その8 拙者は燕だ、安心しろ峰打ちしかしない……にゃあ
『教えてスピカちゃん!! その3』
「冒頭からこのコーナー3回目です。今回のお話『固有技』について先にお話するわね。
『固有技』これはその個人が持つ技、スキルの進化系。
これはスキルにも言えるのだけど例えば『パンチ』って言うそのまま相手を殴る技があったとして、レベルが違えば単純に威力も上がるけど、同レベルの人が同じ技を使った場合体格や体重で威力も変わるわ。
更に使いこんでも切れが良くなったりして威力が上がるの。
レベルだけではない努力も報われる世界ってわけ。極めるって素晴らしいことよね。
それじゃあ、またね♪」
────────────────────
朝になりシシャモ達は宿を出てオーガの村へと出発する。
村の北門を出て分岐を西側へ進む。
「昨日見たオーガの人綺麗だったよね。みんなあんな人達なのかな?」
ペンネは昨日の少女を思い出す。
(背は私よりちょっと高かったかな。美人だったなぁ、胸も大きいし、足も綺麗だし、あの微笑み……
シシャモはどう思ったんだろう?
ああいう人が良いのかな? いやそんなはずは……でもそうだったらどうしよう)
ペンネは自分の胸を見る。
(……シシャモは渡さない)
黒い何かが心の底から沸いてくる。
一方シシャモはペンネに話しかけられたものの、なんかぼーーとしてニヤニヤしたと思ったら黒いオーラを発し始める彼女に話しかけられずにいた。
***
町が遠ざかってくると小動物系の魔物とエンカウントし何度か戦闘になる。
そして今、めんどくさい奴等が現れる。
『オーク』それは豚と人間を足したような魔物だ。この魔物、割腹がいいほどパワーも防御力も上がり強い。
シシャモたちに前に現れた4人組はかなり細身であることから弱い部類になるはずだが、少女2人を目の前にかなり意気がってる状態だ。
「よお~どこ行くんだい。行き先教えてくれたら案内するよ。
まあ、ただじゃあないけどなぁ」
シシャモとペンネを品定めするように上から下までいやらしく見てくる。
最近この展開多いなと無表情になりかけたとき1人の少女が現れる。
「お主ら、そこでなにをしている?」
「あぁん? なんだあ」
オークたちが声の主を睨み付けるがその主がシシャモ達と変わらぬ少女と分かるとニヤニヤしながらバカにしたような態度に戻る。
「んだぁ? オーガの娘かよ。お楽しみが自分から飛び込んで来やがったぜぇ!」
オーク達の下品な笑いが響く。
オーガの少女は表情を変えず涼しい顔で近づき腰の刀に手をかける。
「刀かよ! 珍しいもん持ってんじゃん! それも貰ってやるよ」
そこで初めてオーガの少女は表情を変え呆れた顔になる。
「はぁ~救いようがない者達のようだな。それでも情けはかけよう。それが拙者の信条!」
固有技『峰打ち』の文字が表示されると共に目にも止まらぬ抜刀が繰り出される。
ボギィィ! ガゴォォ!! ベキベキ! グチャァ!?
