その6 紅葉の才能はここにあるにゃ!

 トカゲ討伐してレベル上げを終えた4人は一旦町へ戻る。


 シシャモ「LV.20」

 ペンネ「LV.21」

 燕「LV.24」

 紅葉「LV.10」


 宿の部屋にてステータスを確認する紅葉。

 スキルはまだ無い。HPと防御力の上昇はまずまずなものの、攻撃力は少しだけ上昇、特に魔力は初期の5のまま上昇が無い。


「はぁ~これって才能無いって事だろうなあ」


 落ち込む紅葉の部屋の扉がノックされる。因みに今回の宿は1人部屋である。

 扉を開けるとシシャモが水の入った瓶を2本持って入ってくる。

 その瓶の入った水を渡される。


「レベル上がったかにゃ? レベル関係なく紅葉の闇魔法は凄いにゃ」

「あぁまあね。ボクは常闇から生まれし者だから」


 水の入った瓶を円を描くように回し中の水を回転させている紅葉にシシャモが屈託の無い笑顔を見せる。


「カッコいいにゃ! 紅葉が時々言うセリフそこはかとなくカッコいいにゃ!」


「あ、えっとそう? ありがとう」


 ちょっと照れる紅葉だが何か考える素振りを見せて口を開く。


「あのさ、魔王討伐とか言ってたけど、シシャモってなんで戦ってるの?」

「うにゃあ? なんでか?」


 少しの間を置いてシシャモのこれまでの経緯が語られる。


「要は巻き込まれたってこと? その性悪女神に強制的にやらされてるんだ」

「そうにゃ、今でもあたしのお昼寝ライフ奪還の為に仕方なく戦ってるにゃ」


 不満そうな顔で足をバタバタさせ、アホ毛を揺らすシシャモを見て紅葉が笑う。


「ここまで来たら仕方無いにゃ、とっと倒して終わらせるにゃ。

 幸いペンネや燕もついてきてるし案外早く終わるかもにゃ」


 しっぽをパタパタと揺らす。それから紅葉を見るとやはり屈託の無い笑顔で語りかける。


「ペンネと燕はなり行きとは言え好きでついてきてるにゃ。紅葉、お前はあっちに帰るにゃ。闇魔法は魅力的だけど強制はしないにゃ」

「え……うん」


 シシャモが勢いよく立ち上がる。


「さて邪魔したにゃ。あんまり考えすぎても仕方無いにゃ。お昼寝しろにゃ、スッキリするにゃよ」


 そう言って出ていこうとするシシャモが思い出したように水の入った瓶を見せながら話す。


「そうにゃ、この水は瓶ごと買ったから返さなく良いにゃ。瓶はアイテムボックスに入れるにゃ。入れば水が腐ることなく何時でも飲めるにゃ」


「えっとアイテムボックスって?」


 あぁと言いながら丁寧に教えてくれる。


「つまり服を着替えてポケットが変わってしまっても自分のアイテムボックスに繋がるんだね。

 入れるときはポケットに物を入れる気持ちでアイテムボックスを開くと中に入る。

 出すときはポケットに手を突っ込んでアイテムボックスが開いて欲しいと思うと目の前に広がり欲しいアイテムを選択すれば良いんだね」


 早速スカートのポケットに手を突っ込みイメージすると目の前に広がる四角いマスのシートの様なもの。

 もちろん初めて開いたので何も入っていない。

 試しに瓶を入れてみるとマスの一番左端の上にアイコンの様な形で表示される。


「で選択、取り出しと」


 ポケット周辺の空間が歪み瓶が出てくる。


「おぉ面白いこれ♪」


 無意味に出し入れしてみる。


「これ便利だね。どんなに持ち歩いても重くならないんだよね」


 未知の物に興奮を押さえきれない紅葉は自分のダガーを出し入れしてみたりする。


「そんなに珍しいかにゃ? まあ楽しそうだし良いかにゃ」

「おもしろいよ。こんなのあったら学校行くのに忘れ物とかしないね。食べ物も入れれるし好きな場所で好きなもの食べれるね」


 益々興奮する紅葉。そんな姿にシシャモがちょっと安心した表情を見せる。


「ねえねえ、これだけ入ればお店とか開けそうだね。これで商売する人とかいないの?」

「ふ~ん、紅葉はアイテム枠が多い人かにゃ? 因みにあたしが40でペンネが70、燕は20だったはずにゃ。紅葉はいくつにゃ?」

「ん~とねぇ、縦10、横10で100枠の──」


 シートの下をみると『1/40』と△▽のアイコンが見える。試しに▽に集中すると『2/40』になり新シートが広がる。

 どうやらページを表しているようだ。


「100マスの40ページだから4000!」

「よ、よよ4000!? なんにゃそれ!!」


 シシャモの驚く声にペンネと燕もやって来て紅葉のアイテム収納4000個に同じく驚きの声をあげるのだった。

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