その12 砂漠の魔王戦にゃ!

 オアシスの岩場に座り4人で話し合う。


「今回の相手はつがい、2匹にゃ。基本は4人で行くとして、万が一バラバラに行動された場合にゃのだけど」


 主にペンネが熱い視線をシシャモに送る。


「紅葉があたしと来るにゃ、燕をペンネが補佐して欲しいにゃ」


 ペンネが膝から崩れ落ちる。


「私の何がいけないの? 直すから言って。!? それともただの魔法使いより闇魔法の方が良いの? こうなったら……」

(ひぃぃぃヤバいこの人。百合系かと思ったらヤンデレも持ってるんだ)


 シシャモがペンネを宥める横で紅葉が怯える。


「物理的攻撃の要はあたしと燕にゃ。この間の燕の周囲に斬撃を飛ばす必殺技から紅葉より更に遠くで戦えるペンネを選んだだけにゃ」

「今後を考えればどのメンバーとも連携が取れた方が良いだろうしな」


 燕のフォローもあってペンネが落ち着く。そして紅葉も安心している。


「ボクもアイテムと武器の追加とかしたいんだけど何かないかな?」

「そうだにゃ、オレガノに聞いてみるかにゃ」


 シシャモの提案でアイテム等の補充を行う事になる。

 ただ物資の少なさから少量の回復アイテムと、盾2枚、槍が3本程度の補給となった。


 ***


 その日は満月の綺麗な夜。砂漠の寒さが見に染みる。


「今日で3日目にゃ、そろそろ来てもおかしくないはずにゃ。ところでペンネ砂漠の民の子供達や親の避難はどうなったにゃ?」

「それが皆残るらしいの。一族皆一緒だから。それにシシャモ様がいるから大丈夫だろうって」


 シシャモは頬ポリポリ掻く。


「なんにゃその「様」ってのは。やめて欲しいにゃ」

「頼られてるなシシャモ殿。この3日間子供達と遊んだ成果か」

「遊んだってその辺の岩壊して、にゃーにゃー言ってただけにゃ」


 紅葉が大きなあくびをする。


「夜も遅いし交代で寝るか?」

「そうだにゃ」


 シシャモが眠そうな紅葉を連れて行こうとしたとき地面が揺れる。


「来たにゃ」


 シシャモとペンネが変身する。

 燕は構え、紅葉は逃げ腰ながらも立っている。


 大きな地鳴りと共に地面が割れ大きなミミズに尖った歯が生えた魔物、デスワームが現れる。


「1匹だけか。シシャモ殿、ここは拙者とペンネ殿メインでいかせてもらう。もう1匹現れたらお願いする」

「まあ4人で速攻倒せば良いにゃ」


 シシャモの蹴りと燕の刀がデスワームを襲うが空を切る。


「にゃ、速い」

「地中に潜った!」


『固有技 サンドブラスト』


 その表示と共に地中から砂が物凄い勢いで空に向かって棒状に排出される。


「結構範囲広いにゃ。あたしたちは大丈夫だけど、これはワンウルフ族にはキツいにゃ」


 シシャモと燕が地面を駆けながら攻撃のチャンスを伺う。

 空から氷の矢が飛んで来るが地面に突き刺さるだけでダメージが与えられない。


 砂を吐き終わり地中を移動していると思われるデスワームに気を取られている4人の遥か後方で爆音と共に砂の柱が上がる。


「もう1匹!? 紅葉走るにゃ!」

「あ、ああ分かった」


 シシャモと紅葉がもう1匹のデスワームへ向け走り出す。


 シシャモ達が移動した後、燕が抜刀の構えで待つ。


「必殺技とは自分の培ってきたものの発展。あの分厚そうな皮膚を切るには斬撃を重ねる……」


 デスワームが燕を襲う為地中から飛び出て、鋭い歯が生えたその口を開け突っ込んでくる。


『必殺 燕重ね斬り5連』


 同じ起動に同じ軌跡を5回重ねるその斬撃がデスワームの分厚い皮膚を切り裂き茶色い飛沫を撒き散らせデスワームが地上で悶える。

 危険を察知したデスワームがペンネの矢が届く前に地中に潜り逃げる。


「むぅ、早く倒してシシャモのところに行きたいのに。地中深いとレーダーでも捉えられないんだね」


 ペンネが空中のパネルをタッチしながらデスワームを探る。


「ふむ、大きすぎて致命傷にならないか。一応ダメージ1580を与えたみたいだがあんまりあてにならないな」


 燕が刀を地面につけ振動を探る。

 一瞬地面が揺れ下から大量の砂が吹き出す。それをあっさり避ける燕だが砂の柱が徐々に傾き燕の着地した場所を襲う。


「地中で傾けれるのか。こっちの攻撃が届かないのに厄介だ」


 燕が構えながら走る。燕が走った軌跡を狙って砂が襲ってくる。


「音に反応しているわけか、何か方法は……」


 なんとなく上が明るくなった気がして燕が空を見上げる。

 ペンネが上空で巨大な炎の矢を引いている。

 その火が揺らめき夜の空を煌々と照らす。


「私は速くシシャモのところに行きたいのに、邪魔するなら容赦はしない」


『必殺 シュプレンゲン』


 大きな矢が上空から凄まじいスピードで火の軌跡を残しながら地面を貫き地中に埋まる。

 暫しの静寂ののち地面が赤く燃え始め破裂する。


「なんと! 無茶苦茶するなペンネ殿は……と、次が来るか」


 燕は矢の落下地点から逃げる。


「ふふふふ、逃がさない。何発でも撃ち込むから」


 再び放たれ上空から火が落ちる。

 地面の破裂と共にデスワームが姿を見せ。


「ダメージが無いわけではないがもっと確実にやるには」

「燕さん! 必殺技を重ねましょう! 風で行きます!」


 走る燕にペンネが声をかける。

(重ねる? よくは分からないが風を起こし切れば良いのか。ペンネ殿を信じてやるしかないな)


 ピロン♪


 スキル 友だち思いの取得


(どういうタイミングでスキル取得するんだ。しかも意味の分からないスキルだ)


 そのままデスワームに向け走る燕が刀を構える。

 神速の抜刀に合わせ風の矢が飛んでくる。

 それを絡め纏うように刀を振り抜く。


 何故か入る燕とペンネのカットイン。


『合体技 疾風燕天しっぷうえんてんことわり


 巨大な斬撃波が地面にのたうち回るデスワームを切り刻む。


「凄まじい威力だな」

「これで行ける!」


 デスワーム1匹撃破。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る