシャモは壁を砕いて止まる。


「うにゃあ、久々にダメージ受けたにゃ」


 壁から出てきたシシャモが少しよろめきながら出てくる。

 その姿を嬉しそうに見るエポワスが再び攻撃を仕掛けてくる。

 最小限の動きで攻撃を避け振られる尻尾をいなしながらフロッピーディスクを2枚出して差し込む。


 ガッチャン! リーディングOK!「クマ!! クモ!!」

 デデデデン 装着! 「スパイダーベアー!!」


「窓際は出来ないって言ってたけどやっぱりいけるにゃ。神の力ってやつかにゃ」


 シシャモが爪を振るうのをエポワスが避けるがシシャモは壁をタッチして再び爪を振るう。

 壁から糸が伸ばしながら攻撃を仕掛けるとやがてエポワスに糸が絡み始める。

 燃える鱗のせいで糸はしばらく絡み付いた後、焼ききれるがエポワスの動きを一瞬止めスキを作っていく。

 そこに拳を叩き込み蹴りを放ち、爪で切り裂く。


「にゃんと硬い奴にゃ」

「ここまで楽しいのは初めてかもしれんな。我輩最大の技を見せてやろう」


 心底戦いを楽しんでいるエポワスが力を入れるように拳を握りしめると全身が真っ赤になり体が激しく燃え上がる。

 口を大きく開きその中に激しい炎が玉を作り力が集まってくる。


『固有技 エクスプロードキャノン』


 炎の玉がエポワスの口から放たれ激しい爆発が起き洞窟全体が揺れる。


「ほうこれでも立ち上がるか」


 エポワスの目に燃える炎の中を歩いて向かってくるシシャモの姿が映る。

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