魔王討伐に向けて──仲間集め後半にゃ!──
その1 春風 紅葉にゃ!
ラボに入ってきた少女。肩まである黒髪と可愛らしい外見、これと言った特徴の無さそうだが、それは本人が普通であればの話。
左目を黒の眼帯で隠し右手、左足に包帯を巻いてある。服はフレアスカートにニットと言う普通な格好だけに包帯と眼帯は激しく目立つ。
少女はシシャモ達を見るなり警戒して身構える。
「ね、ネコミミ……本物か……だが」
風呂上がりなのでゆるーい格好している3人と少女は向き合う。
先手を打つのは少女の方だった。右手で顔を隠すようなポーズをとりながら肩を揺らし笑う。
「ふふふふふ、ボクは常闇の底から使者。その名を胸に刻むがいい! 暗黒の炎の使い手!
「シシャモにゃ」
「ペンネです」
「燕だ」
(あれ? 反応薄い……)
拍子抜けする紅葉にペンネが近づいて手をとりちょっぴり潤んだ目で見てくる。
「聞きにくいんですけど、紅葉さんは病気、それも深刻な
「びょ、病気? ボクは至って健康! それよりもこの──」
シシャモが紅葉の肩に手を置いて、ペンネを指差す。
「まあ、言いにくい事もあるにゃ、それより紅葉これを見るにゃ!」
ペンネが魔弓を構えて小さな炎の矢をつがえ空中へ放つ。放たれた3本の矢が空中でぶつかり弾ける。花火の様に空中で華開く。
一応ラボの中なので突然の火に窓際達が慌てている。まあ突然室内で火を放つ訳だから中々迷惑ではある。
「どうですか? 魔法が好きだって聞いてたんで練習してみたんです」
「え……うん、ホンモノかあ、すごいデス、っていやボクは暗黒の炎の使い手!」
紅葉の手をペンネが興奮して握る。
「闇魔法の使い手なんですか!?」
「なんにゃそれってすごいのかにゃ?」
「闇魔法って使い手がいなくなって何百年、幻の魔法なんだよ! まさかこんなところにその使い手がいたなんて」
「なんにゃそんな凄い奴ならなんで魔法が見たいって……そうかにゃ! ペンネの実力を試したかったのにゃ!」
興奮するシシャモとペンネに紅葉が困惑する。
「拙者には話が見えないが、紅葉殿がそんなに凄いなら一緒に来てもらったら心強いのではないか?」
燕の提案にそれにゃー! みたいな表情をする2人対して紅葉の動揺は激しくなる。
「気になっていたのだが紅葉殿の包帯はなんなのだ? 怪我をしているのか?」
「これは封印の呪縛帯、ボクの力を暴走させない為に押さえているのだ」
「なるほど! 自分でも押さえきれない魔力を押さえ込んでくれるアイテムと言うわけですね」
ペンネが目をキラキラさせて紅葉に迫ってくる。その圧に紅葉は後退りをする。
(あ、この人たちにはボクの言葉が通じない……いや寧ろバリバリ通じてるのか)
焦る紅葉に麻帆が後ろから抱きつきボソッと言う。
「紅葉さん、そんなこと言ってると皆さん信じてます──」
「やめてくださいーー麻帆さんーー」
紅葉が麻帆を必死で引き剥がしていると空間が歪み始め奴は現れる。
「じゃーーーーん!! スピカちゃんの登場!!」
ラボの中に突然現れるスピカに皆の注目が集まる。
出てくるなりスピカがシシャモをペタペタ触って抱き締める。心なしか嬉しそうだ。
「いやあ~触れあえる生物っていいわぁ。もう単細胞な奴が何億いても楽しくないのよーー。あ~可愛いネコちゃんねぇ」
「やめるにゃあ、なでるにゃ気持ち悪いにゃ!」
抱きつくスピカをシシャモが無理矢理引き剥がす。
「あぁごめん、ごめん人恋しかったのよ。よーーし、それじゃあ、あっちに転移しようか、えーーとオーガの村からね。それーー!」
天井を突き破らず周囲に電流が集まり始める。そして開始される転移。
「よし、転移完了! わたしの魔法もレベルアップして人に優しくなってるわね。それじゃあ窓際さん達また来ますねぇ」
手を振って消えていくスピカ。残される窓際と麻帆。そんな麻帆がポツリと呟く。
「所長……紅葉ちゃんも消えちゃいましたよ」
「えーーーーーーーー!?」
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