その12 トランスフォーム にゃ!
端末の案内に沿って3人は歩く。見慣れぬ町に見慣れぬ乗り物。
3人は口を開けてただただ、この異界の地に驚いていた。
「この道路とか言うの堅いし、なんか暑いね」
ペンネの言葉に2人も頷く。自分達の住んでいる場所とはあまりにも違う世界。
人々の格好も数も違う。その個性溢れる波に呑まれ目を回しながらも歩く。
「ん~なんかここから美味しそうな匂いがするにゃ。お腹空いたから食べようにゃ!」
シシャモが指差したのはパン屋さん。焼きたての美味しそうな匂いが漂う。
シシャモ達の世界と違って鮮やかで多種多様なパン達。
何よりパンは自分達の世界にも存在するので抵抗がないし、外れもないだろうと言うわけでお昼ご飯はパンに決定する。
「にゃんだかんだ言ってもパンにゃ。そんなに味は変わらないはずにゃ」
3人はパンを買って公園のベンチに座り、せーので1口食べ悶絶する。
「うにゃーー!?」
「美味しい……」
「こっこれは!」
今まで食べてきた物を全否定されるような美味しさに衝撃を受け、後はひたすらこの美味しさを堪能する。
「ところで北へ行けと言われたけど具大抵な目標はどこにゃ?」
「えっと、ここ名前は……ホッカドウが最北端だからそこ目指して行けば良いみたい」
ペンネが携帯端末の地図を広げ2人が覗き込む。
「遠そうにゃ、めんどくさくなったにゃ」
開始半日で根をあげる。
そんなシシャモに渇を入れる為にやって来たのか公園の柵を突き破って車が飛び込んでくる。
ただシシャモ達は車を知らないので車輪の付いた鉄の馬車としか認識していない。
「シシャモ殿あれはなんなのだ?」
「馬車? ロボットかにゃ?」
低いエンジンを吹かしまるで威嚇してくるような車に対し3人は身構える。
車を知っていれば運転席に誰も乗っていない事に気付くのだろうが、3人は知らないのでその違和感に臆することなく戦闘準備を開始する。
「変身にゃ!」
「ペンネ スターライト メイクアップ!」
2人がそれぞれ変身するのを燕がちょっと羨ましそうに見ながらアイテムボックスから取り出した刀を腰にさす。
3人の準備を待っていたかのように車の両ドアが開くとゆっくりと形を変えていきやがてロボットになる。
どっかの宇宙から来た機械生命体みたいな変形をする。
「いくにゃ!」
シシャモの合図で戦闘が開始される。
前衛のシシャモと燕が積極的に仕掛ける。くまの爪と、刀の攻撃は車ロボのドアの盾を前に火花を散らすだけでダメージが与えられない。
これまでのロボと違いスピードと動きが素早く、ペンネの魔法の矢も盾の前にかき消される。
「ペンネ! 合体技でいくにゃ!」
シシャモが『跳躍』を使用して高く飛ぶとペンネが雷の矢をシシャモへ向け射つ。
『合体技 サンダーくまクロースラッシュ』
の文字とカットイン。
それに対しロボが車の形状に変形すると走り去りシシャモの攻撃を避ける。
そのまま地面に爪跡をつけバランスを崩すシシャモに向かって車が猛スピードで突っ込んでくる。
焦るシシャモに燕が突っ込み一緒に転がるようにして攻撃を避け危機を逃れる。
その様子を見て無事を喜ぶのと同時に嫉妬のオーラを空で放つ者がいるが気付かれてはいない。
「こいつ強いにゃ」
シシャモは考える。
──ペンネ
魔法少女状態のスキルは
『ステータス2倍』これはスピードや魔法においては使えるが元々腕力の低いペンネの接近戦は期待が出来ない。
『可愛さ4倍』これは意味が分からない。必要あるのか? 必要であっても何でこっちが4倍なのだろうか。
飛んでいるペンネを見る。確かにいつもより可愛い。
素のスキルが『飛翔』『吸血(小)』『魔弓召喚』──
──燕
『帯刀』刀を持つとテンション上がる。
『高揚』テンション上がると攻撃力も上がる。
『拘り』拘りを持つ攻撃は攻撃力+30──
峰打ちする為のスキル構成だ……
「よし! やっぱり分かんないにゃ! 物理で押すにゃ!」
脳筋シシャモの判断が下される。
変わって冷静に見るのはペンネ。空から見ているので全体が見える。
物凄いスピードでシシャモ達に突っ込んできては土煙をあげ方向転換をして再び突っ込んでくる。
(車輪をわざと滑らせて方向転換してるんだ、中にいたら酔いそう。ん? 滑る?)
シシャモにペンネから通信が入る。
「シシャモ! 今から氷の矢で地面一部を凍らせるからあの鉄の馬車を誘導して」
通信が切れると直ぐに氷の矢が降り注ぎ地面に氷の膜を数ヶ所生み出す。
シシャモのネコキックを車の形態で避けたロボのタイヤが氷でスリップ。その隙を狙って燕の峰打ちが振り下ろされボンネットがへこむ。
「いけるにゃ! たたみ掛けるにゃ!」
シシャモの蹴りと燕の刀で連続攻撃を繰り出す。上空からペンネが氷を地面に張りロボの動きを制限させる。
ドアの盾に阻まれていた攻撃が徐々に当たり始め鉄のボディに傷が増えていく。
「なんと堅いなこの鉄の人形は。窓際殿から貰った刀じゃなければとうに折れているぞ」
「本当に堅いにゃ、なんか出てくる度に堅くなってる気がするにゃ」
燕とシシャモが時折会話を挟みながら攻撃を繰り出す。決して余裕があるわけではない、打開策を求めての行動なのだが突破口が見出だせない。
その状況を大きく変えたのがロボの方だった。
右足の太ももの一部が横に開くと中から鉄製の短剣を取り出す。
短剣と言ってもシシャモ達からすれば自分の身長位の大きさの大剣だ。
受け止めれる訳もなく避け続けることしか出来ない。
「まずいにゃぁ、これをどうにかするには……そういえばこれ使えるかにゃ?」
シシャモの手に下手くそな蜘蛛の絵が描かれたフロッピーディスクが握られる。
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