その24 後ろに向かって前進にゃ!
バトが地面を浮いて移動をしながら銃弾とミサイルをばらまく。
「牽制とは言え効かんもんだね。出力上げて──」
バトが刀を振るう燕を青い目でみつめる。
「なるほど。太刀筋は完全に再現できんけんど、そこはうちらしさをプラスしてと」
バトが足から筒状の物を取り出すと構えると筒からビーム状の刀身が現れる。
腰を屈め構えると背中のバックパックからジェット噴射をしながら猛スピードで突っ込むとビームの刃がダンプ型ロボの左膝辺りに食い込む。
そのまま切り抜ける。
「まだちや!」
ダンプロボの足を掴んでいた左手が伸び自らの体を引き戻すと膝裏から切る。
『必殺 バト斬り2閃』
『必殺 隼』
バトの前後からの斬擊で脆くなった左足を空中から燕が切り裂く。
燕の着地の衝撃と斬擊の余波で地面が抉れる中ダンプロボの左足が飛ぶ。
止めをさすため燕達が構えるとダンプ型ロボが車の形態になり左側の車輪がないまま走り去る。
「あっちはシシャモ殿の方か」
「早ういこう」
***
ガッチャン! リーディングOK!「合体!!」
デデデデン 3身合体! 「合体すごい!!」
エリーのベルトの音声が流れると右車輪だけのダンプが走ってきてクレーン型ロボが立ち上がる。
「あ~あ~、ボロボロになっちゃって。使えるパーツだけで合体してよってことで」
2体のロボが弾けバラバラになるとクレーン型の足と胴体をベースにダンプ型の左腕と荷台が割れ肩に装着される。右手にはクレーンのアームが装着され胴から新しい顔が出てきて目が赤く輝く。
そのロボの胴体にエリーが走って飛び乗ると最後にダンプの分厚い銅が装着される。
「これぞ3身がったあーーーーい!! その名も『ダンクレーン』だよってね」
合体したエリーがシシャモの前に立ち塞がる。
「合体とかロボ業界の夢や」
「なにさロボ業界って」
「私はシシャモと──」
「さあペンネ殿、頑張って倒そう」
「なんにゃ皆戻ってきたかにゃ」
賑やかに5人が揃うとそれぞれが動き始める。
燕が右手側にバトが左手側に回り正面からシシャモがそれぞれが攻撃を開始する。
上空からペンネの魔法が飛んできて最後方で紅葉が其々にくる攻撃を防ぎ、ときにダンクレーンの行動を阻害する。
「思いの外やるわねって、これなら!!」
右腕のクレーンのフックを伸ばし振り回す。
盾が次々に地面に突き刺さりフックのワイヤーを絡めて動きを封じる。
その盾に隠れるように移動しながらシシャモ、燕、バトが攻撃を仕掛けていく。
3人が火花を散らしてダンクレーンの装甲を削っていく。
上空から青い矢が落ちて地面に突き刺さるとそこを中心に青い水が広がっていく。
刺さった矢が溶けるように崩れ落ち広がった水に波紋を広げる。
『必殺 メーア シュツルム』
波紋は激しく波打ち上空へと舞い、捻れダンクレーンの体を飲み込み上空へ打ち上げる。
凄まじい水飛沫を上げダンクレーンが地面に打ち付けられる。
ダンクレーンの目の光が消え動かなくなる。
「ボディーの損傷はそがにないけんど、中の人はまっこと痛かったと思うね」
バトが手で口を抑えながら言う。
***
アラームが激しく鳴るなか周囲に水が巻き身動きはとれなくなると浮遊感と共に三半規管が破壊されるような捻れを感じ、朦朧とする意識のまま強い衝撃を受けてエリーは意識を手放してしまう。
水が顔に当たり目が覚める。辺りは真っ暗だ。体が動けるか動かして確認する。
変身は解けているが体に異常は無さそうだ。
「良かった体は無事みたいだ。衝突安全を搭載してなかったら死んでたね」
自分の周囲に広がりしぼんだエアーバックを
暗闇の中認識し安堵のため息をつく。
「これが魔法か……科学だけではどうしようも無い部分」
痛む体を起こしベルトから飛び出したフロッピーディスクを差し込む。
「それでも……」
レバーを引きながら変身を開始する。
「勝ちたい!!」
ダンクレーンのハッチを開けるレバーを引くと目映い光に包まれながらエリーが変身する。
ダンクレーンの胸部が開いたと思ったら変身しながら飛び出してきたエリーに皆が構える。
エリーのベルトに差し込まれるフロッピーディスク。
ガッチャン! リーディングOK!「ジャガー!!」
デデデデン 装着! 「ジャガーモード!!」
エリーの橙色のボディーに黒い斑が浮き出て手足に鋭い爪が装着される。
燕攻撃をしなやかにバク転しながらダンクレーンん残骸を利用し避けるとバトのミサイルも連続でバク転を繰り返し避ける。
シシャモのキックをぎりぎりで避けた所で手に持つ2丁の銃でビームをばらまく。
後方に飛んで避けるシシャモ達の目の前に土煙が舞い上がり視界が一瞬悪くなる。
その隙にエリーはビルの間に逃げ込み走って逃げる。
「ぜ、絶対次は勝つんだから、科学舐めないでよ」
変身を解いて目に溢れる涙を拭いながら走る。
「く、悔しくなんてないって! 失敗は次に生かすんだって有名な人が言ってたんだから!! 後退してないもん! 前進! 後ろに向かって前進!!」
エリーがオレンジのダッフルコートを翻し走り続ける。
***
「逃げっていったにゃ」
晴れた視界を見ながらシシャモが呟く。
「シシャモ逃げよう。また人が集まってきてる」
ペンネに引っ張られながらシシャモは思う。なんか悪い奴には見えないなぁと。
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