その5 ロボット(てなんにゃ?)にゃ!

 シシャモはラボの奥にある資料室に案内される。そして始まる映像資料の観賞会と窓際による講義。


 勿論ネコは寝る。


「長いにゃ、寝たら起こすのやめてほしいにゃ。結局何が言いたいにゃ」

「簡単に言うとこのアースでは動物はほぼ全滅。人間が管理する人工的に自然を再現したエリアにしか生息してないんだ。犬や猫などの愛玩動物は身近にいるけどね。

 この動物達はねエリアごとに──」

「ふーーん」


 いちいち説明が長い窓際に対して、興味が無いのを隠そうともしないシシャモの態度はむしろ潔さを感じさせる。


「それよりベルトのこと知りたいにゃ」


 興味が無いのを前面に出しベルトの話しに持ち込む。流石に窓際もシシャモに意図を読み苦笑いをしながら頭を掻く。


「興味ないかぁ、仕方ない。

 そのベルトはね。フロッピーディスクに記録された情報をベルトで読み取り時空空間転移システムにより収納されているバトルスーツを呼び出し装着させるものだよ」


 眠そうなシシャモを置いてきぼりにして再び窓際は止まらない。


「そのスーツは特殊合金で編んでいって銃弾や刃物を弾くし、衝撃に強く耐火、耐水、電気にも多少の耐性もを備えている。

 何より注目すべきは装着者の力とスピードを4倍にすることだよ。これには電気信号による──」


 眠りかけていたシシャモが目をカッと開いて窓際の話を遮る。


「長いにゃ! 簡潔に言えにゃ。力とスピードがどうとかじゃなくて、簡単にステータス4倍補正にゃ」

「ステータス?」

「そうにゃ、ステータスの数値とスキルの方にも4倍補正がかかってたにゃ。今あたしがLV.3だから変身時は単純にLV.12のステータスにゃ」

「ごめん、シシャモくんLVとかスキルとかってなに?」

「にゃ? ステータス画面開けば書いてるにゃ。えっと左上にある○を開け! ってやるにゃ」

「左上?」


「?」を飛ばし合う2人に麻帆が話に割り込む


「あーーいいですか? 2人の話聞いてると恐らくですけど、終わりはこないと思います。

 住む世界が違うので常識も違うと言うことで今は話をまとめましょう。

 今後、時間をかけて情報を共有し擦り合わせた方がズレや誤解は少なくなると思います」

「麻帆くん良い事言う! とりあえずこっちの世界を見て知ってもらおう」


 そう言ってラボの外にシシャモを案内する。

 玄関を出てすぐ目の前に海が広がる。

 ラボの裏手の下の方には工場地帯が広がりあちこちから煙が出ている。配管が迷路のように入り組んでいるのが確認出来る。

 資材を運ぶ車型の機械が忙しく行き来している。

 このラボは工場地帯から少し離れた小高い山に建っており、遠くには住宅地らしきものが見える。


 シシャモには分からないが、土地に対して海が以上に低い。これはこの地域が海面よりかなり高い位置に作られていることを示す。

 

 かつての戦争による環境破壊の影響で海面が上昇。大半の大陸が沈んだ為、元の大陸の上に人工の大陸を作ったのである。山以外の平地はだいたい人工の土地で作られている。

 

