その13 ペンネvsバト 仲良くして欲しいにゃ

 無数の氷が剣の形を型どり周囲を切り裂きながら凍らせていく。

 その剣を銀色の剣閃とビームが弾き撃ち落としていく。


『必殺 ブルタールブリッツ』

『必殺 バトビーム』


 稲妻とビームが激しくぶつかり行き場を失くしたエネルギーが周囲に散乱し壁や天井を破壊していく。


「なんであんなに本気なのさ」

「日頃から溜まってるものあったんだろう。あの2人あまり喋らないからな」


 紅葉が必死に盾で防いでその影から燕が覗く。ポムは「スゲー」しか言っていない。


「そのビームが厄介ですけど連続では撃てないはずです」


『必殺 ツィーレンフランメ』


 ペンネの引く弓から無数の炎の矢が放たれる。バトが剣で斬ろうとすると避けてバトに向かってくる。

 それをかわすバトだが再びバトに向かい襲ってくる。


「避けても追尾するか。やったら」


『必殺 バトチェイサー』


 バトがツインテール部分をパージし追尾する矢をチィスで追尾し撃ち落としていく。

 その間も2人の間には魔法とビームが飛び交う。


 ツインテールを頭に戻し両腕のガトリングガンから銃弾を放つがペンネが稲妻で掻き消す。

 その隙を狙ってバトが肩からビームを放つ。それを難なく避け空中に飛び上がると暴風矢を放ちバトの周囲に竜巻を起こす。

 その竜巻をバトが剣を出し体を回転させ内側から掻き消す。

 回転と同時に放っていたチェイスがペンネの後ろに回り込んでいてビームが放たれるがペンネが炎の渦に自身を包みビームは掻き消される。


 近距離を挑むバトに対し氷と炎の剣を周囲に纏いながら器用に受け遠距離を仕掛けるペンネ。

 ペンネの遠距離はバトによって掻き消されバトはペンネに向かっていく。


 そんな様子をただただ見ているだけのビアシンケンの元に流れ弾が向かってくる。

 目を瞑ることも出来ないビアシンケンの目の前で閃光が走ると流れ弾を掻き消してしまう。


「今お主に死んでもらっては公平じゃないからな」


 燕が剣を鞘に戻しながらビアシンケンの近くに立つ。


「全くお城ぼろぼろじゃないさ。加減を知らないのあの2人は」


 いつになく怒った感じの紅葉が歩いて来てビアシンケンを含んで盾を設置する。


「そうは言うけどこの戦い凄いって! なかなか見れるもんじゃないぜ!」


 興奮気味のポムやって来てビアシンケンの周りを3人が囲む。

 声も出ないビアシンケンは黙って戦いの行方を見守るしかなかった。



 ***



 かつての優雅な王の謁見の間は見る影もなく壁や天井は壊れきらびやかなシャンデリアや照明、威厳や風格を示していた旗や肖像画は跡形もない。


 謁見の間にある林のように並ぶ柱の間をペンネが飛び回り、バトが腕を伸ばし飛び交う。


「流石にやるね。これならどうぜよ」


 頭のツインテールをパージするといつものチェイスを空中に浮かせて待機させる。


「チェイスソードモードや」


 チェイスの先端からビームが伸び柱の間を飛び回る。それに加えバトが腕を伸ばし攻撃を仕掛ける。


「全くここまでしつこい人だとは思いませんでした」


 ペンネが柱を上手に使いチェイスと剣の攻撃を避けていく。


「これは陽動ですよね!」


『必殺 シュプレンゲン』


 ペンネが鋭く大きい矢を横に放つと柱を次々にへし折り飛んでいく。それに合わせたように太く大きなビームが飛んできてぶつかると大爆発を起こす。



「やるねペンネ」

「あなたこそやりますねバト」


 少しだけ顔にススがついている2人が睨み合う。

 ペンネが弓を引きながら飛び上がりバトが肩にキャノン砲を担ぎチェイスを周囲に展開させるとお互い同時に放つ。


 再び周囲を巻き込みながら魔法とビームの応酬が始まる。


「レベルはバト殿の方が低いはずだが戦闘経験で上回っている感じだな」

「ペンネもスゲーよ。あれだけ動ける魔法使いっていないんじゃねえか? 簡単な魔法なんて無詠唱だし飛ぶスピードもダンチだしよ!」


 興奮してペンネとバトの戦いを見る2人の後ろで紅葉はぼやいてる。


「も~お城の天井も壁も何も無いじゃん。最上階全部吹き飛んでるじゃないさ。暴れすぎだよ」


 紅葉がチラッとビアシンケンを見ると2人の戦いを鋭い目付きで見ている。


「魔王って凄いね。こんな状況ボクだったら気絶してるよ」


 実はビアシンケン、この現実から逃げ出したくて気絶しないかなぁとか思ってる最中だったりする。



 ***


「やはり並みの魔法使いじゃあないのぉ。こっちも、もうちっくと本気出さんとね」

「私もバトを甘くみていました。もう少し魔力解放しないと不味いですね」


 ペンネとバトの体の周りに赤い電撃が走り始める。


 ペンネの瞳が赤く激しく光り、バトの青い目が輝きを増す。

 互いに一歩踏み込もうとした瞬間盾が前に出てきて進路を阻まれる。


「紅葉か!!」

「紅葉さん!?」


 2人が盾を避け互いに向かおうとするがことごとく盾に進路を邪魔される。


「出現位置が予測出来んわわわわ」

「なにこれ出方が速すぎてってて」


 2人が盾に囲まれ拘束される。


「もうお仕舞い。2人とも気は済んだ?」


 紅葉が盾に囲まれた2人の間にやってくる。


「もう! 喧嘩はあまりしちゃダメだって。仲良く出来る?」


 うなだれる2人を説教する紅葉を見て燕とポムは感心する。


「あの鮮やかな手付き流石、闇魔法使いだな」

「なんだよ紅葉やっぱりつええじゃんかよ」


 2人の喧嘩で城の上部は全て倒壊し2人が争う様は外からも見えていたが、その中でも微動だにしない魔王ビアシンケン様凄いみたいなことになっているのを本人は知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る