その10 森の魔王撃破?にゃ!
2人はシシャモの家族に見送られ出発する。
ペンネはシシャモのペースに合わせて地上から浮いた状態でパタパタ忙しそうに羽を動かしている。
「それ疲れないのかにゃ」
「一気に飛ぶよりは疲れるけど大丈夫。心配してくれてありがとう」
「し、しし心配とかしてないにゃ。早く行くにゃ!」
この2人、年齢15歳=友達いない歴。友達を始めたばかりでぎこちない。
魔界の森と言うだけあって道中何度かモンスターとエンカウントする。その度シシャモが変身をして蹴散らしていく。
「ねえ、シシャモ。私ミケ族って弱い魔物だって聞いてたんだけど違うんだね。それにその変身? それもミケ族のスキルかなにかなの?」
休憩中にペンネが訪ねてくる。ペンネが疑問に思うのも仕方がない、なにせミケ族が弱いと言うのはかなり有名であり、当の本人達も認めている話である。
それはシシャモも例外なく認めている事実である。
「そうにゃね、あたしもよく分かんないにゃ。アースとか言うところで窓際、麻帆って人達にもらったにゃ」
「アース?」
「なんか、星がどうとか、じゃぽんがなんとか……忘れたにゃ」
ペンネが思考を巡らせてみるが、シシャモの記憶が曖昧なので当然だが答えは出ない。
「そろそろ出発しようと思うのにゃが、休めたかにゃ?」
「うん、大丈夫ありがとう」
シシャモが伸ばす手を取って立ち上がる。色々疑問はあるけどシシャモが優しいから良いやと考えるのをやめてしまう。
***
森の景観を壊すことなくそびえる森の魔王のお城。壁や塀には蔦が絡みお城を森と同化させている。その蔦の長さが時間の流れを感じさせる。
そんなお城の門の前に2人はようやくたどり着く。
「ここ、ここが私の家だよ。早く行こう」
「はにゃーー大きい家にゃあ」
手を引かれるシシャモの口は間抜けに開いていた。
ペンネが門番に話しをすると直ぐに通され、城の中を案内される。
一番奥にある王の間に案内されこの城の王、フェデリーニにと謁見する。
大きな扉を開けると王の玉座に座るダンディーなおじさんが座っていた。
横にはペンネのお姉さんと思われる女の人が2人並んでいてシシャモを睨んでいる。
「私の名はダンジェロ フェデリーニ。お前は何用で私に会いに来た」
容姿にあった渋く威厳のある声が響くと流石のシシャモも緊張してしまう。
「ダンジェロ様、あたしはシシャモにゃ。今日は誤解を解くのと、お願いがあってきましたにゃ」
やったこともないけど深々とお辞儀をするシシャモ。ダンジェロが何も言わないので話を続ける。
「あたしは魔王を討伐しようとか思ってませんにゃ。あれは、性悪……何かの間違いにゃ! 何かは知らないから聞かないで欲しいにゃ」
「お父様、聞いてシシャモは良い人なの! お父様を討伐しようだなんて思ってないの。本当よ信じてあげて」
ペンネも必死に訴える。その姿を見ていたダンジェロは静かに口を開く。
「そうか、分かった」
「流石にゃ、この短い説明で理解してもらえるなんて、来て良かったにゃ」
ダンジェロの返答にシシャモとペンネが喜びを分かち合うが、話は続く。
「ペンネ……辛いだろう。そこの鬼畜猫に言わされているのだな。
鬼畜猫が執事のアルデンテを笑いながら爆死させたと報告が上がってきている。
お前が生きてて嬉しいが、人質にされ交渉の道具にされる屈辱を受けさせてしまった父を許してくれ」
アルデンテの話の辺りに思い当たる節がありありのシシャモは、しっぽの毛を逆立て、汗が垂れる。
焦る気持ちを押さえ必死に弁明を試みる。
「いや、あれはその、突然襲われたから仕方なく……それに笑ってた訳じゃなくその、にゃはははって技名にゃ!
それにあたしはのんびり過ごしたいだけで……そう家族と平和ににゃ!
ほら、ダンジェロ様もペンネと平和に過ごしたいよにゃ?」
ダンジェロはシシャモの言葉に益々渋い表情になる。
「ぐぬぬ、自分の家族の平和を保証すればペンネの命は取らないと言うことか。私と娘が平和に過ごしたければその条件を飲めということだな」
悔しそうに歯ぎしりをするダンジェロの横で、涙を流しながら睨む姉二人。
「あれ? なんかおかしい方へ向かってないかにゃ?」
「う、うん。どうしよう」
戸惑う2人の頭上でゴロゴロ空が鳴り出す。
「あっ! まずいにゃ」
「えっ、どうしたのシシャモ?」
ドーーーーーーン!!
「ああ、最悪のタイミングにゃあああぁぁぁ」
「きゃあああああぁぁぁ」
落雷と共に2人は消える。
「転移魔法が使えるだと!?」
目の前で起こった事に驚きの色を隠せないダンジェロにペンネの姉が問いかける。
「お父様、これからどうするおつもりですか?」
「あいつの家族の安全を保証するしかないだろう。最後のペンネの悲鳴を聞いただろう。我々の選択肢は1つしかないのだ。
私の負けだ。奴は戦闘力の高さだけでなく頭も良い。
全魔王に宣戦布告するのは伊達ではないと言うことだ」
ペンネ達が消えた場所を悔しそうに見るダンジェロの目に涙が光る。
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