その4 人間、装備を買うにゃ!
朝になり町の露天の通りを4人は歩く。紅葉は珍しい光景に目を奪われながらキョロキョロして歩いている。
人ならざるものが商売をし、見たことのないものが売られている。
「紅葉、お前の種族は人間で良いのかにゃ?」
「え、うん人間だよ」
シシャモが若干小声で聞いてくる。
「紅葉さん人間ってのはあまり言わない方が良いです。よく思ってない人もいますから。普通にしていれば大丈夫ですけど」
ペンネの言葉にちょっと周りを警戒してしまう紅葉。
「昔人間が魔王を倒すってよく魔界大陸に来てた頃の名残だ。拙者ら世代は気にもしていないが昔の人達の中には今だ恨んでる者もいる。用心するに越したことはないってことだ」
「う、うん」
(ん~やっぱりここにいて良いのかなぁ? でもこの人達に着いていくのが、帰る一番の近道だし)
悩む紅葉を連れてある露天の前で止まる。
「ふ~む、おじさん! こいつに軽くて動きやすい防具と軽い武器が欲しいにゃ。ほら紅葉も選べにゃ」
「え、え?」
シシャモに押され露天の主人の前に立たされる。ゴリラのような出で立ちに足が震える。
「おめえはなんだ? 剣を使うのか? 魔法か?」
見た目と違い口から発せられる高い声のギャップにちょっとだけ紅葉の緊張が
露天の品を見てみる。
(露天の割には品揃え良いのかな? そもそもボクの装備って何を装備すれば良いんだろう? 武器なんか使えないし鎧なんか装備したら動けないよ)
少し想像してみるが装備して戦う未来が浮かばない。
(こうして考えるとゲームで装備する人とか凄いよね。クラスチェンジして今まで弓兵だったのが突然騎士になってプレートアーマー着ろとかパワハラだよね。
そう言えばシシャモ達って装備してないよね? 魔物だから? とりあえずよく分かんないし中間でいこう)
「両方かな?」
「ほう? 魔法剣士ってやつか珍しいな。じゃあ、防具は革制の軽めで、こっちの対魔法用のマントに、えーーと武器はこの短剣はどうだ。魔法を
ちっと値段は張るがどうだ? 少しはまけるぞ!」
お金のことを聞いておそるおそる振り替えってシシャモを見る。
そんな紅葉の視線を気にしている様子はない。
「金はある(ペンネの父より提供)にゃ! 良いやつをくれにゃ」
「おうよ」
紅葉が戸惑っている間に着々と装備は整えられる。上から
『黒薔薇のカチューシャ』
『渓谷鹿の鞣し革で出来た胸当て・手袋』『対魔法用マント』
『谷カワセミの羽使用のブーツ』
全て黒色で統一(紅葉の趣味)
武器が『魔法をエンチャント出来るダガー(名前は無い)』になっている。
基本的に全て対物理と対魔法に振った構成だ。ブーツだけは素早さ上昇となっている。
紅葉は自分のステータス画面を開いて数字の上昇を確認して驚く。
装備しただけでステータスが上がる、その事に改めて別世界に来たことを実感していた。
「ところでボクお金持ってないんだけど」
「にゃあ? そんなの気にすんにゃ。どうせお前も巻き込まれたんだから一緒にいる間は仲間にゃ。窓際のとこへ戻ったら帰っても良いからそれまでは怪我しないように装備しとけにゃ」
帰っても良いと言う言葉に考えを見透かされていた気がして申し訳無くなる。
「でもその、シシャモ達の装備は? ボクだけ買ってもらってさ」
「あたしとペンネは変身するんで装備がいらないにゃ」
「拙者は着物とブーツ、これが一番動きやすいし、武器は窓際殿から譲ってもらった刀がある」
ペンネに背中を押される。
「紅葉さん行こう。レベルあげれば怪我もしにくくなるし闇魔法も封印無しなくて良くなるかもしれないよ」
紅葉が心の奥に暖かいものを感じながら町を後にする。
***
「ってぇぇぇ、なこれ!? でかい! 大きい! ってサイズおかしいって!?」
1メートル弱ある灰色のとかげに追われる紅葉の心からの叫びが岩場に反響して響く。
町を出て約1時間。燕の案内で岩とかげの住みかを探し見事に巣穴を発見。ペンネの魔法の矢を打ち込んだところ当たりだったようだ。次から次へと沸いてくるトカゲ達。
「にゃにゃにゃにゃにゃ!」
シシャモの拳が岩トカゲを次々と宙へと打ち上げる。
ちょっと離れて燕が銀色の閃光を放ち撲殺された岩とかげの屍を築く。
上空から氷の矢が降り注ぎ的確に岩とかげが撃ち抜かれていく。この間のレベルアップから矢が8本同時に出せる様になっている。
で紅葉は走って逃げる。1メートル弱で子供らしい。そんなのが、のそのそではあるが土煙を上げながらはって向かってくるのはかなり怖い。
「なんなのさぁ! 無理だってこんなの」
半泣きで走る紅葉の明日はどっちだ!
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