最後に刀を鞘に納め カチン っと心地よい音がするのと同時に頭蓋骨や胸部が陥没したり、首が皮でぶら下がった状態の4人が崩れ落ちる。
そして絶命し消滅する。
「安心しろ、峰打ちだ」
オーガの少女は静かにそう告げる。
「ペンネ……あいつ、安心しろって言ったけど何を安心するにゃ?」
「う、うん。私達に言ったんじゃないかな?ほらもう大丈夫って……」
2人は目の前で起きた
固有技『峰打ち』恐らくスキル『手加減』の進化系だと思われる。
スキル『手加減』それは相手のHPを1だけ残すと言う割りと鬼畜なスキル。
なぜ『手加減』の進化系と検討が付いたかと言うとオーガの少女がオークに当てたときのダメージは約『300』そしてオーク達が倒れた後、追加で全員に『1』のダメージ表示されたからだ。
これの意味するところは少女の刀が当たった後はギリギリ生きていて、怪我による追加ダメージで死んだことになる。
半殺しをして放置され死んだみたいなものだ。
2人が引くのも無理はない。
「お主ら大丈夫か?」
そんな2人の事は気にせず少女は話かけてくる。
「あ、ありがとにゃ。えっとあたしはシシャモにゃ」
「わ、私はペンネです。助けて頂いてありがとうございます」
慌てながらもお礼を言う2人に少女は優しく微笑む。が逆に怖い。
「拙者は
「オーガの村へ行こうとしてたにゃ」
「拙者の住む村へ? あそこには住居しかないが」
燕は少し警戒したのか2人への視線が鋭くなる。
「この辺の魔王について聞こうと思ったんですけど、燕さんは何か知っていますか?」
ペンネが鋭い視線に気付き慌てて要件を告げる。
「魔王……沼の魔王か? 聞いてどうするのだ?」
「その沼の魔王に会って邪悪な魔王を知らないか聞いてみたいにゃ」
「邪悪な魔王?」
シシャモ達は燕に今までの事を話す。
燕は半信半疑な顔をしながらもオーガの村へ案内してくれると申し出てくれた。
***
オーガの村へ着く。木造のこじんまりとした家が何軒かありどちらかと言うと畑の方が多い。道端には村で飼っていると思われる鶏が歩いている小さな村だ。
燕の案内で村長と話す事になる。
村長は白髪に白ひげの初老と言った感じの人物だった。
細かい話しは省いて、沼の魔王の情報とその魔王に会って話せる相手かを聞く。
村長は細い目を見開き答えてくれる。
「ほう、つまりこうじゃな。お主らが沼の魔王を倒しに行くと」
「全然違うにゃあぁぁぁ! お前は何を聞いていたにゃ!」
憤慨するシシャモをペンネが嗜める。
「いやのう、沼の魔王は話を聞くような奴ではないのじゃ」
「なぜにゃ?」
「いやだってただのデカイ蛙じゃもん」
「?」
はてなが飛ぶ2人に村長は話を続ける。
「でかくて近寄る者を反射的に食うのじゃ。それで甚大な被害を受けてまるで魔王みたいじゃあってことで沼の魔王なわけじゃ」
2人の顔は段々白けてくる。
「わしらも討伐に行ったのじゃが強くてかなわんのじゃ。この村最強の燕でもな」
村長に名前を出され燕が話を引き継ぐ。
「あいつは拙者の刀をもってしても倒せなかった。全体が柔らかくてなダメージが入らないのだ」
燕が悔しそうな表情で語る。
「1つ聞いて良いかにゃ? そいつは刀で斬れないのかにゃ? それともその刀は斬れないのかにゃ?」
「拙者の刀『
沼の魔王には『峰打ち』が通じないのだ。斬ろうと思えば恐らく斬れるだろう」
シシャモとペンネはこの時確信した。この燕と言う少女「ちょっと頭おかしい」と。
「にゃんでそんなに峰打ちにこだわるにゃ?」
「あぁそれは、最後に『安心しろ、峰打ちだ』って言いたいからだ。カッコいいからな!」
燕が目をキラキラさせ興奮気味に語るのを見て、確信はもう揺るがない。「関わってはいけない!」今の2人の気持ちは一緒だ。
「それじゃあ、あたしたちは話が聞けたからこれで帰るにゃ。ありがとうにゃ」
立ち上がり帰ろうとするシシャモたちを燕が腰の刀に手をあて今にも抜きそうなポーズをとり進路を塞ぐ。
「まて、お主ら拙者も連れていくのだ」
「にゃにを言ってるにゃ、お前は……」
燕が目をつぶりニヤリと笑う。
「沼の魔王を倒しに行くのだろう。分かってる」
「あ、ダメだコイツ。話聞いちゃいにゃい」
シシャモの心の声はもう隠せない。
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