その7 出会いの予感にゃ!
「まったっくなんにゃ、結局あの地図が1番まともってことかにゃ」
「まあまあ、テントも良いのが買えたし今日の目的は達成したから良しとしようよ」
あの後、色々な店を回ってみたが最初の露店の地図以上のものが無いことが分かっただけだった。
でもその過程で素人でも簡単に組み立て出来るテントを買うことが出来た訳だが。
ふて腐れるシシャモを引き連れてお昼ご飯を食べる場所を探す。
「うーーん、よく分からないし、とりあえず綺麗で明るいところなら安心じゃないかな? ってことでここはどう?」
ペンネが指差す場所は確かに明るくオープンテラスまであるちょっぴりお洒落なところだった。
外のテラスに座り『極悪トマトサンド』と『滝登り
「魚は美味しいけどにゃ、窓際の料理食べるとこっちの世界の料理は物足りないにゃ」
「確かにあれは美味しかったもんね」
2人がアースでの食事を思いだしているとお店にお客さんが入ってくる。
「マスター殿、すまないが持ち帰りをお願いしたい」
声の主はシシャモ達と同じ位の年齢の少女だった。
濃いめの青い髪にちょっと尖った耳、額の上の方にちょこんとはえた角が2本。顔立ちは幼さが残るものの目鼻立ちはハッキリしていて美人である。
青い花の刺繍が施された白い着物を着ており足は露出多めでブーツを履いている。何より目を引くのは腰に差した刀だろう。
この世界で刀を使用する者は少ないのでかなり目立つ。
種族は『オーガ』だろう。
そのオーガの少女はマスターから注文の品を受けとると外へ向かって出ていく。
シシャモ達のテーブルをすれ違う際チラッと目が合う。
オーガの少女が微笑んでそのまま通りすぎる。
「シシャモの知り合い?」
「知らないにゃ、ペンネの知り合いかと思ったにゃ」
2人は疑問が残るものの食事を終えて再び町へ買い出しに行く。
***
夜になり再び宿屋へ帰ってきた2人は今後の予定を話し合う。
「次の目的地を決めないとね」
ベットの上に広げた地図を囲んで頭を抱える2人。
悩む理由はこの世界を滅ぼす魔王を討伐すると言う目的。
なにせ現時点で世界が滅ぶような事が起きてないし困っていない。
そしてこの魔界に何人魔王がいるのか分からないと言うのが更に悩ませる。
「とりあえず聞いた話だとこの町から北側に大きな沼があって『沼の魔王』南に渓谷があって『疾風の魔王』がいるみたい」
「なんでも魔王つければ良いってもんじゃにゃいな!」
シシャモはベットに寝転がってゴロゴロ始める。
ペンネも地図を眺めながらぼんやりしている。
「そうにゃ、2つ確かめたい事があるにゃ」
ゴロゴロしていたシシャモが何かを閃いたのか勢いよく体を起こすとペンネの瞳にも光が戻る。
「まずペンネの父さんに他の魔王の事を聞けば良いにゃ、そしてもう1つは性悪女神が全魔王に宣戦布告したならその時点での魔王の数を聞けるかもしれないにゃ!」
「うーーん、お父様は多分昔からいる魔王しか知らないと思うしあんまり外に出ないから知らないと思うな」
ペンネの前で親の悪口を言うのも
「後は性悪女神かにゃ……とりあえず今出来るのは『沼』か『渓谷』に行くかにゃ」
そこでペンネがふと思い出した様に話し出す。
「そういえば、近くに『オーガの村』があるって聞いたよ。そこでも情報集めてみない?」
昼にすれ違ったオーガの少女の姿を思い浮かべる。
なぜか分からないけど気になる。
「行ってみるかにゃ」
予定が決まったシシャモ達は道具の整備をする。
ベットに置かれるベルトとフロッピーディスク2枚。1枚は無地、もう1枚は下手くそな熊の絵が描かれている。
ベルトに視線を移す。シルバーを基調としたデザインのそれを布で磨く。しげしげと眺めながら磨くシシャモの背中に抱きつき肩に顔を置いてペンネが覗いてくる。
「シシャモそのベルトってシシャモしか変身出来ないんだよね」
「そう言われたにゃ。なんでも初めて変身した人の生体はんのー登録がどうとか言ってたにゃ」
「あ~あ~わたしも変身とかしてみたいなぁ。そうしたらかっこよく戦えるのになあ」
肩に顔を置いたまま頬を膨らませる。
「麻帆が装備作るって言ってなかったかにゃ? その為にサイズを計ったのじゃなかったかにゃ?」
ペンネは興奮状態の麻帆の姿を思いだし身震いをする。
「もしかしたら変身出来るかもしれないにゃ。2人が変身できれば楽勝にゃ」
シシャモと一緒に変身する姿を思い浮かべる。襲い来る敵を2人で倒して魔王を討伐、そしてその後2人は一緒に幸せに暮らしましたとさ。までのストーリームービーが流れる。
枕に顔を
(よし! わたしも変身しよう!)
そう決意するペンネだった。
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