その5 紅葉の本気にゃ!
「ポム大丈夫?」
「いてえなあ、なんだこれ。なんで紅葉は普通に立ってんだ?」
「慣れ……かな」
ブラートに転移させられ、それなりに転移に慣れている紅葉は着地したが初転移のポムは顔から突っ込む。
「自分は回復出来ないの?」
「ああ、自分の頭叩いても回復は出来ないんだ」
顔の傷を痛そうにしてるのに回復する様子のないポムに紅葉が尋ねるとそんな答えが返ってくる。
とりあえず薬草をポムに使用して回復させる。
「紅葉のそれすげえよな、ノーモーションで回復とか尊敬するぜ。それも闇魔法なのか?」
「あ、うんそんなとこ。それよりここどこだろう?」
紅葉達が辺りを見ると広い土地に巻き藁や木で作られた人形、弓の的だろうか大きな板が斜めに設置され矢が何本も刺さっている。
「訓練所かな?」
「そうだ! 我々ビアシンケン魔王軍の訓練所。そしてお前の墓場でもある」
突如大きな声がして2人が見回すといつの間にか沢山の兵に囲まれている。
そのなかで一番大きく目立つサイの魔物がゴツイ鎧を身に纏い腕を組んで紅葉達を見ている。
そのサイの魔物に部下が紙の様な物を渡すとなにやらこそこそ話している。その紙を見ながらサイの魔物が喋る。
「我が名はビアシンケン様の四天王の1人ヴュルスト。お前は……魔王狩りのシシャモの仲間、罪人が1人……ん? しゅ、しゅ」
ヴュルストが紙を近づけたり離したりしながら部下と話している。
「えっと、春風 紅葉です」
話が進みそうにないので紅葉自ら名乗る。
「そうだ! 罪人紅葉よここで俺に潰されるがいい! ゆくぞ!!」
「っと待ったあーーーー!」
突然叫ぶポムに皆が注目する。
「あたいはポム! テメーらがなんかは知らねえが売られたケンカ買ってやるから覚悟しな!」
ヴュルストを始め兵達がざわざわする。ポムを指差し何か話している。
「誰だお前は?」
「な、んだと……」
紅葉がポムの肩を叩き目が合うと首を横に振る。ポムは肩を落として紅葉の後ろに下がる。
「ここで頑張ったら覚えてもらえるかな」
いつになく弱気にポムが呟く。
「まあ雑魚はどうでもいい。弓兵、撃ち方始め! 魔法兵も合わせろ!」
ヴュルストの号令で一斉に矢が放たれ、魔法が飛んでくる。魔法のぶつかる衝撃と音で空気が震える。
辺りが土煙で覆われ兵達が結果を見守る中突然1人の兵が倒れる。
「おい! どうし……」
別の兵が倒れた兵を起こそうとしたしたら腹部に剣が突き刺さっていた為意味が分からず言葉を失う。
剣がそこに無かったかの様に消えると周囲が騒がしくなる。
「みんな避けろ! 上だ!」
誰が叫んだか分からないがその声で兵が上を見ると大量の武器が落ちてくる。
転がる様に避けると落ちてきた武器は地面に当たりしばらくすると消える。
上から落ちてくる武器は突然上空に現れると落下してくる。正直これ自体はそこまで威力がない。ただ当たりたくはないので避ける羽目になる。また誰かが叫ぶ。
「上より横だ! 横に注意しろ!」
言葉通り横に飛ぶ武器は殺傷能力がある。突然現れると弾け飛んでくる。
1人の兵士の前に鉄の大きな盾が現れる。その盾が弾ける様に飛んできて吹き飛ばされると兵士は全身を強く打ち死んでしまう。
この武器や盾が襲ってくる状況に兵士はパニックになる。
そして今再び盾が現れる。身構える兵士だが飛んでくる気配はない。
何気なく隣を見ると仲間が盾に吹き飛ばされ叫びながら死んでいく。
武器も同じく現れて飛ぶものと飛ばないものが出てくる。
皆が突如現れる武器に身構えるが何も起きなかったり、かと言えば容赦なく吹き飛んできたりする緊張の強弱を強いられる状況に疲弊し始める。
相手がどこにいるかも分からずただただ逃げ回る兵士の頭上に再び武器が現れると落下してくる。
最初見た光景に皆が慣れた様に避けるが1本だけ剣が目にも止まらぬ速さで落下し1人の兵士を鎧ごと貫く。
そして次々に武器が雨のように降り注ぐ。
逃げ回る兵士の前に突如盾が現れて逃げ道を塞ぐと上空の武器で絶命させられる。
上空、横に突如現れては攻撃してくる武器になす統べなく兵士達が数を減らしていく。
「なんだ! このような魔法は見たことがないぞ!」
ヴュルストはこの状況に焦りながらも襲いかかる武器を弾き飛ばしていく。
ヴュルストの周囲にいる兵達は皆同じサイの種族で固められており武器による攻撃を盾などで防いでいる。
そんな様子を1枚の盾の影から紅葉は見ている。
(流石に四天王だけあってこれじゃ倒せないか。ほぼ兵達は全滅したっぽいし次の段階に進もうかな)
紅葉は盾を出してはその影に隠れながら移動していく。
途中生き残っている兵士を見つけると容赦なく武器を弾き消していく。
(ごめんね。本当は嫌なんだけどそうも言ってられない。ボクだって死にたくないからね)
地獄とかした戦場を誰にも気付かれることなく四天王ヴュルストを倒すために移動する紅葉であった。
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