その10 砂漠に着いたにゃ!
しばらく休憩したシシャモ達は渓谷を進み砂漠へと出る。
遥か彼方まで広がる砂だけの景色。初めて見る光景に4人も驚きを隠せない。
恐る恐る歩くと思った以上に歩き難く靴に砂が入る。故に歩みは遅くなるが無理せず進んでいく。
「流石砂漠にゃ、暑いにゃ」
「水は沢山ボクが持っているから安心してもいいぞ」
紅葉が自慢げに言う。
「確かに紅葉殿がいなかったら水の問題で行き詰まっていたかもしれないな」
「本当に紅葉さんがいて助かりましたよね」
紅葉は皆に誉められご満悦だ。
「どうせここにもなんとかの魔王がいるはずにゃ。前の町で聞いた話だと砂漠を移動しながら進んでいる人たちってのがいるらしいから、そこで情報集めるにゃ」
砂漠を休み休み歩きながら進む。やがて小さなオアシスにつきテントを張る。
食料を紅葉に出してもらい食事の準備を進める。
「これをキャンプって言うんだよね? 本でしか読んだこと無いけど自然の中で泊まるとか夢みたいだよ。なんかこう闇が疼くって感じがする!」
「紅葉さん楽しそうですね。これをどーぞ」
テンションの高い紅葉にペンネが温かいお茶を出す。
「砂漠の夜は冷えるから暖かくして寝ないとな、ってシシャモ殿は既に寝落ちしているか」
船を漕ぐシシャモにペンネが毛布を掛けている。
「ところで皆は、この間の戦闘で声が聞こえなかったか? 拙者は技は変化出来ると、レベルは関係無いと言われた」
燕の問いに皆が真剣な顔になる。
「はい、私はもう必殺技が使えるのに固定観念を捨てろと言われました」
「ボクはスキルは固定、1度覚えたら変えられないって言われたね」
3人が一斉に声を揃える。
「あれは誰なんだ?」
しばしの沈黙。
「あれはスピカと同じ神様とか言う奴にゃ。名前は知らないけどにゃ」
突然喋りだし、皆の注目を受けてシシャモが話を続ける。
2つの世界を行き来することで理から外れ始めていること、必殺技やスキルの取得は自分に関係する異世界の物に触れてからだろうと言うことを語る。
「シシャモなんか凄い!」
ペンネが抱きつく。
「ねぇ燕、ペンネのシシャモへの態度ってなんか違うくない?」
「ふ~む、それは拙者も感じるな」
ペンネがシシャモに必要以上に抱きつき、スキンシップをする姿を眺める2人。
(シシャモが凄いから抱きついてるんじゃなくてただ抱きつきたいだけじゃないのかな? ああ言うのなんだっけ? 百合?)
紅葉がお茶を飲みながらどうでも良い思考を巡らせる。
***
「これからどうするのさ、宛もなく砂漠歩き続けるのって結構辛いよね」
紅葉がお茶を飲みながら訪ねる。
「この辺に住んでいる者がいれば良いのだが、なにせここの情報がないからな」
「とりあえず3割の地図をみて見ようよ」
ペンネが広げる地図を4人で覗き込む。
「この離れ小島みたいなのは何?」
「島?」
紅葉が指差す砂漠から少し離れた海に浮かぶ島。
「なんだろね? みんな旅に出るの初めてだからね」
「この島にはどうやって行くのにゃ? なんか砂漠と繋がってにゃいけど」
「海を船か何かで渡れば行けるはずだ」
「海?」
不思議そうに首を傾げるシシャモに海の説明をする。
「にゃんと、なら窓際の家から見た湖は海なのかにゃ」
「シシャモって鋭い割りには抜けた所もあってそのギャップが可愛い!」
ペンネがシシャモに抱きつくのを2人が冷めた目で見る。
「こっちの島の方、海側を目指しつつ人を探すにゃ。ついでに魔王もいれば討伐しとくにゃ」
「そう言えばさ、シシャモに神様とやらは仲間を集めてみたらって言ったんだよね?」
シシャモが紅葉の問いに頷く。
「だったらさ、回復出来る人とか欲しい思うんだけど。今のメンバーって攻撃的過ぎだと思うんだよね。偏ってる気がする」
「回復かぁ……紅葉さん、魔物で回復を使える種族は非常に少ないんだよ」
「そうなの?」
(確かにゲームでも魔物がバリバリ回復魔法使うのってあんまりないよね。って言うか魔物がパーティー編成を考えてるって結構ヤバイ話だね)
「とにかく海を目指すにゃ。仲間もいれば仲間にする、どうせ今は闇雲に進むしかないにゃ。どこへ向かってもハズレはないにゃ」
こうして砂漠を突っ切り海を目指す事にした4人。
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