その9 必殺技とスキルの取得条件にゃ!

 燕を中心に複数の斬撃が飛び敵を一気に刻んでいく。

 紅葉が燕を守るように盾を展開しときには空中に剣を出し攻撃をしている。


「燕さんのあれは……それに紅葉さんも闇魔法とは違って盾や剣を使って戦ってるし突然雰囲気が変わったような気がする」


 ペンネが弓を引きながら呟く。

 レベルアップにより魔法の矢が8本出るようになったものの。スキルと固有技の発展が全くない。

 世間一般的にもう少しなにか覚えても良さそうだが、ペンネ自身がそう言う体質なのだろうかとも考えていた。


 ただ今の燕と紅葉の変化に違和感を感じる。レベルアップしたにしては技の威力が一気に上がった気がする。

 普通はレベルに沿って固有技を覚えていく。それに今「必殺」の文字が表示されたのが気になる。


 考えながらも魔法の矢を放ちハーピーの数を減らしていく。


「はやく倒してシシャモを助けなきゃ」


 大量のハーピーに襲われ苦戦するシシャモの姿を見て焦る。


《必殺技もう使えるはずなのに使えない。変に知識があって概念を固定しすぎ。もうさ理を外れ始めてる君は自身の可能性を信じなよ。大体さ、魔法の矢を操れる時点でおかしいのに》


「え? だれ?」


 ペンネ辺りを見回すが誰もいないし声も聞こえない。

(理の外れって燕さんが言っていたやつだよね。わたしが必殺技使えるのに使えない? 魔法の矢を操るって……窓際さんに弓のサイトを付けてもらってから矢が追尾始めて、紅葉さんに見てもらおうと練習して……)


 シシャモの上空に大量のハーピーが集まり黒い雲の様になっている。


(一気に蹴散らすには矢を刺してては切りがない。もっとこう爆発して、そう紅葉さんに見せたあの技を使えば!)


 ペンネが弓を引く真ん中に一本の大きな矢がつがえられ、それを挟む様に小さな矢が2本づつ並ぶ。


「いける! 爆発するイメージをもって矢を撃ち抜く」


『必殺 ファイアーヴェルク』


 大きな矢が火の軌跡を残しながらハーピーの群れに突き刺さると軽い爆発を起こし球状になりその場に留まり周囲の敵を燃やし始める。その球体に4本の矢が突き刺さると一旦収縮し激しい光と共に大きな爆発を起こす。

 激しい爆発にハーピーの群れの大半が消し飛ぶ。


「できたぁ! 他の魔法にも応用出来そう」



 ***


 空気が震え地面まで揺れる爆発が起きシシャモの上空のハーピーの大半が消えてしまう。


「ペンネも必殺技会得したにゃ」


 そう言うとシシャモは目の前にいた1匹のハーピーを両手で掴むと大きく跳躍しキリモミしながら地面に落下ハーピーを叩きつける。その衝撃で周囲のハーピーがよろめく。


『必殺 シシャモ・キリモミ落とし』


 その表示が表示されるより前によろめくハーピーを連続で蹴りながらジグザグに上空へかけ上がる。

 最後に上空のハーピーの首筋に回し蹴りを決めるとシシャモが蹴ったハーピー達が爆発する。

 ジグザグの軌跡が稲妻の様にも見える。


『必殺 シシャモ・稲妻蹴り』


「なるほどにゃ、このネーミングセンスは趣味かにゃ?」

《君って、何気に鋭いよね。どこで気づいた?》


「蛙のところで技がシシャモに変わった辺りからおかしいと思ったにゃ。お前、性悪女神より偉いんなら魔王の正体教えろにゃ。このまま闇雲に進んでもあたしのお昼ねライフがやってこないにゃ」

《あぁその辺まで分かるんだ、凄いね。魔王については恐らくだけど私と同じ神様かな? って感じ。こっちも色々調べてるからもうちょっと待ってよ。その間に君も仲間をもう少し増やしてみても良いんじゃない?》


「絶対に教えろにゃ。それまでは闇雲でも進んでいくにゃ」

《はいはい、約束するよ。そう言えば君たちのスキルと必殺技についても段々分かってきたけど聞く?》


「必殺技、スキルは自分の能力に沿ったものが手に入るにゃ。きっかけはレベルじゃなくて自分の能力に関係する異世界のものに触れた時にゃ。今の3人を見て気づいたにゃ」

《すごい、すごい。シシャモが選ばれたのもたまたまじゃ無いのかもね。運命を感じちゃうね》

「神様がそんなこと言うのかにゃ。まあいいにゃ、今はこのうっとうしい魔王を殲滅するにゃ」


 シシャモが地面を力強くけり1匹のハーピーに蹴りを入れると倒れそうになるその足を掴みその場で回転を始める。


「必殺技は自分の技と異世界の物に沿った物が産み出せるにゃ。あたしのこのパワードスーツは窓際のヒーローとやらの思いに沿った必殺技が出せるはずにゃ」


 シシャモの回転が段々速くなり周囲に風を起こし始め、それは大きく成長し竜巻を起こす。その竜巻が残りのハーピーを巻き込み上空に巻き上げ地面に叩きつけられ爆発して消えていく。


『必殺 シシャモ・大旋風』


「にゃあ~あたしの必殺名だけなんかダサいにゃ!」

《渋いって言って欲しいな。それじゃまたね、賢い猫さん》


 竜巻が消えた頃合いを見計らって燕が走ってくる。


「シシャモ殿!」


 燕が刀を切り上げその勢いを利用して上空へ飛ぶ。頂点に達しかけたときに


「シシャモ! これを使うがいいさ!」


 盾が目の前に現れそれを踏み台にしてスキル『跳躍』を使用して更なる大ジャンプ。


「な、なんなんだお前たちは!」


 上空の彼方にいた1匹のハーピーにシシャモが迫る。


「にゃにって、魔王に宣戦布告した奴らにゃ。リーダーはお前だにゃ? お前で最後にゃ」


 空中でクルッと一回転しハーピーを蹴りあげる。


『必殺 シシャモ・キック』


 空中で爆発が起きる。


 落ちるシシャモをペンネがキャッチして地上に降りる。


「終わったにゃあ~!」

「つかれたぁ~」

「流石に腕が痛いな」

「死ぬかと思った……」


 4人が地面に転がる。疾風の魔王討伐完了の瞬間だ。

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