その13 スパイダーネコにゃ!

 ガッチャン! リーディングOK!「クモ!!」

 デデデデン 装着! 「スパイダー!!」


 音声と共にシシャモの両手首にリングが巻かれ一回り大きい手袋が装着される。


「なんにゃこれ? どうやって使うにゃ?」


 腕を振る、バンザーイしてみる、ぐるぐる腕を回す。何も起きない。


「使い方が分かんないにゃ……」


 ベルトのボタンを叩く。


 いと!


「え、なんにゃ「いと」って」


 新しい音声に戸惑っていると両手首のリングが赤く光っている事に気付く。

 公園の木に触れてみると手袋からネバーっとガムのようなものが伸びる。引っ張ると細くなりベトベトした糸が出来上がる。


「なるほど『糸』にゃ。蜘蛛の糸みたいに引っ付くみたいだし足止め出来そうにゃ」


 ペンネと燕の元へ走りながらベルトのボタンを叩く。


 いいいいいいいと! マキマキ!!


 シシャモがスライディングでロボの股を潜りながら足にタッチする。そのまま走り近くの木を一周し再び向かいボディへタッチそして次は街灯の柱を一周。

 何度も繰り返しロボを蜘蛛の糸で、がんじがらめにして動きを封じる。


「にゃんか疲れるし、地味にゃ……」


 ボヤキながらベルトのボタンを叩いて再びロボの元へ走る。


「ペンネ! そこのでっかい三角の間の上の方に氷の橋を作るにゃ! 燕は一緒についてきて合図したらあたしを峰打ちで上空へ飛ばすにゃ」


 でっかい三角、いわゆる鉄塔に氷の橋が掛けられる。

 身動きのとれないロボの頭を糸で巻いて、燕の『峰打ち』とシシャモの『跳躍』でシシャモが棒高跳び選手の様に氷の橋を飛び越える。

 そのまま着地したシシャモは糸を引っ張って踏ん張る。


「うにゃにゃにゃにゃ──重い、重いにゃぁぁ」


 糸に引っ張られロボの頭がミシミシ音をたて始める。


 糸を引っ張るシシャモにペンネと燕が加わり3人で引っ張る。

 3人の力でロボの首がミシミシと引っ張られ延びていく。


『必殺 蜘蛛の糸』の文字が表示されると共にロボの頭が抜け上空へと一旦飛んで地面に落ちロボが生命活動終了を知らせるように目の光が消える。


 抜けたと同時に3人は前に倒れ顔を打つ。なぜかシシャモだけ2回前回りして顔を打っている。


 それと同時に3人のレベルが上がる。


「そう言えば蛙のときもレベル上がってたにゃ、今回でLV.13だにゃ」

「わたしはLV.15になったよ。もうすぐで追い付かれるね」


 そんな2人を余所に燕が自分の刀を見つめて何やら考えている。


「どうしたにゃ? レベル上がらなかったかなにゃ?」

「あ、いや拙者のレベルは19に上がったんだが……シシャモ殿達は何か違和感を感じないか?」


 燕の問いの意味が分からない2人が首を傾げる。


「いや、先程の戦い相手のレベル差は分からないがあれだけ攻撃してもダメージが与えれていない感覚。

 逆に沼蛙のときはダメージや相手のHPを無視したような攻撃。これはなんと言うかルールが違うとでも言えば良いか……伝わるか?」

「はにゃぁぁ」


 変身を解いたシシャモが口を開け目を丸くして燕をみつめる。隣のペンネも大体同じ顔をしている。


「燕、以外に賢いにゃ」

「なっ! 以外とはシシャモ殿は拙者をどんな目で見てるんだ!」


 まさか「峰打ちバカです」とこの場では言えるはずもなく焦るシシャモに周りをオロオロするペンネ。


「とにかくこっちは拙者達の世界とは違う訳だ。ならこの世界のルールが分かれば相手に対してもっと有効に立ち回れるはずだ」

「はにゃぁぁ」

「いや、その顔はもう止めてくれ」


 燕がシシャモの両頬を引っ張る。ちょっぴり燕との間が縮まった瞬間だった。

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