その2 魔界の旅スタートにゃ!

 ズドーーーーン!!


 城の天井をぶち抜き2人が落雷と共に突っ込んでくる。


「うにゃーー今回のは酷いにゃ……」

「あうぅぅぅ」


 まだ目を回している2人にペンネの父ダンジェロの声が響く。


「勇者シシャモよ。よく来た!」


「ペンネの父さん大丈夫かにゃ? なんか勇者とか言ってるにゃ」

「う、うん多分ダメだと思う」


「ごほ、オホン! 勇者とその仲間ペンネ……ペンネぇぇーー」


 ダンディなおじさんが突然泣き崩れる。正直めんどくさい。


「ペンネえぇぇぇ何でお父さんを置いて行くんだああ。何処へ行くんだああぁぁ」

「あ~あ~、どうするにゃこれ」


 泣き崩れるダンジェロをペンネがたしなめる。


「お父様どうしたのですか? 私はこうして無事に帰ってきています」


 涙目で娘のペンネを見つめダンジェロが口を開く。


「ペンネお前も鬼畜猫の仲間として全魔王に宣戦布告したのだな。

 こうなった以上仕方ない。お前とその鬼畜猫を支援してこの戦いに終止符を打つしかないのだと、世界の声が私に直接語りかけたのだ」


 世界の声に思い当たる節のあるシシャモがしらけた顔になる。横目でチラリと見るとダンジェロの足元にカンペが落ちていた。


(あの性悪女神がなんか入れ知恵したにゃ、下らない事ばかりするにゃ。めんどくさいし早く終わらせるにゃ)


「あのーーそろそろ話進めていいかにゃ?」


「久々の娘との再開と言うのに水を刺すとはやはり鬼畜猫」


 ダンジェロが睨んでくるが、シシャモは気にせず視線を流す。


「はいはい何でも良いにゃ、お前もなにかしたいんなら早くやるにゃ」

「この森を抜けて谷へ行く。そして町へ行く。情報収集する。以上だ」

「投げやりもいいとこにゃ、これに拒否権はないのかにゃ? 正直行きたくないにゃ」


「えーーとな」


 ダンジェロがカンペを確認する。


「シシャモの家族は私、森の魔王が守るから、お前がこの森から離れた方がみんな安全だぞ! だそうだ」


 ダンジェロはもうカンペを隠す気もない。


「家族を人質に取られてるみたいで気に食わにゃいが行くしかないのかにゃな」

「完全にあの女神さんにはめられてるよね」


 シシャモとペンネは諦めた顔をする。


「それでだ、お前たちは何が必要だ。武器か? 装備か?」


 ダンジェロの問いにちょっと考えて答える。


「とりあえず装備は要らないにゃ。回復アイテムとお金が欲しいにゃ」

「私も同じでお願いします。後テントがあると助かるのですけど、お父様持っていますか?」

「あれは人間の簡易宿泊施設だったか、流石にないな」

「そうですか、野宿の際、雨風が凌げると助かるのですが、町に行って探してみます」


 ペンネの野宿と言う言葉に反応したのか涙目になるダンジェロ。

 めんどくさくなると思ったシシャモはがペンネを引きずって入り口に向かう。


「あたし達は下で待ってるにゃ。アイテムとお金は使いの者に任せてくれにゃ。お前は来るにゃよ!」


 そう言って逃げるように去っていくシシャモ。

 その背中を見ながらダンジェロは歯ぎしりをする。


「ペンネと会える時間は終了と言うことか。次も無事に会いたければ言うことを聞けと。

 まさかペンネも巻き込んで全魔王に宣戦布告するとは……これでは我が家に置いていてもペンネの命だけでなく姉2人の命も危ない。強く、したたかな鬼畜猫と一緒の方が安全なのか……

 本当に何処までも恐ろしい奴だ」


 ***


「ふーー人の親を悪く言う趣味は無いにゃ、でもペンネの父さんはあんな感じなのかにゃ?」

「うーーん、いつもは威厳のある森の魔王らしい振る舞いだけど。私たちの事になるとあんな感じになるの」


 ペンネの言葉にあの父親が子離れするのは大分先になるだろうなぁとペンネに同情する。


 城の者がお金と回復アイテムを運んでくる。回復アイテムを何となく今後アイテムを入手したときの為に隙間10個分開け入れる。

 そんな保証はないけど、何となくやってしまう。


「シシャモ行こう! まずは谷。

 あそこを越えれば町があるからそこで色々買って情報集めだね」


 ペンネが嬉しそうにシシャモの手を引く。


「なんにゃ? テンション高くないかにゃ?」

「えへへ、だってシシャモと旅に出るんでしょ。楽しみに決まってるよ!」


 テンションの高いペンネに引きずられるようにシシャモも一緒に歩く。


 こうして魔界の魔王討伐の旅がようやく始まる。

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