その2 ああ、これが異世界転移ね……にゃぁ
晴れ渡る空に稲光が走りシシャモ達は団子になって地面に落ちる。
「毎度、毎度この転移方法どうにかならないかにゃ」
頭を押さえながらシシャモ達がぼやく。
「とりあえずみんな無事かにゃ? ペンネ、燕怪我してないかにゃ?」
「大丈夫だよ」
「拙者も大丈夫だ」
「あの~」
聞き慣れない声の主に視線が集まる。そこには眼帯に包帯を巻いた少女、紅葉がいた。
「すいません、ここどこです?」
「ん? 紅葉お前、喋り方おかしいけど頭打ったのかにゃ?」
「汝に問おう、この地にボクを呼んだのは誰だ! そして何を求める!」
とりあえずポーズを決めて尋ねてみる紅葉。
「ここは魔界大陸のオーガの村の入り口近くにゃ、紅葉がこっちに来たってことは一緒に魔王討伐の旅しろって事じゃにいかにゃ」
「なんだと……」
(これはまずい、異世界転移ってやつ? なんか巻き込まれて飛ばされたみたい。
叔父さんの話し本当だったんだ。とりあえずこの人達に着いていって帰るチャンスを待つしかないのかな)
頭の中を必死で整理している紅葉に3人は興味津々だ。
「紅葉さんってレベルいくつなんですか?」
「れ、レベル?」
「闇魔法の使い手、紅葉殿のレベル気になるな。スキルとか何を持っているのだ?」
「す、スキル?」
「そうにゃ、『固有技』はなんにゃ? 闇魔法の技カッコ良さそうにゃ!」
「こゆうわざ? 技!?」
(何言ってんのこの人達。しかも真顔だし、中二病も真っ青だよ)
真っ青になる紅葉。
「おぉそうにゃ! 窓際の話だとステータスとかあっちには無いって言ってたからルールが違うってやつにゃ。
もしかしたらこっちに来たことで何か変わってステータス見れるようになってるかもしれないにゃ」
「流石シシャモだね。紅葉さん、左上に丸い円がありませんか? それを開けって念じればステータスやスキルが見れますよ」
紅葉が視界の左上を見る。
(あるよ! あったよ何あの○)
視線を何処に向けてもついてくる○
(あぁもう! 1度気になったらうっとうしいな。この世界の人皆こんな視界で生きてるの?
取り敢えずステータスを開くには念じる? ってなにさ?)
「ふっ、開け!」
(余裕を見せてみたけど本当に開くの? いや本当に開いてお願いします)
紅葉の目の前に名前とレベル、ステータスが広がる。
(LV.1……HPは30、後は全部5。良いのか悪いのか分からない……スキルは次のページかな?)
装備品の項目。
『ニット』『フレアスカート』『眼帯』『包帯(100均)』
(ただの服だけど一応防御力+1はあるんだね。って包帯だけなんで出所が分かるのさ、悪意を感じる。スキルは次かな)
!?
(何も無い……)
呆然とする紅葉に3人の期待の視線が突き刺さる。
「や、闇の中にこそ真実の輝きあり、ボクを数字と言う概念が縛るなど到底無理なこと」
「なるほど! 闇魔法は門外不出。だからこそ今まで闇に包まれていた訳なんですよね」
ペンネの感動した声にシシャモと燕も納得する。
「一旦町へ行って休むにゃ。明日から疾風の魔王とやらに会いに行く準備していくにゃ」
「おーー!」
ペンネと燕が拳をあげるなか浮かない顔の紅葉にシシャモが肩を叩いて笑う。
「紅葉、頼りにしてるにゃ。そして頼りにしろにゃ!」
「う、うん」
シシャモにそのまま手を引かれて紅葉は歩き出す。
何も知らない場所に突然飛ばされ意味も分からないまま、不安を胸に紅葉の冒険が始まる。
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