その5 寝る場所には注意にゃ!
無事に橋を渡り終え、岩でごつごつした道を抜けると地面に草がポツポツとはえてきて、それはやがて草原に変わっていく。
その変化にシシャモ達の足も軽やかに変化していく。
「はにゃーーーー森とは違う綺麗な緑にゃーー」
シシャモが草原に感動する。そして寝転がる。
「何かが寝転べ! って言ってる気がするにゃ」
仰向けになったシシャモは大きく延びをする。
そして寝る……。
「ねえ、シシャモ寝ちゃだめ! 町に行こうよ、ねえ」
ペンネがシシャモを揺さぶるが起きる気配はない。
「もう!」
そう言って隣に座る。ポカポカと良い天気だ。風も心地よく吹いてくる。
ペンネが目をつぶってそんな陽気を楽しんでいると段々眠たくなってくる。
チラリとシシャモを見る。とても気持ち良さそうに寝ている。
ますます眠たくなったペンネもシシャモの横に寝転がる。
「ふわぁ~気持ちいいなあ」
今にも閉じそうな
顔が近い……普段のやる気の無さと割りと口が悪いのであまり意識されることはないのだが、シシャモはかなり可愛い顔立ちをしている。
ペンネはまじまじとシシャモの寝顔を見る。
気持ち良さそうだ。むにゃむにゃ動く口が気になる……唇……。
ドキドキと胸の動機が激しくなる。
「こ、これが友達……」
ペンネは胸の鼓動を感じながら眠りについてしまう。
***
2人が寝て2時間はたっただろうか。明るかった空もオレンジ色の光が混ざり始める。
そして現れる3体の不穏な影。
「こんなところに金が転がってるぜ!」
「あぁ! 最高かよ」
「しかも結構の上玉じゃん! どうする? 先にやっちゃう?」
テンションマックスになるゴブリン3人。たださっき出会ったゴブリンとは装備が違う。
名を付けるなら『盗賊ゴブリン』と言ったところだろう。
3人はスヤスヤ眠る少女達に魔の手を伸ばす。
カチッ
1人の首に冷たい金属のようなものが触れゴブリンの手が止まる。
3人が一斉に振り返る。
「寝込みを襲うとは関心しないな」
そう言って声の主から銀色の線が放たれる。いやゴブリン達にはそれも見えていない。
3人は声をあげる暇もなく地面に崩れ落ちる。
「安心しろ、峰打ちだ」
声の主は手に持っていた刀を鞘に納め、シシャモ達を見る。
「こんなところで寝るとは、なんと警戒心の無い子達だ」
そう言って鞘で2人の頭を軽く小突いて足早に立ち去る。
その衝撃で2人は目を覚ます。
「わ! 暗くなってきてる。ねえ起きてシシャモ!!」
「にゃああぁぁ?」
「起きないと! ほら、夜になっちゃう。宿がとれるならとらないと!」
2人は慌てて立ち上がると町の方へ向け走り出す。
因みにだが3人のゴブリンあの後すぐに天に召され消滅していた。
***
草原から足早に進み町へたどり着く。
魔界の中でも2番目に大きいと言われ魔界の森から近いことから低いLVの者達が多く集まる。
この町に門や兵などと言ったものは存在せず誰でも自由に行き来出来る。
店を出すのだって自由である。
それ故に怪しい店も多いが、皆が凌ぎを削って生きているので思わぬ掘り出し物に出会えたりもする。
奥にいくほど建物が密集し怪しい店が多くなるのは世の常なのか、2人は宿を探し少しずつ奥へ進む。
そしてようやく一軒の宿を取り部屋へ入る。
「ちょっと埃っぽいけど仕方ないよね」
ペンネがハンカチで口を押さえながら窓を開ける。
外の通りが見える。大分空は暗くなってきたと言うのに人通りが多い。
「賑やかな町にゃ、なんかこう言う町の明かり見ると出かけたくなるにゃ」
妙にテンションの上がるシシャモをペンネが嗜(たしな)める。
「明日はこの町の先がどうなっているのか調べるにと、地図があれば買うしテントも探さなきゃと忙しいから早く寝ようよ」
「ペンネは真面目にゃ」
そう言いながらもシシャモはシャワーを浴びる準備を始める。
「ねえシシャモ、一緒に入る?」
ペンネがなんだかモジモジしながら聞いてくる。
「い、いえ……狭いし1人で入った方が良いにゃ」
何か身の危険を察知しシシャモは断る。
残念そうにするペンネだが部屋に1つしかないベットに2人寄り添って寝たときに、高ぶる胸の鼓動に友情を感じながら眠るのであった。
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