その20 命は大切にせんとねにゃ!

 2人に増えた紫の仮面の男を燕とペンネがそれぞれ相手し青色の仮面の人物はシシャモが相手する。


「流石につええな。今のままじゃ無理か……もう少しデーター集めるとしますか」


 ガッチャン! リーディングOK!「ライオン!!」

 デデデデン 装着! 「ライオンモード!!」


 紫の仮面にたてがみがはえ手に太い腕と爪が装着される。

 さっきまでと違い素早くしなやかに動き爪で燕とペンネをそれぞれ襲う。


『必殺 燕八閃』


 燕が八つの閃光を飛ばす。


「すげえけど当たるかよ!」


 紫の仮面男がギリギリではあるが閃光を避けると同時に周囲の空気が震え始める。


『合体技 シャルフ シュトゥルム』


 ペンネの弓から暴風の様な矢が放たれると燕の閃光を巻き込み嵐と刃が仮面の者達を襲う。


「なんだこれは!? これが魔法とか言うやつか」

「ちぃ! 人外の力はめんどくさいわね」


 2人と分身した1人が愚痴りながら逃げまとう。

 そんな3人に危険を知らせるアラートが仮面の中で鳴り響き目の前のモニターに警告文が出る。


 <高エネルギー反応あり>


 3人の足元、ラボの天井がピンク色に染まる。


「なにぃ!?」

「うそ!?」


 夜空に向かってピンク色のビームが昇り空を一瞬ピンクの光に染める。


 2人の人間が地面に転がる。1人は赤髪の目付きの悪い男、もう1人はピンクの長い髪のスポーツウェアーを着た女性が倒れている。


「が……な、なんだ」


 赤髪の男が口から血を流しながら穴を睨む。その空いた穴から銀色の物体が飛び出す。


「バトちゃんや! 覚悟しろや!」


 両腕がガトリングガンの形状をとると構える。青色の大きな目が光り両手から銃弾が放たれる。

 その弾を昼に出会った蜘蛛型ロボが間に割り込み体で受け止める。


「間に合ったか。まだこの2人を失う訳にはいかないのでな」


 蜘蛛型ロボの上に黒い仮面の人物が立ってシシャモ達を見下ろしていた。


「なんにゃ、仮面祭りなのかにゃ。いったい何種類いるにゃ」

「微妙にズレちゅうよ、シシャモ。面倒くさい、全部吹き飛ばしちゃる!」


 バトが砲身を構える。


「っと、オオツチ自爆だ!」


 黒い仮面が叫ぶと蜘蛛が赤く光り始める。それと同時にシシャモ達の周囲に盾が並ぶ。

 自爆の爆風を凌ぎしばらくすると周囲の様子が徐々に見えてくる。

 天井がボロボロになって自爆後のロボの破片が散らばっている。


「いったいなんにゃ」

「げに謎多いよな」


 シシャモは声の主を見る。シシャモと同じぐらいの背丈に体は銀色で青く光る目。


「お前、誰にゃ?」

「そがな目で見んで。バトちゃんやよ」


 バトが恥ずかしがる様にもじもじする。

 そんな2人の周りにペンネ、燕、紅葉が集まる。


「うちはバトや。あんたらのこと知っちゅうよ。右からシシャモ、ペンネ、燕、紅葉」


 バトが胸を張ってVサインをする。4人の顔を見て口は開かないが声を出す。


「これから宜しゅう。あんたらを窓際さんとこ連れていくき、ついて来てや」


 ***


「ねえ、どこまで行くのさ? って言うか下水って公共の施設だよね。勝手に改造して良いの?」

「細かいこと気にしなさんな。黙ってついてくれば分かるき」


 紅葉の質問に適当に答え、下水道の壁に腕から出した針のような物を差し込む。


 壁がスライドを始め入り口が現れる。


「もうちっくとで着くき臭いの我慢しちょって。まあうちは臭わんけどね」


 鼻を摘まんでついてくる4人を見てバトが口の辺りに手を押さえニシシシと笑う。


「っと、ここから明かりないな。うちが照らすき火は使わんで。ガス溜まりがあったらいけんきね」


 バトの目が青から淡いオレンジ色になると周囲を照らす。


「お前便利だにゃ。いつもあたし達を襲うロボとは種族が違うのかにゃ?」

「種族? あぁ造りが違うがよ。うちは超高性能ロボや。それに何よりも可愛いぜよ」


 そんなことを言いながら暗闇の中を進むと立ち止まり地面に触れる。

 地面がスライドして階段が現れる。

 その階段を降りると扉にぶつかる。その扉にバトが腕から出した針を刺すとロックが解除された音がして開く。中に入ると窓際と麻帆がコーヒーを飲みながらまったりしていた。


「やあ、みんな久しぶり。元気そうでなにより」


 笑顔で迎える窓際にバトが答える。


「窓際さん。皆を連れてきたぜよ。言うかこうして喋るのは初めてちやね」

「おぉ、FCMが動いてる! 実践投入は成功みたいだね」


 バトが人差し指を立ててチッチッと言う。


「窓際さん違う。うちはバトや。そっちの方が可愛いきね」

「と言うかその喋り方といい性格といい、なんかプログラムしたのと違う」

「所長が方言女子が良いとか言うからです。それに性格は私が基本設計をして後はこの子に任せましたからこれで良いのです」


 麻帆がバトの頭を撫でると嬉しそうに頭を麻帆の手に擦り付ける。


「ま、良いかな。この子、バトはシシャモ君達のサポートになればと思って作ってたんだ。だから一緒に連れていって欲しいんだ」

「よろしゅうや」


 バトがお辞儀するのを見てシシャモが答える。


「魔王討伐の為に仲間は多い方が良いにゃ。ところで窓際、今の状況はなんにゃ? 説明して欲しいにゃ」


 窓際からの説明をまとめると、今まで作った兵器とデーターを送っていた取引先から直接呼び出しがあり窓際が行ったところ軟禁される。

 窓際はそこで取引先の相手がシシャモ達の抹殺を目論んでいることを知る。

 その窓際を麻帆が忍び込み助け出し研究所へ逃げて今に至ると言うことらしい。


「バトはサポート出来るように研究所に置いてきたけど僕と麻帆君、紅葉ちゃん、ペンネ君で起動する様に設定してたんだ。

 認証の手順を踏まないと起動しないようにして無理に水槽から出すと研究所ごと爆発するようにしてたからね」

「窓際さん、おまさん無茶苦茶だな。自爆が研究者やロボットの夢とか言うのは都市伝説ちや」


 自爆と言う言葉をちょっと嬉しそうに言う窓際の脛をバトが蹴り突っ込む。

 バトに蹴られ悶絶する窓際。


「窓際さん命は大切にせんと。自爆いかん絶対!」

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