その27 ミキシング島で開戦にゃ!

「これからどうするにゃ?」

「……」


 教会の裏にある木にすがって夜空を眺める紅葉にシシャモが訪ねる。


「ボクさ人間だけど人間嫌いなんだ。ボクにとって人間ておじさんと麻帆さん……とお父さんだけかな。人間って結構酷い生き物だと思うんだ。ボク……ボクは」

「あたしも紅葉と窓際、麻帆しか知らないからにゃ。人間の事はよく知らないにゃ」


 そう言うとシシャモが去り際に紅葉の肩を叩く。


「まあ話せる時に話してくれればいいにゃ」

「うん……」


 紅葉が下を向いたまま頷く。



「シシャモかっこいい……」


 少し離れた木の影から赤い瞳の少女は呟く。



 ***



「ここに魔王はいないってことにゃ。で3大魔王の事を知るために海を渡り町へ行くって流れで行くにゃ」


 4人が頷く。


「それじゃあライムとポム世話になったにゃ」


 シシャモ達が教会を去ろうとしたときバトが立ち止まる。


「シシャモ、海を渡ってこっちに向かってきちゅー影を捕らえた。後1時間もすりゃ到着するはず」

「影? どうやって分かるにゃ?」

「うちの小型ドローンで監視しちゅーきね」


 ドローンを理解していない者が多数いるなか外に出るとシシャモ達が来た方と逆の海に向かう。


 海に向かう途中逃げる島民がシシャモ達についてきたライムとポムに息を切らしながら話す。


「あんたらも逃げな。特にポムちゃんは隠れなよ。前回が不作だとかで今回くまなく探すつもりだろうよ、でないと大きな船を5隻も用意しないだろうからな」


 島民の話を聞いてシシャモが指示を出す。


「紅葉、お前ポムについて行けにゃ。あたし達は急いで海に行ってみるにゃ」

「わ、分かったよ」


 紅葉が頷きポム達についていく。シシャモ達は急ぎ海に出ると砂浜の前に島民の男を中心に集まっていた。


「誰だあんたら? 見ない顔だけど女、子供は逃げた方がいい、あいつらは女子供を捕まえるからな」

「あたし達は多分大丈夫にゃ。それよりお前らはどうするにゃ? 逃げないのかにゃ」

「俺たちはとりあえず交渉して時間を稼ぐ、その間にみんなに逃げてもらう、だからあんたらも逃げな」


 男は不安なのだろう、ひきつった笑顔で逃げる様に促す。


「あっちは交渉する気は無さそうちや」


 言うなりバトが建物の上に飛ぶ。肩に砲身を設置すると身を屈めて砲身に光を溜める。


『必殺 バトビーム』


 ピンクの閃光が辺りを照らしながら走り抜けると海上で爆発を起こす。


「砲弾や。まだ来る」

「ペンネ上から頼むにゃ、バトは打ち落とせる限り落としてくれにゃ、燕とあたしはギリギリのを防ぐにゃ」


 シシャモがベルトを腰に巻くと走りながらレバーを引く。


「変身にゃ!」


 姿を変えて海岸に降りジャンプすると砲弾を海へ蹴り返す。


「拙者も行くか。そこの人、逃げた方がいい。ここは任せてくれ」


 唖然とする男を置いて家の壁をけると上空を飛ぶ砲弾を峰で捉え振り抜いて打ち返す。


「斬らない様に優しくだな」


 島民の男は砲弾を次々に打ち返し落としていくシシャモ達を見て驚きを隠せない様子ながらもお礼を述べると走って逃げていく。



 ***



「分隊長! 砲弾が島に着弾していないようです」

「なに!? どう言うことだそれは?」

「そ、それがすべて打ち返されているようです」


 意味が分からないと言った様子の分隊長が単眼鏡を覗くと他の兵が騒ぎだす。


「分隊長、上空に敵です!」

「なんだ? 次から次へと空飛ぶ魔物ぐらいお前らで対処しろ!」


 分隊長が上空を見上げると銀髪の巻き髪のお姫さまみたいな格好をしてコウモリのような羽を広げている少女がいた。


「なんだ? 吸血鬼か? あのような格好見たことがないが魔法で打ち落とせ!」


 魔法使いが一斉に魔法を空に放つが少女に届く前に電撃のようなものが走り打ち消される。


「な、なんだ一発も届かないのか……」


 魔法が霧散して悪くなった視界が晴れると、少女が弓を引いて炎の矢を放つ。


「オートの魔法障壁に加えて魔法使いは防御魔法を展開しろ!」


 分隊長の命令によって船に2重の障壁が張られる。その障壁に矢が着弾するとミシミシと鈍い音がして船が揺れる。


「おいおい、嘘だろたかだか魔物1匹の攻撃だぞ」


 少女が牙を見せて微笑むと再び矢を放つ。1本の鋭い矢が障壁に穴を開け甲板をぶち抜く。


「なんだ、威力は確かに凄いがこんな小さな魔法で我々を倒そうなど」

「分隊長! 下の方から魔力が膨れて──」


 その言葉を最後にその船は真ん中からへし折れ魔法障壁内で大爆発を起こす。

 その様子を見ていた他の船の者達が慌てる始める。


「おい右舷の船が沈められたぞ! 急いで上陸しろ! 中隊長のいる船を守りながら進め!!」


 船の兵達が上空に砲弾と魔法を撃ち始める。


「もっと狙え!」

「それがあいつ、あり得ない程素早くて」

「うるさい! 良いからやれ!!」


 左舷の船上で兵が上官に怒鳴られながら上空の吸血鬼に砲身を向ける。


「パワハラやよそれ」


 突然後ろから声をかけられ2人が振り向くと銀色の少女? が立っている。


「な、なんだこの魔物は……」

「分かりませんが、と、とにかく今は」


 兵が腰の剣を抜き斬りかかるとそれは左腕で受け止められ剣が折れる。


「衝撃の度合い、音の感じから鉄の純度が悪いぜよ」


 銀色の少女、バトが足から筒状の棒を取り出すとピンクの刀身が現れる。振り上げると兵が鎧ごと真っ二つに切られる。


「なんなんだお前は……」

「ん? 何ってバトちゃんやよ」


 バトが両手をガトリング、両肩、両足の横にミサイルポット、腰の左右にもガトリングを展開すると一斉射撃を行う。


 甲板がボロボロになるほどの銃弾とミサイルの攻撃に船上で動くものはいなくなる。


「自分で言うのもなんやけんど、地獄絵図やコレ」


 船上の惨劇を見て呟くバトが肩にビームの砲身を担ぐ。


「まあ、手加減はせんけどね」


 船に向かって打ち込まれるビームで船が破壊される。壊れ沈む船を背にサーフボードを海面に浮かべ立つと次の船に向けて水しぶきをあげながら進んでいく。


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