魔王討伐に向けて──まずは仲間が必要かにゃ!──

その1 旅準備にゃ!

「性悪女神?」


 窓際と麻帆が同時に聞く?


「シシャモさん、人のことを悪くいってはいけませんよ。

 失礼しました。わたくし『可愛い』を司る、可愛い女神 スピカです」


 長い静寂が訪れる


「……」


「ぷっ……」


「だれ! 今笑ったのは」


 スピカが睨む。


「シシャモさん、あの方は頭が可愛そうな人ですか?」

「こらこら! 聞こえてるからね。こそこそ話すポーズだけで声のトーン落としてないからダイレクトに聞こえてるからね!」


 麻帆がシシャモに訪ね、ペンネは肩を震わせ下を向いたまま顔をあげない。


「お前か! 今笑ったのはお前なのか!」


「はいはい、元が性悪女神なんだから無理してもすぐバレるにゃ。いっそ『性悪女神スピカ』の方が潔くて売れるにゃ」

「いや売れるってどこによ」


 ペンネんい絡むスピカをシシャモが引きずって離す。


「そんなことよりこっちになんの用にゃ」


 シシャモの言葉でスピカが我に返る。


「失礼しました。窓際様、麻帆様に説明とお願いがあって伺いました」


 そう言ってシシャモの魔王討伐についての説明が始まる。


「それでお願いなのですが、こちらの世界、アースのジャパンに間違いなく魔王がいるはずなのですが、気配が微弱になりすぎて捉えれないのです。

 このシシャモ達が旅に出れるよう窓際様達に、旅と装備の支援をお願いしたいのです。勿論ただとは言いません」


「うーーん、装備の支援はやれそうだけど、移動か……車は勿論なんだけどリニアや飛行機も身分証明書がないと乗れないんだよね。となると徒歩なんだけど、こことの往復がなあ、効率悪いんだよね」


「所長、空間移動システムは使えませんか?」

「うーーん、あれは親機に向かって一方通行にしか行けないし、親機を起動しないと使えないから微妙だよね」


 麻帆がスピカの方を見る。


「スピカさん。さっきの説明で落雷による転送を行っていると言われてましたが、それはシシャモさんが行った場所に限る事は出来ませんか?」


「あの転移魔法は、行ったことがある場所にしか行けないですからこの場合シシャモが行った場所に限られます。シシャモが指定してくれればそれは可能です」


 スピカの答えに麻帆が満足したように窓際に提案する。


「決まりです。子機であるピンをシシャモさんに持ってもらい、こちらの世界を回ってもらうんです。

 こちらの支援が必要なときは空間移動システムを使ってもらえば良いのです。

 後は通信機を持たせてお互い連絡が取れれば完璧ではないでしょうか」


「うん、それならいけそうだね。じゃあさっそく持ってこよう」


 ラボに帰る窓際をスピカが、ホッとした表情をして安堵のため息をつく。


「ふーー、話が分かる人たちで助かりました。ここが転送ポイントに選ばれたのも意味があったのですね」


 そう呟くスピカに麻帆が訪ねる。


「さっき爆発が問題ないと言ってましたがその理由はなんでしょうか?」

「ああそれはね、こっちの世界でシシャモが戦闘を開始した時点で周囲に被害が及ばないように結界を自動で張るようにしてあるんです。ただ不意打ちとか、突発的な戦闘には結界の展開が間に合わないでしょうけど」


「色々便利なことが出来るんですね。魔王も女神様達が討伐することは出来ないんですか?」


 麻帆の質問にシシャモが反応する。


「そうにゃ! お前が管理してるならお前がやるにゃ! そうすれば、あたしのお昼寝ライフ復活にゃ!!」


「えーーとねそれは無理。だって攻撃能力まったくないもの。使えるのは補助系ばかり。武器も使えないわよ。出来るなら自分でやるって」


 うんざりしたように話始める。


「神様も大変なのよ。管理するくせに自分じゃ大して何も出来ず、救世主を待つだけ。

 実際シシャモみたいなのが現れる方が珍しいんだから。私は運が良いと言えば良いんだけどね」

「ならもっと感謝しろにゃ!」

「はいはい、感謝してますよ」


 スピカの適当な返事に不満な顔をするシシャモの元へ窓際が戻ってくる。


「これを持ってて、これはシシャモくんに渡して、こっちの通信機はペンネくんの方が良いかな」


 そう言って1メートル近くある杭みたいなものがシシャモに渡される。


「大きいにゃ、ポケットに入るにゃ」


 そう言ってシシャモがポケットに杭の先端を突っ込むとスルスル入っていく。


「へえーー凄いねそれ。何か秘密の道具使うタヌキみたいだね。亜空間へ収納ってことかな?」


 窓際は興味津々だ。


「あたしは40個までアイテムが持てるにゃ」

「わたしは70個です」


 シシャモとペンネが答えに窓際が興奮した表情を見せる。


「個人差もあるんだ! ますます不思議だね。あーー研究したいなそれ。バトルスーツの収納場所問題も解決しそうなのにな。

 おっと本題。その子機を持ってる状態で僕たちが親機を起動したらこのラボにある装置まで一瞬で転送されるって仕組み。

 だから転送したいときはその通信機で連絡してね」


 そう言って窓際がペンネに通信機の使い方を教える。


「これでこっちの旅は始めれそうね。次はあっちだね。あっちは魔王を片っ端から倒せば良いから簡単ね♪」


 スピカが楽勝な感じで言う。


「お前軽すぎにゃいか? あっちの全魔王っていったい何人いるにゃ」


 シシャモの質問にスピカは両手を軽くあげて肩をすくめ無責任な感じで答える。


「さあ~? 把握してないわよ。だって数の変動もあるし出来るわけないじゃん」


 何か言おうとしたシシャモを遮ってスピカの話は続く。


「じゃあ、あっちへ行きましょう。こっちのスタートは次までに準備するとして、えーーと森の魔王の所へ行くわよ。あそこで準備してるはずだから」


「準備? お父様達がですか?」


 ペンネが質問したことで何か思い出した見たいで手をポン! っと叩く。


「そうそう、ペンネちゃん。あなたをシシャモの仲間に認定したわよ」

「シシャモの仲間!!」


 ペンネが笑顔を咲かせる。


「うん、だからね。シシャモとペンネが魔王供をぶっ潰す! って宣戦布告し直したから、ね♪」


「!?」


 驚くペンネと隣のシシャモに雷が落ちる。

 それを見送ってスピカが微笑む。


「次に来るときまでに準備をお願いします。出来ればどの辺りに行けば良さそうだとか分かると助かります。では、また」

 そう言い残しスッと消える。


「はあ、なんか忙しくなるね。どこへ行けって言われてもね。そもそも魔王が何か分からないからなあ。まあ何か調べてみようかな」


 窓際はラボへ向かうが麻帆はペンネが消えた後をじっと見つめている。


「次までに絶対完成させます! ペンネさんを完璧にするんです!」


 かなりハイテンションの麻帆が空に拳を突き上げる。

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