その30 6人目の仲間にゃ!
獣人の男をベットに寝かせ他の島民に後を任せると紅葉は海岸を目指し走り出す。
今まで気にしたこともなかったが自分の足が速くなっていることに驚く。
(元々運動神経が悪いボクがこれだけ走れるのだから元から運動神経が良い人とか恐ろしい事になるよね)
紅葉の頭にシシャモの顔が過る。
(前にミケ族って魔界最弱って聞いたけどレベルを上げる気がなかっただけで本当は強い種族なんじゃないかな。そう考えるとレベルを上げるって大事だよね)
色々考えているうちに海が見える場所まで来たところでシシャモ達と出会う。
「シシャモ達無事だったんだね」
「どうしたにゃ? そんにゃに慌てて」
「いや、こっちに兵士が来たからもしかしてシシャモ達に何かあったかもって思ったんだけど」
「心配するにゃ船は全部沈めたし、敵は全滅させたにゃ」
笑顔で物騒な事を答えるシシャモにひきつった笑顔で返す紅葉。
「そう言えば、兵士が来たって言ってたけどそいつらはどうしたにゃ?」
「えっとボクが倒した」
「にゃに!?」
驚くシシャモにペンネと燕は不思議そうな顔をする。
「因みにどうやって倒したが?」
「えっと、ハンマーで……叩き潰した」
「鬼畜やな」
バトの質問に答える紅葉に当然だという表情のペンネと燕。
「あれは凄かった、あたいは感動したね」
「にゃ? ポムか」
いつの間にかポムとライムが来ており、突然会話に入ってきてシシャモは驚くが、ポムは構わずいかに紅葉が強かったかを語り始める。
「いやでも、ポムも凄いよね。回復魔法が使えるんだから。しかもHPだけでなく傷も直せるんだよ。ちょっと変わってるけど」
「変わってるってなんにゃ?」
「見せた方が早いかも。ポム、シシャモを回復してくれる?」
紅葉に言われポムがシシャモに近付くがその前を防ぐ者が現れる。赤い瞳に少しだけの怒りの炎を灯して立つペンネだ。
「ポムさん、変なことをしようとしているのならシシャモにはさせません! 私がその屈辱受けます!」
「なんで『変』って文字だけ拾い上げるのさ。誰でも良いんだけどポム、悪いけどペンネに回復をお願い出来る?」
「お、おう」
よく分からない覚悟をしているのか目をつぶり両手を広げるペンネに戸惑いながらもポムは手を振り上げるとペンネの頭を叩く。
『0』『+150』の文字が表示される。
「いたっ ん? なにこれ?」
「だから変わってるって言ったのにさ。ポムは人の頭を叩かないと回復が出来ないんだ」
「天使の血が回復を可能にしてるんだろうが他の血が混ざってこんなことになってると思うんだ。頭じゃなくても顔面を叩いても回復出来るぜ」
そう言ってケタケタ笑うポムだがすぐにシシャモ達に真剣な眼差しを向ける。
「それでだ、あたいを一緒に連れていってくれないか? あんたらみたく強くなりたい。この島を守れるくらいには」
シシャモがチラッとライムと視線を合わせると、ライムが頷く。
「一緒に来ても良いにゃ。強くなれるかは知らにゃいけどな」
シシャモの返事に嬉しそうに喜ぶポムを連れ一旦教会へ戻る。
教会の前に沢山の島民が集まっていてシシャモ達は感謝されお礼の言葉を告げられる。そして宴を開催したいと言われる。
島民の圧に負けて宴を開くことを了承するが、島の食料事情から無理はしない事とお酒は未成なんで無しが条件だった。
***
その夜、教会と商店街を中心に宴と言うようり食事会のようなマッタリした会が開催される。
口に合ったのか食事を楽しむ紅葉は美味しそうに食べている。そんな紅葉に向かって小さな獣人の女の子が走ってくる。
「紅葉様! 父ちゃんを助けてくれてありがとう」
その獣人の女の子は紅葉に飛び付いてくる。
「えっと……」
「マオカだよ! 父ちゃんがまだ歩けないから俺の分も伝えてくれって」
「そう、もう喋れるんだ。怪我早くよくなるといいね」
マオカが紅葉に抱きついたまま嬉しそうに頷く。頭の耳がピョコピョコ動くので思わず触ってしまう紅葉。
「うわっ! ビックリしたぁ。紅葉様その耳の触り方、愛してるって意味だよ。求愛だよ!」
「え!?」
「詳しく聞かせてもらえる?」
驚く紅葉の横にいつの間にかペンネが立っていた。心なしか顔が赤く息が荒い。マオカから一通り触り方の手順を聞くと嬉しそうにペンネは去っていく。
「ペンネ、シシャモと友情がどうとか言ってたけど本当は分かってるんじゃ……」
「ペンネ様おもしろい!」
「そ、そうかな?」
「でもマオカね、紅葉様だったら愛されても良いよ!」
「へ?」
紅葉は顔を赤らめ恥ずかしそうにするマオカに身の危険を感じる。
その様子を見て紅葉に料理を持ってきた燕はそーーとフェードアウトしていく。
***
「結局のとこあんたらは何を目指してんだ?」
「魔王を討伐してあたしのお昼寝ライフを取り戻しすのが目的にゃ」
教会の中でポムの質問に真面目に答えるシシャモ。そこからこれまでの経緯を話す。
その内容に頭を抱えて唸るポムだが顔を上げて吹っ切れた表情を見せる。
「分かんね、異世界がどうとか性悪女神がなんだとか言われてもな。
ただ紅葉の戦いや他の奴らに聞いた話からあんたらがレベル何てものすら越えてそうなのは分かる」
そこまで喋ってポムがニヤリと笑う。
「ついていけば分かる。それだけは分かる! だからついていくぜ」
「好きについてくれば良いにゃ。あたしも回復師は必要だと思ったからにゃ。ただ頭を叩いて回復させる奴とは予想外にゃ」
シシャモとポムががっちり手を組む。
「あれは友情……友情……」教会の扉の影でボソボソ呟く声が聞こえる。
(うちの嫉妬計が80%を越えちゅう……ペンネ恐るべしや)
教会の外から来たバトは扉の影にいるペンネを無視して教会の中に入る。
「シシャモ。スピカに連絡してここの座標を登録したき正確に転移出来るはずや」
「すまないにゃ」
2人のやり取りを不思議そうにポムが見る。
「なあスピカって性悪女神だよな。ここ登録ってなんだ?」
「今回人間を全滅させたからにゃ。しばらくして誰も帰ってこない異常に気付いたらまたこの島に来るはずにゃ」
「何かあれば島の数ヵ所に設置したこのボタンを押してくれたらうちに連絡がいく。そしたら私達が転移してくる。
アースにおった場合はスピカ経由で連絡いくき完璧や」
バトがボタンを設置した場所を印す地図をポムに渡す。
「いつの間にこの島の地図を作ったんだ?」
「うちのドローンと頭脳があれば余裕や」
とりあえずバトが凄いってことでこの話に決着をつける。
こうして宴の中、ポムが仲間になったのであった。
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