正義の道それは修羅の道にゃ!

その1 ポムの武器選びにゃ!

「ポム体に気を付けて行って来なさい」

「おう! 強くなって帰ってくるから楽しみにしててくれ!」


 ポムは鋭い歯を見せ爽やかに笑う。


「婆さんも無駄に年とってんだから体に気を付けろよ」

「無駄には余計だよ」


 ケタケタ笑いポムがシシャモ達の船に乗りこむ。

 ライムと島民に見送られシシャモ達は魔界大陸に向かって出発する。


「ポム……」


 海を出てしばらくしても島を見るポムに紅葉が話しかける。


「な、泣いてねえからな! 潮風は目に染みるんだぞ!」


 そう言いながらも島の方を見るポムをそっとしておこうと思う紅葉の後ろでは


「にゃあ! ペンネなんにゃ! なぜ耳を触りまくるにゃ」

「ふふふふ、私の友情を伝えたいの」


 赤い瞳を妖しく輝かせるペンネのネコミミ攻めは続く。


「なんにゃ? なんで耳触ったら友情が伝わるにゃ?」

「あれ? シシャモは耳を触っても伝わらない?」

「うにゃあ! くすぐったいにゃ」


 考えながらもネコミミを触り続けるペンネがシシャモを見るとくすぐったさに顔を赤くして悶えてる姿が目に飛び込んでくる。


「!?」


 舌舐りをするとペンネが羽を広げ、小さい牙を見せ妖美な微笑みを浮かべる。

 そのままシシャモを抱きしめ首筋に口を近付ける。吐息が首筋にあたる程までペンネの口が近付くが噛まれまい必死に抵抗するシシャモ。


「にゃに! なんで今までしたこともないのにあたしに吸血行為しようとしてないかにゃ!」

「ペンネ殿! 早まってはいかん!」


 燕が必死にペンネを押さえる。

 船を進めているバトは見てみぬふりをして鼻歌を歌っている。

 小さな船の上で騒がしいシシャモ達であった。



 ***



 大陸についたシシャモ達は砂漠を歩き町があると言われる方角を目指す。


 砂漠の砂を巻き上げ背中にコブのついた魔物『デスらくだ』が宙を舞う。

 燕の右足が砂に食い込むくらい踏み込み刀を抜くと燕を中心に斬撃が円を描きそれが周囲に広がるとデスらくだ達は全滅する。


「シシャモ、この魔物の素材フロッピーディスクに書き込まいで、げに良かったが?」

「いらないにゃ、こいつらの能力に変身ってなんか嫌にゃ。『1コブラクダ』もーどとかに変身して活躍出来る気がしないにゃ」


 デスらくだのドロップ品を漁る2人がフロッピーディスクにするならこんなの欲しいと言う話題で盛り上がっている。


 そんなシシャモ達を見てただ呆然としているポム。


「すげえな、紅葉も強いって思ってたけど1人で30頭程の群れを瞬殺かよ」

「ポム、レベル上がった?」


 紅葉に声をかけられポムが慌ててステータスを確認する。『LV.13』の表示に表情が緩む。


「なあ、レベルや基礎能力は上がるんだけださ、なんでスキル覚えないんだ? もうちょい先なのか? 噂だとレベル10で新しいの1個は覚えるって聞いたけどな」


 首を傾げ不思議がるポムにペンネが答える。


「それは私たちも分からないの。私はレベル81だけどスキルは元からあるのと『友達想い』しか覚えてないから」

「ボクら他の人達と違うみたいだからよく分からないらしいよ」


 ペンネと紅葉の話を聞いて一応納得するポム。


「ところでさ、ポムってなんの武器使って戦うの?」

「私もそれ気になってたよ」


 2人の質問に悩むポム。


「それが、あたい武器とかまともに使った事無いんだ。レベル上がればなんか装備出来ると思ってたけどよく分かんないな」

「とりあえず色々使ってみたら? ボクが持ってるもの貸すから」



 ***



 短剣を装備するポムが『砂漠トカゲ』に攻撃を仕掛ける。

 体長30cmのトカゲは『-220』『+400』の表示を出し消えていく。


「これってさ死んだ後に回復したってこと?」

「頭に攻撃が当たると回復するんだね」


 槍を構えるポム。


「だあ、使いにくい! 全く当たる気がしない」


 斧を構えるポム。


「お、重い……振り回せるけど振りが遅くて当たらない」


 弓を構えるポム。


 200メートル程離れたデスらくだにヒットする。


「ん!? なんか良い感じだ」

「ポムさんは遠距離向きなのかも」

「ふ~ん、遠距離か。ねえポムこれ使える?」


 紅葉がアイテムボックスから拳銃を取り出す。


「なんだこれ?」

「銃って言って鉛をこの穴から飛ばして敵に当てて攻撃するんだ。ボクは片目だし狙えないからポム使ってみてよ」


 紅葉がバトを呼んでポムに使い方を教える。


 銃を構えるポム。発砲音がして銃口から煙が上がる。


「おお! なんかすげえな。よし今度はなんか狙ってみるぜ」


 はしゃぐポムが離れた場所を歩く砂漠トカゲに狙いをさだめる。

 再び発砲音がして体長40cm程のトカゲは撃ち抜かれ絶命し消えていく。


「なんと!? この距離の狙いをあっさりつけて撃ち抜くとは凄いぜよ。弾がブレちょらんけどなんで?」


 ポムがステータス画面を開くと興奮した声を出しながらスキルを覚えている事を伝えてくる。


『弾丸コーティング』『軌道修正』『銃弾クリティカル強』

 ポムに伝えられたスキルを聞いてシシャモが考え始める。


「シシャモ殿どうかしたのか?」

「ん~にゃんと言うかポムのスキルは銃の無いあたしらの世界には本来無いものじゃないかにゃ? タイミング良く覚えすぎにゃ」


 シシャモは腕組みをしてしばらく考えていたが腕組みをやめると歩き始める。


「考えて答えが出たとしてもやることは変わらないにゃ。最悪な魔王を倒せば良いだけにゃ」

「元もこうもないがそう言う事か。知りたければスピカ殿かその上の者に聞けば良いわけだしな」


 分からないものは分からない、今ある力で乗り切る。魔物らしい思考だったりするが意外に利にかなってるかも? と思いながら紅葉はシシャモ達についていく。


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