その7 ポムに出来ることにゃ!
ヴュルストの号令で一斉に矢と魔法が放たれた瞬間紅葉が何重にも盾を出して防ぐ。
響く爆音の中で紅葉がポムに隠れるように指示する。
ポムは自分も戦うと訴えるが紅葉から足手まとい言われ納得する。
いや本当は納得はしていないが今の現状を言われると納得せざる得なかった。
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「いい? ボクが道を作るから走ってあの木の中に隠れて!」
「いや、あたいも戦う! 紅葉みたいにはいかないだろうけど1人でも多く減らすからさ」
紅葉が首を横に振って否定する。
「ポムはまだレベル20もいってないよね。今のままだとやられちゃうから隠れてて」
「そ、それって足手まといってことか!」
紅葉がちょっと困った表情を見せるが真剣な表情になって「うん」と頷く。
ポムはショックを受けるが自分が弱いことは分かっていたので紅葉の指示に従う。
隠れる為に木の方へ行こうとしたとき紅葉からある作戦を告げられる。
「じゃ、頼んだよ」
そう言って盾を出し走っていく紅葉と反対方向にポムは走る。
走る間、盾がポムを守るように出現しその間をポムは走り抜ける。
木の前まで来ると盾が空中に横向きに現れるのでそれを足場にし階段のように次々と現れる盾を使って木の葉の影に身を潜める。周囲に盾が3枚現れる。
「これで身を潜めろってことか……」
分かっていても弱いって言われるのは辛い、ちょっと涙が出そうになるが盾で簡単なバリケードを作って身を潜める。
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さっきまでの事を思いだしたポムは息を大きく吸って吐くと木の葉の影から周囲を観察する。
武器や盾が弾け、空からは武器の雨が降り注ぐ。次々と兵士達が命を散らし消えていく。
「スゲーー1人でこの人数を制圧していくって……あたいもいつか」
シシャモ達の中で1番弱いと自負する紅葉だがそんことないだろうと思いながらポムは目の前に広がる光景を固唾を飲んで見ていた。
「あの盾や武器って適当に出してる訳じゃないのか。全部考えてやってるんだな」
武器を飛ばしたり、飛ばさなかったりして緩急をつけることで兵士達は疑心暗鬼に陥り自分の事で精一杯になっている。
余裕がなくなり仲間の事まで気が回らないのだ。
隊列も組めずバラバラになる兵に襲いかかる武器、恐怖で逃げる者の進路を盾が防ぎ武器が襲いかかる。更に恐怖は伝染しパニックは広がる。
ざっと200人程いたであろう兵がヴュルストの周りを除いて全滅する。
次にヴュルストに狙いを定めた紅葉が隊列を少しずつ削っていく。
やがて起こる大きな爆発。ヴュルスト以外絶滅した瞬間だった。
流石、四天王と言うべきだろうボロボロになりながらも戦意を失わず紅葉に向かっていく。
ポムが拳銃を手持ちそれを胸に押しあて祈るように目をつぶる。
紅葉から言われた作戦、それはまずポムのレベルを上げること。これは木に隠れている間に紅葉が兵達を全滅させる事で達成している。
今やレベル58だ。ただ隠れているだけで成長したので実感ないがステータスを見ると数値が跳ね上がってるので間違いなく強くなっている。
そしてもう1つが必殺技を作ること。シシャモ達はこの世にある『固有技』と言う個人の強力な技を超えた『必殺技』と言うものを取得している。
それは与えられものではなく作るものだと紅葉に説明された。自分で考えて編み出せと言われたのを思いだしイメージする。
おそらくヴュルストはポムが手をくださなくても紅葉がどうにかするだろう。
ただ先程の爆発、あれが紅葉の大技なら何発も撃てないかもしれない。
この先を考えれば温存させるべきだ。
ポムは拳銃を構え狙いをつける。銃声と共に銃口から放たれた弾丸はヴュルストの額から後頭部を貫通し地面に埋まる。
埋まった弾丸を中心に赤く光る魔方陣が描かれると炎が吹き出し燃え盛る大きな腕を形成するとヴュルストを掴み握り潰す。
爆発音と爆風が辺りを走り抜けると炎の欠片が空から落ちてくる。
ヴュルストの姿はもうどこにも見当たらない。
『必殺 精霊召喚・イフリート』
表示が出ると木の上からテンションの高いポムが降りてきて紅葉の元へ駆け寄ってくる。
「紅葉! 見たか! あたいにも出来たぞ必殺技!」
紅葉は嬉しそうに目を輝かせ手をブンブン振るポムを見ても嬉しくなる。
「さあ行こうよ。シシャモ達探さなきゃ」
「おう! これであたいも戦えるし期待してくれ!」
テンションの高いポムを連れて紅葉は取り敢えずお城の方へ向かって歩いていく。
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『強引にスピカちゃん』
「もう強引に入ってきます。今回のポムちゃんの必殺技は精霊を召喚したものとなりますねえ。彼女の中に召喚出来る血が流れていたんでしょうね。
因みに撃つ際に撃ち抜いて燃やす感じをイメージしたみたいですよ。
他の属性も出せそうな予感ですねえ。後、そうそう紅葉ちゃんのは必殺技とか技系に分類されません。ただアイテムを出してるだけなんでダメだそうです。
頭固いですよねえ。十分必殺技っぽいのにどっかの慢心する王さまだって飛ばしてくるのに。そういえば序盤「そんなこと出来ない」みたいに紅葉ちゃんが言ってた気が……
よーーしこれからもバリバリ割り込んでちゃうよ!」
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