その17 3人の戦いにゃ!
紅葉が盾を4枚重ね蜘蛛型ロボの移動上に敷くとそれを踏んだロボが宙に浮く。その浮いた下に直ぐに盾を敷く。その後も強引に下に敷いては徐々に空中へと浮かせていく。
途中蜘蛛型ロボが糸を吐こうとするのも盾で抑える。下に敷いた盾を足場にして跳ぼうとするのは横に盾を出して阻止する。
ビルの頂上までの高さにまで押し上げた蜘蛛型ロボを今度は宙から下へと落下させる。
落下を邪魔しないように360度盾を出しながら蜘蛛型ロボの逃走を阻止していく。
凄いスピードで落下してやがて地面に派手な金属音をあげながら激突すると活動を停止させる。
「おぉ出来た、ボクにも倒せた! おじさん達ありがとう!」
自警隊の人達に手を振ってシシャモ達の方へ走る紅葉はさりげなく自警隊が落とした物を収納して去っていく。
「た、隊長、あの子を捕獲しなくて良いのですか?」
「今は市民の安全を優先しろ。まだビルの中にも人がいる。今のところ被害は無さそうだがまずは住民を避難させるんだ」
隊長の命令で皆が動く。
***
逃げまとう人々に蜘蛛の糸が絡み蜘蛛型ロボの方へ引っ張られる。
恐怖で悲鳴を上げながら引っ張られる人の糸を刀が切り裂く。
糸から解放された人々が転がる様に走り逃げる。
「見境無しの攻撃とは面倒な」
刀を鞘に納め構える燕に別方向から銃弾が撃ち込まれる。
「2匹か……しかも立体的に攻撃してくる上に周囲の人間を巻き込んで攻撃してくるから厄介だな」
まだ逃げきれていない人々がいるので巻き込んでしまう遠距離攻撃が出来ない。故に直接斬るしかないので燕の動きが制限される。
「こっちの世界での戦闘は難しいな。人が多すぎる」
再び刀を構え踏み込むが蜘蛛型ロボまでの間を横切る様に人々が逃げまとい攻撃に移れない。
対して相手は関係なく攻撃を仕掛ける。恐怖で座り込み身動きのとれなくなった少年達に襲い来る蜘蛛の足を刀で受け止める。
「ぬぬ、防御はあまり得意じゃないからなぁ……そこの住人よ逃げろ!」
叫びながら蜘蛛型ロボの足を弾きその場で回転し2本の足を斬り飛ばす。
更にもう一回転加え刀を振り抜く。
『必殺 真峰打ち』
蜘蛛型ロボの顔面にめり込む峰打ちによって一匹が機能停止する。
「ふむ、大分力加減が分かってきた。ちゃんとした峰打ちも出来なければな」
その場に突っ込んでくるもう一体の蜘蛛型ロボの攻撃を空中に飛んで避けると空中で回転しながら抜刀する。
『真 峰打ち』
刀の峰が蜘蛛型ロボの頭にめり込みそのまま地面に叩きつける。
「安心しろ、峰打ちだ」
久々の台詞に昂る気持ちを抑え刀を鞘に納めるとペンネの方へ走り始める。
***
「もぉ~全力で魔法を放てれば早いのになぁ」
ビルの間を飛び回りながら初期の矢を飛ばし攻撃するが牽制程度にしかならないペンネは少し苛立っていた。
これだけの人混みの中での戦闘は初めての経験だった。最近魔法の火力が上がった為の悩みであった。
ビルの間に隠れては銃弾をばらまく蜘蛛型ロボにうんざりしながら雷で出来た障壁作り弾を無効化していく。
避けるだけでも良いのだが周りに配慮しての行動である。
飛びながらステータス画面を開く。
レベル63の文字が目に入る。魔法少女のステータス2倍補正を加えるとレベル126のステータスと言うことになる。
因みにシシャモ達の世界MAXレベルは99である故に物理攻撃力以外999のカンスト状態になっている。
「シシャモなんて補正4倍だからレベル248……でもカンストしてたら意味ないよね」
ページをめくると空白の多い画面が現れる。
「レベル63にしてはスキルが少なすぎるんだよね。友達思いから1個も覚えてないっておかしい気がするんだけどなぁ」
銃弾を無効化しながら前を見ると離れた所で戦うシシャモの姿が見えた。
蜘蛛型ロボもそれに気付いたのかペンネに背を向けシシャモの方へ移動を開始する。
それを見たペンネの怒りに火がつく。赤い目が一層赤みを増し燃えるような目が光の残像を残し、高速で飛んで追いかける。
「シシャモの所には行かせない。私のシシャモに仇なすものは全て排除するから!」
ペンネが弓を引いて飛ばす雷の矢は蜘蛛型ロボの背中に刺さるとアンカーの様に先端が広がる。
弓から放たれて尚軌跡が雷の糸の様なもので弓まで繋がれるその矢は伸びたゴムの様に縮み蜘蛛型ロボをペンネの方へ引き寄せる。
それを迎え撃つ様に右手に持つ弓を伝って放たれる電撃は球体になり蜘蛛型ロボを包み捕らえる。
「消えて!」
ペンネが開いた右手をグッと握り閉めるとそれに合わせ球体が縮み蜘蛛型ロボを圧縮し粉砕する。
球体の中で爆発した後、球体を地上に近づけ解放すると砕けた金属片が散乱する。
赤い目を光らせ冷たい目で金属片を見るペンネの頭上にそーーと表示が出る。
『必殺 フォーゲルケーフィッヒ』
一部始終を見ていた紅葉は思う。
(ペンネの方が闇魔法使いだと思うけど)
そして同じく近づいていた燕も思う。
(ペンネ殿にシシャモ殿関係の話題を気軽に振るのは危険だな……)
そんな2人の気も知らないペンネは上空でシシャモの戦いをうっとりと見つめる。
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