その26 名乗る?まあなんだ……ポムだ……にゃ
「なるほどポムさんにゃ」
汗をかきながらうろたえる女性は認める。
「そう、ポムだ、あたいの名前はポムさ……」
「自分の名前が嫌いな感じってとこかな?」
「可愛いのにそんなものなの?」
ポムが紅葉の頭をパシパシ叩く。
「お前分かってんじゃん、銀髪は分かってねえな。可愛いじゃなくて格好いいのが良いんだって」
ペンネが頬を膨らませる。
「はいはい、ポムお客さんを案内してあげなさいな」
ライムに言われポムがめんどくさそうにしながらも空き部屋を案内してくれる。
「とまあベットも無い部屋もあるけど適当に使いな。ところでさお前ら旅してんだよな? なにか目的あるのか?」
「それは私も興味あるねえ。あたしにも聞かせておくれよ。お茶用意するから、ほらポム食堂に案内しな」
ぶつぶつ文句を言うポムに案内され食堂で、2世界で魔王を討伐すること、これまでの経緯を説明する。
「魔物が魔王を討伐は、まあ分からないでもないけど、異世界に転移はにわかに信じられないねえ。でもまあ銀色の娘、バトを見たら信じるしかないのかねえ」
ライムに言われ両頬に人指し指をつけ首を傾げるポーズをバトがする。
「なあ、あんたら魔王倒すって言うぐらいだから強いんだろ?」
「まあにゃ、レベル70が見えてきたってとこにゃ」
「すげーーな、あたいはまだ8だから、めちゃくちゃつええな、おい!」
ポムのテンションが高くなる。
「お前らなら人間ども倒せるんじゃね? あのムカつく奴等倒してくれたら助かるのによ」
「ポム、余計なことは言わないよ。せっかく旅で寄ったシシャモさん達を不安にさせるだろう」
「そこまで言われたら気になるにゃ。話だけでも聞かせて欲しいにゃ、どこで魔王に繋がるか分かんないからにゃ」
シシャモに言われ途中で区切られていた話を詳しく話してくれる。
この島の名前は『ミキシング島』魔物と人間の間に生まれた者達が集まる島。最初はそれだけの島だったがその内珍しい掛け合わせの者が人間に捕獲されて連れていかれるようになる。
更により良い掛け合わせを無理矢理作ると言う非人道的な事が行われたりした。
ライムは狼系の獣人と人間の間に生まれた事などを聞く。
「んであたいは、よく分かんね。多分、天使と人間、後何個か混ざってそうだな」
なはははははとポムが笑う。
「いや笑えんにゃ。で人間を倒すってのはなんにゃ?」
「あぁそれはな、人間が時々大陸から渡ってきて島の住人を選定して気に入ったのがいれば連れて帰るからぶっとばしてくれないかなって思ったんだ」
重い空気になるなか紅葉が口を開く。
「あのさ、人間てどんな存在なの? えっとそのすごく興味あるんだけど」
「人間に興味があるのかい。私が知っている範囲で良ければ教えてあげようね」
ライムが紅葉の問いに答えてくれる。
「歴史から話すからちょっと長くなるよ」
──200年前魔界大陸は1人の魔王によって支配されていた。力で支配する魔界において平和的支配とは言えなかったが魔物達はそれなりに楽しく生きていた。
人間界は沢山の王がそれぞれの領土を広げようと血を流し争っていた。
あるとき1人の王が言う「人間同士で争っている場合ではない。魔王という共通の脅威に立ち向かうべきだ」と。
新たな土地、資源に王達は協力して魔界に攻め込む。
魔物達は個々の力は強いが協力して戦うことを知らない。それに対し各々の長所を助け弱点を補う人間達の連携に押され始める。
そこで魔王は自分の配下を各地に配備しその土地を守る隊長を産み出す。各土地の隊長に防衛を任せ、地面を裂き、溪谷を創り、砂漠を産み出し空いてる土地に強い魔物を放つ。
人間の大陸に唯一繋がる草原に塀を作り強力な魔王の幹部を配置、残りすべてが海で囲まれた魔界大陸の周囲には巨大な海の魔物を配置し人間の船の上陸を困難にさせる。
そして町を作り魔物に装備の概念を持たせ個々の力を底上げをする。
これにより軍単位での攻めが兵を悪戯に消費するようになり精鋭部隊による少人数での攻略が主流となる。
人間はいつしか一般人からも魔界攻略の猛者を募り始めそれが冒険者と言う職業を産み出す。
それから80年近く魔物と人間の争いは続く。やがて人間側に勇者と呼ばれるものが現れる。その者はパーティーを組み魔王軍を次々に討伐していく。
そして遂に勇者は死闘の末魔王を討伐する。
これで人間の勝利と思われたが各地に散っ魔王の配下達は自ら魔王を名乗り疲弊した勇者のパーティーを討ち取っていく。
こうしてお互いが多大な損害を
それから人間達は魔界大陸攻略で各王の国が疲弊していたところを初めに魔王に立ち向かおうと言った王の国が他の国をあっという間に支配し1人の王が支配する国が生まれる。
その反対に魔界はいつか来るかもしれない人間の脅威に対抗するため各土地に魔王が生まれる。
そして強き者は自ら魔王を名乗ることが出来、それを力で奪うことも出来るようになった。
こうして今の世界が生まれた──
「ってのが歴史だよ。私からみたら人間は脅威でしかないね。私たちの様な存在もおそらく人間の実験の産物だろうしね」
絶句する紅葉の前にシシャモが立ち明るく話す。
「ライムは詳しいにゃ。歳いくつにゃ?」
「歳? 確か324歳だったはずだよ」
「生き証人と言ったところだな。ライム殿、そこまで詳しければここから先の魔王については知らぬだろうか?」
燕の質問に少し考えて答える。
「申し訳ないけど私はこの島に来てから100年は出てないから今の状況は分からないよ。
ただ3人の魔王がいるって噂は聞いたことがあるねぇ。確か3大魔王とか呼ばれてたはずだよ。
まだあるなら砂漠を南に降りたところに町があったはずだからそこで話を聞くといいよ。
おっと話が長くなったね。どれ、簡単なものしか作れないけどご飯にしようね」
台所に向かうライムの背中を見送りながら
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