 元は47都道府県あったジャパンも現在12都道府県に減っている。

 因みにここまでの説明、窓際によるものだがシシャモには理解できていない。


「あれなんにゃ? ロープでなんか引っ掛けてぐーーってやってるのにゃ、どうやって動いてるにゃ? 魔法にゃ?」


 未知のものに興奮気味に質問するシシャモは子供の様にはしゃぎ質問を次々にしている。


「あれはクレーン車、動力は電気だよ」

「へぇぇ、くれーしゃかにゃ。電気と言うことは雷の魔法かにゃ」

「さっきから魔法って言ってるけどシシャモくんは魔法が使えたりするのかい?」

「使えないにゃ、あたしは物理特化にゃ。LVが上がれば覚えるかもしれないけどにゃ」


 シシャモの『魔法』と言う言葉に興味津々な窓際。


「へえ、魔法がある世界なんだね。その原理が知りたいな。

 それに魔法って聞いたら紅葉ちゃんが喜びそうだな。後、麻帆くんもね」


 スッとシシャモの背中に凄いオーラを放ちながら麻帆が立つ。


「シシャモさん、魔法少女はいますか?」

「魔法少女? 魔女とかじゃなくてかにゃ?」

「いえ、魔法少女です。なにかが濁って魔女化したものに用はありません。魔法のステッキとかで変身する魔法少女です」

「えっと会ったことないからわかんないにゃ」

「そうですか、やはり作るしかないのでしょうか……」

「作る? なんか狂気を感じるにゃ」


 そんな話をしている3人の頭上にバタバタと大きな音が近づき、それと共に立っているのも辛い位の強い風が周囲に荒れ狂う。


「なんにゃ? 風魔法かにゃ?」

「ち、違う! ヘリだ! なんでこんな低空飛行を」

「所長ひとまずラボへ」


 避難しようとする3人の上からコンテナが落ちてくる。


「さっさと逃げるにゃ!」


 シシャモは窓際を蹴って玄関の入り口にいた麻帆ごとラボに押し込む。自身は蹴った反動でラボの外側に出る。


 地面が揺れるほどの衝撃と土埃をあげラボの玄関とシシャモの間にコンテナが落とされる。


「にゃ!?」


 嫌な予感を感じシシャモは後ろに飛び下がる。


 コンテナの中から轟音と共に複数の穴が開き何かが飛んできて、シシャモのいた地面に土埃を上げ穴を開ける。


 コンテナの外側が倒れ中から高さ2メートル程、車の下に箱形の体と2本の足、尻尾みたいな物が付いており、手はガトリングガンになっている。

 色々な機械を引っ付けてロボットの形にしたようなものが姿を現す。


「にゃんか分からないけど! 変身にゃ!」


 シシャモはロボットに向かって走りながら変身する。


「そして、速攻のこれにゃ!」


 シューーーン! 必殺!


 ベルトのボタンを連打する。


 パパパパパパワーーMAX!!


「にゃーーーーネコキック!!」


 助走をつけてのネコキックを受けてロボットのボディがへこみよろけるが、尻尾のようなものを地面に突き立て転倒を防ぐ。


「あれ? 効かないにゃ。必殺なのにおかしいにゃ?」


 弾丸を避けながらネコパンチと必殺キックを繰り出すが、ロボットのへこみが増えるだけだった。


「固いにゃ、何か方法を考えるにゃ」


 ステータス画面を開く

『スキル』

『お昼寝』……(1分間に+3体力回復 ※夜の睡眠では効果を発揮しない)


『跳躍』……(自身の跳躍が1.5倍上がる)


『ネコの顔洗い』……(明日の天気を占う)


『変身』……(ステータス・スキル補正 パワードスーツ着用時4倍 ※ベルトの空間収

 納可能)


『固有技』

『ネコパンチ』……(通常パンチの1.15倍の威力 ※連続3回まで効果発揮)


『ネコキック』……(通常キックの1.2倍の威力 ※一撃のみ効果発揮)


 自分のスキルを見ながら打開策を考える。


「よし! 分かんないにゃ!」


 シシャモは賢いが基本おおざっぱな性格である。


「偉大な魔法使いが言ってたにゃ! レベルを上げて物理で殴れってにゃ!」


 そう言ってロボットへ向かって走り出す。


「なんか高く飛んで上からドーーンって行けばどうにかなるにゃ! ついでにクリティカルが出れば完璧にゃ!」


 スキル『跳躍』を使用しての大ジャンプ。

 いつもより遥か高く飛び上がり、ベルトのレバーを引く。


「ネコ キーーーークにゃ!」


 物体の落下と最新科学によるパワードスーツの力にステータスの数値とスキルが合わさった瞬間、奇跡は起きる。


 シシャモの蹴りはロボットを真ん中からへし折るようにめり込んでいき、鉄の塊が悲鳴をあげ始める。

 頭上に『クリティカル』の文字


 バキバキと音をたてロボットは半分に折れ爆発する。


 その様子をヘリから見ていた者がいる。


「なんだあれは? 計算上あの高さからのキックでも、衝突安全ボディーは耐えれるはず。あれが勇者……本当に存在するのか……」


 ヘリは飛び去っていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る