その10 魔法少女になれ!にゃ!

 窓際のラボ上空にて落雷の予兆が観測される。正確には時空の歪みを観測している。

 エネルギー事態は電気であることは解析済みなので避雷針にて雷を誘導する。

 ラボの屋根に絶縁体・衝撃吸収マットが展開され空からの来訪者を待ち受ける。


 ドーーーーン!! 


「うにゃーー」「きゃーー」「うわゎゎ」


 3人の声が落ちてきて ボスッ と柔らかい音がする。前回と同じように端の方に階段が現れる。

 階段の姿が確認出来るようになった瞬間、黒い影が飛び出す。


「さあ、さあ、さあ、お待ちしてましたペンネさん! こちらへ」


 麻帆がペンネを脇に抱え階段へ飛びラボの中へ消えていく。ペンネは悲鳴をあげる暇もなく連れ拐われる。


「シシャモ殿、今のはいったい……ペンネ殿は大丈夫なのか?」

「あ、あぁ大丈夫にゃ……たぶん」


 残された2人も階段を降りラボへ入るとコーヒーを片手に窓際が待っていた。


「やあ! 待ってたよ って、新しい子だね? どちらさま?」


 窓際が新しい仲間の燕に興味を示す。毎度のことながら結構近い距離で少女の周りを観察するその姿は変態としか言い様のない姿だ。

 燕も若干顔が引きつっている。


「へえーーへえーー、燕くんって言うんだね。これは角? 本物? おっ? 刀を使うの?」


 そう言って走ってどこかへ行ったと思ったら剣を持ってすぐに戻ってくる。


「これちょっと使ってくれないかな? 注文受けて試作品作ったのは良いけど上手く使える人がいなくてデーターがうまく取れないんだ」


 そう言って渡された洋風の剣を燕は真剣に見ている。


「ブロードソードかぁ……峰打ちが出来ないな」

「ん? 峰打ち?」

「あぁ、燕は峰打ちに狂ったおかしい奴にゃ、峰打ちしかしないにゃ」


 シシャモの雑で的を得た説明に窓際が納得する。最近意思の疎通が出来てきたようだ。


「みなさーーーーーん! 準備が出来ました! さあこちらへ私の集大成をお見せします」


 3人で話しているところに、興奮しかしていない麻帆が入ってくる。

 そこにいつものボーーとした感じのマイペースな彼女はいない。ただ暴走状態ではなく本当に興奮しているだけのようだ。

 まあその勢いもなかなかなのだが。


 その勢いに3人は引きずられるようについて行き兵器試験室へと入る。

 そこには短い杖の先端に星がついたものを持って立たされているペンネがいた。


「さあ! ペンネさん。さっき説明した通りやるんです。そうすれば力が手に入ります。魔法使いのペンネさんならきっとなれます。さあ!」

「えぇと、でもはずかしぃぃ」


 踏ん切りがつかないのか躊躇するペンネに麻帆が苛立ちを見せる。


「いいからなれ! 魔法少女になれ!」

「ひいぃぃぃ!」

「ほら! 変身する!」

「……変身」


 ペンネが「変身」の言葉に反応する。シシャモと同じ変身。前に一緒に変身して戦おうって言った話を思い出す。あの夢が叶うかもしれない。

 ベルトではないけどこの杖に変身の力があるのなら、そう変身しよう!


 キリッとした表情になると先端に大きな星がついたステッキを上に掲げる。


「ペンネ! スターライト メイクアップ!」


 ステッキから星形の光がキラキラこぼれペンネを包みなぜかシルエットだけになる。


 キラキラと大きなお星さまが両手に重なり弾けると白い手袋が、両足で弾ければ白いブーツが現れる。


 2つの大きな星が体の回りを包むように螺旋状に昇っていくとフリフリのピンクのドレス、胸元で弾けて真ん中に星のクリスタルのついた白いリボンが付く。


 なぜかストレートの髪が左右2つ縦ロールに変わっており全体的にふんわりボリュームアップしている。

 その縦ロールの付け根に星が飛んできて、髪飾りになる。


「常闇に降り注ぐ流れ星! 魔法少女ペンネ!」


 背景に大きな星と、小さな流星群が降り注ぐ。そしてフリフリのドレスに身を包んだペンネがポーズを決めている。


 パチパチパチパチ!


「きゃあああああぁぁぁ! 最高!! ペンネちゃん最高よ!」 


 携帯端末で写真を撮りながら見たことのないテンションで叫ぶ麻帆。


 そして諦め顔の窓際と、全くついてこれていない魔物が2人、目の前の光景に立ち尽くす。

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