その3 紅葉の異世界生活計画にゃ!

「汝らに問おう、この暗黒面に落ちたような生物は何者だ?」


 ここは魔界の町の食事所、紅葉が黒いヘルメットを被った魚を前に身構えている。


「それは、黒い力に落ちしうおだよ。見た目は変だけど味はなかなか美味しいんだよ。今が旬なんだって」

「ほほう、なかなか良い名前だ」


 ペンネの説明にちょっとこの魚の事を見直す。食べてみて味が悪くなかったのか紅葉は食べ進める。


「ところで紅葉殿、包帯は封印だと聞いたが左目も封印なのか?」


 燕の言葉にビクッと体を震わせる紅葉。


「あ、うん……そう封印だ! これは絶対に解いてはいけない」

「そうか、闇魔法の使いとは封印が多いのだな」

「そう危険な魔法故、暴走せぬよう封印を施してる。おいそれと使うことも出来ないのだ」


 黒いヘルメットだけを残し魚を食べ終えたシシャモがうとうとしている。

 そんなシシャモをペンネが慣れた感じでテーブルの周りを片付けたり椅子に寄りかかせたりしている。


「ねえ? こっちの世界って名前何て言うの? っと言うのだ?」

「世界? 紅葉さんのところみたいな「アース」とか言うのだったら人間の方が知っているはずだよ。わたし達は魔界が全てだから」


(住んでいる場所が星だと言う認識がないってことかな? それに人間がいるってことだよね。どっちにいるのが安全なのだろう? 

 この人達は悪い人では無さそうだし、一緒にいる方が転移の可能性高いから今のところ選択肢はないのだろうけど。

 おっとそうだ色々聞いて確かめなきゃ)


「ペンネさん、聞きたいことがある」

「ペンネで良いよ」

「じゃあペンネ、ボクはこの世界に来てレベルが1になってしまったようだ。こっちの世界では仲間だったら戦闘に参加しなくても経験値が入るのか?」

「うん、お互いが仲間と認識してステータス画面に名前が記載されたら入るよ」


(なるほど、この世界はゲームみたいな感じか。ただ魔物がレベルアップしていくのは人間側からみたらゲームバランス最悪の無理ゲーぽいけど。

 とりあえず帰れるまではレベルを上げて基礎能力の向上を図っていけば生き残れるかな。上手くいけば『スキル』も手に入るかも)


 もしかしたらチートスキルで無双出来るかもなんて思いながらその姿を思い浮かべる紅葉。


 フッフッフッフッフ──


「紅葉殿楽しそうだな、今後の予定は渓谷に行く予定になってたはずだからその前に紅葉殿のレベル上げをするのも良いかもな」


 燕の提案に紅葉が目を輝かせる。そんな気持ちはペンネが燕に質問することで更に上がる。


「燕さん、この辺りでレベル上げに良いところってあるんですか?」

「渓谷に行く途中の岩場に岩トカゲの巣があったはず。あれなら数もいるし拙者達のレベル上げにも良いかもな」

「私たちも強くなる必要がありますもんね。それで良い?」

「良いにゃ」


 普通に会話に入ってくるシシャモに驚く紅葉を置いて話は進んで行く。


 ***


 宿をとり部屋に入る4人。


「さて拙者は寝るが、紅葉殿はどうするか?」


 因みにこの宿2人部屋だったのでシシャモ・ペンネと燕・紅葉の部屋分けになったので紅葉は燕と一緒にいる訳である。


 この世界のシャワーに悪戦苦闘しながらもお風呂を済ませた紅葉は疲れていたので寝ることを選択する。


「それじゃあ灯りを消すぞ」


 燕によってランプの火が消される。


「おやすみなさいって燕さんって座って寝るんですか!?」

「ん? あぁ拙者はいつも座って寝るが」

「なんでです? 体痛くなりませんか?」


 紅葉の問いに燕が目を輝かせて答える。


「敵に備える! そういう感じで格好いいからだ!」


(やだ! この人カッコいい!?)

 変なところで感化される紅葉。


「よ、よしボクも座って寝るぞ!」


 ベット2つを使用することなく床に座って寝る2人。宿の人には優しかったかもしれないが、本人には優しくない。

 朝になって紅葉が睡眠不足と体が痛くて後悔するまで後約8時間。

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