その11 アースの旅スタートにゃ!
目の前で起きたことが理解出来ていないシシャモ達が言葉を失い呆然としていると、魔法少女に変身したペンネが縦ロールの髪とフリフリの服を可愛く揺らしながら近づいてくる。
「ど、どうかな? シシャモ」
恥ずかしそうにしながら上目使いでシシャモを見てくる。
どう? ってなにを答えれば良いだろう? 変身のことか? この時々自分に対して妙な圧をかけてくるペンネがよく分からなく時がある。シシャモはとりあえず思ったままの感想を伝える。
「可愛いにゃ そのリボンとかヒラヒラして魅力的にゃ! なんか飛びかかりたくなるにゃ」
シシャモがペンネの胸元のヒラヒラするリボンに熱い視線を送る。その視線を受けてペンネは体の芯から熱くなるのを感じる。
「どうですかみなさん! 私の研究の成果、集大成! 魔法を使うのがネックだったのですが、まさか魔法が使える人が来てくれるなんて幸運でした。
しかもこれ可愛さ4倍だけでなく本人の力とスピードを2倍にしてくれます」
麻帆が興奮ぎみにシシャモを揺らしながら捲し立てるように話してくる。
頭をシェイクされながらシシャモは何が凄いか分からないけど「すごいにゃ」としか言えなかった。
「ところでこちらの方は?」
ようやく落ち着きを取り戻した麻帆が燕の存在に気付く。
人刺し指で口を押さえながら上から下まで観察する。
そんな麻帆に押され気味ながらも燕は名前を名乗る。
このとき「峰打ちに狂った奴だにゃ」をシシャモが忘れず付け加える。
この言葉に燕が反論しないとこをみると誉め言葉とでも思っているのか謎である。
「はあ、はあ、なるほど峰打ちが好きな人ですね。所長確か刀モデルもあったはずです。それを使って頂いては?」
麻帆に言われ、首を傾げる窓際に対し少し呆れた顔をして麻帆が兵器研究室から出て行くと刀を持って直ぐに戻ってくる。
「ささ、どうぞこれを使ってみてください」
麻帆に渡された刀は燕の持つ刀『山茶花』とは違い無機質でどこか味気ない感じを受ける。
その刀を手に取り、試し打ち用のマネキンの前に立つと、燕は抜刀の構えをとる。
『峰打ち』の文字が浮かぶと同時に放たれる神速の峰打ち。
マネキンは九の字に折れ曲がり壁にぶつかると力無くずれ落ちる。
「ほう、これは凄い刀だ。峰の感触が違う」
刀の威力に関心する燕に、峰の感触ってなんにゃとか言う声は届かない。
「凄いね燕くん。良ければそれ使って良いよ。燕くんが持ってる方がデーター取れるしね」
「こんな業物もらっても良いのですか?」
「良いよ、試作品だし今後も改良したら使ってもらって欲しいな」
「かたじけない、窓際殿」
お礼を言って新しい刀をうっとりした表情で眺める燕にシシャモは疑問をぶつける。
「燕、その刀使う気かにゃ? 山茶花とか言う刀はどうするつもりにゃ? 家宝じゃにゃいのか?」
「ん? それはアイテムボックスに入れるに決まっている」
そう言ってアイテムボックスの入り口を開けると山茶花を投げ入れる。
「いや、それで良いのかにゃ?」
「シシャモ殿、拙者は強くなりたいのだ。それは拙者自身の努力は必要だろうが攻撃力の高い武器に変えるのが手っ取り早いだろう」
「うっ、確かにそうにゃのだけど、腑に落ちないにゃ……」
悩むネコミミと魔法少女と峰打ち侍に窓際が今後の予定を告げる為に地図を広げ行き先を説明する。
「今ここはトキョー、地図で言えばここだよ。ここから北へ向かって欲しいんだ。いつもやってくるヘリは北からやって来ているのが分かったんだ。
魔王についてなにも分からない今あのヘリの出撃位置を見つけるのが一番効率的だと思うんだよね」
窓際が地図の中央辺りを指して北側へ指を動かす。こっちの地理が分からず首を傾げる3人に携帯端末が渡される。
「これはペンネくんが持った方が良いかな? 使い方は後で教えるけどこれがあれば地図をいつでも確認できるし、現在位置も知ることが出来るよ。
因みに通信も出来るけど、前に渡したほうで連絡取ってね。あっちはこのラボ直通、専用の通信機だからね」
***
長い窓際にの説明を受け3人は北へ向かう為ラボの前に並んで立っている。
ペンネはそのままの姿でも行けるがシシャモはパーカー付きのジャンバーを着てパーカーに空いた穴にミミを通す。
燕は角を隠す為、帽子を被ったので着物に帽子と言うちぐはぐな格好になる。刀はアイテムボックスへ収納、ジャパンでお金として使えるカードを渡される。
これで一応の準備は整う。
「あ、そうそう。これをシシャモくんに渡しておこう。この間の蜘蛛の糸のデーターから作られたものだよ」
窓際から渡された下手くそな蜘蛛の絵が描かれたフロッピーディスクをアイテムボックスへ入れ出発する。
「ありがとにゃ、それじゃあ行ってくるにゃ!」
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