第34話:ファーレルへの干渉者
「…………ここは、何処だ?」
何とも形容できない妙な空間に、気が付いたら居た。
「オレ、今まで何をしていたんだったか……、全く思い出せん」
確か家に引き籠っていた事は覚えている。定職にも就かず、そのまま40歳を迎え、ほぼ毎日インターネットやゲームなどに勤しむ日々を過ごしていた筈なのだが……。
「……明らかに家じゃないしな……、そもそも何だこの空間?まるでこの世のものじゃないみたいに……」
少し考え、そこで出た結論、それは……、
「もしかしてオレ……、死んだのか?それにしてもどうして……って別にいいか、そんな事は。ホントに碌な人生じゃなかったな……」
大学を卒業して以来、就職活動も失敗してそのまま引き籠る事数十年、何か成し遂げるといった事もなく、人知れず死ぬ……。何の為の人生だったのかと自嘲していると、
「ああ、また誰かやって来たのか……。全く、まさか神であるわらわまで駆り出される事になるとは……」
奥の空間の一部が光り出したかと思うと、その声と共に何とも形容しづらい存在が目の前に現れる。男か女かもわからない中性的な容姿で、その顔を覚えておけないような不思議な印象を覚えた。その背には神話の天使を思わせるような純白の翼があり……、それでいてそれが自然と調和しているような、何とも説明しがたいというのが最初の認識だった。
「……誰だ、アンタ?」
「この場だけの付き合いとなる其方に一々名乗る必要性を感じぬが……、まあ良い。わらわは『叡智』と『心魂』を司る女神、ソピアーだ。ああ、覚えぬとも良い。どうせ覚えてなどおけぬであろうし、その意味も無い。早速だが、其方には別の世界に転生して貰う」
…………は?何を言ってんだ、コイツ?
正直なところ、「お前、女神だったのか?」とか、「女神ってもっとこう、違うだろ?」とか、色々と疑念を覚える。
そもそもな話……、神って、マジなのか……?頭がおかしい奴が、妙な事を言ってるだけなんじゃ……。
「随分と失礼な奴じゃ。天使どもが手が足りぬというから、仕方なくわらわもやって来たというに……。まぁ、其方も混乱しておるだけかもしれぬから、手短に説明してやろう。まずはじめに……、其方は死んだ」
「身も蓋もないな……。まぁ、そんな気はしてたけどな……」
どうやって死んだかまでは覚えてないけど。
「魂の防衛反応だな。何度も死んだ時の事を思い出すのは辛いであろう?余程の事が無い限りは、今の其方のように、その時の事は覚えておらん筈だ」
!?コイツ……、オレの心を、読んだだと!?
「……仮にも神であるぞ?そんな事出来て当然だ。まあ良いわ、話を戻すぞ。其方は死んだが……、本来まだ『向こう』での修練が全く足りておらぬのだ。従って、天国と地獄、どちらに行くかも定められぬ状態という訳だな」
「……天国?地獄?」
オレが聞き返すと、この自称女神とかいう奴が、
「其方も『向こうの世界』で聞いた事があるだろう?生きとし生ける全ての存在は、死した時にその魂を閻魔大王によって判別されるのだ。だが、其方はそれを判別される以前の問題で、本当はまだこちらに来る運命ではなかったのだ」
「……それってつまり、そっちの手違いで死んだって事か?」
なんかこの流れ、聞いた事あるぞ?
そんな風に感じながら、オレは目の前の女神に問い掛けると、
「我らの手違い?何を言うか、其方が勝手に死んだのだろう?今回、そんな魂が非常に多いのだ。普段は全て天使どもが魂を迎えにいき、その案内をする責務を負っておるのだが、如何せん手が足らんというので、わらわのような高等な神までも、こうして駆り出されておるという事だ」
「いやいや、こっちだって死にたくて死んだわけじゃないぞ!?でも、さっき何か言ってたよな?別の世界に……転生して貰うだと?」
まるで、某小説でありそうな話が出てきて、オレはワクワクする心を出来るだけ隠しながら聞いてみる。
これは、アレだろ?貴方は手違いで死んでしまったので、好きな世界に転生させましょう。死なせてしまったお詫びにチートじみた
そんな期待をしていると、女神は溜息のようなものをつきながら、
「転生して貰うとは言ったが……、其方の考えているようなものにはならんぞ?其方が今までいた世界は、ある意味危機的な状況を迎えておってな?其方の肉体も燃やされてしまったし、そうなると別の世界に転生して貰うしかないのだ。それを伝えに来たのだが……」
「だから転生ってあれだろ?如何にもファンタジーな世界に行って、素晴らしい
むしろそうじゃなかったら怒るぞ?手違いで死なせやがった事を訴えるぞ?駄女神って周りに広めるぞ!?
「……そんな事をしてどうするのだ?だいたい、其方は今の自分がどういう状態なのかわかっておるのか?」
「う、煩いなっ!いいから早く転生させろよ!!そんでもって圧倒的な力もついでに宜しく頼むなっ!!さもないと、アンタが駄女神だと訴えて……」
「…………其方の魂、完全に消滅してやっても良いのだぞ?」
「すみませんでした、少し冷静さにかけてました」
こ、こわっ!!何だ、今の威圧感!!ホントに消されるかと思ったぜ……。
「……全く。確かに天使どもも手を焼く訳だな。まぁ、こんなのばかりとも思えぬが……」
「おい、オレをこんなのって……」
「よいから其方は黙っていろ。本当に消滅させるぞ」
「ごめんなさい」
……ク、クソ……、こんな筈では……。
「其方が他の世界をどう捉えておるのかは知らぬが、
「オレは退屈な世界じゃ満足できなかったんだよ!魔法も何もないつまらない世界で、オレを測れる訳ねえだろ!!」
そうさ、あんな世界でオレを測ろうなんて愚の骨頂だぜ!オレという器は……、もっと冒険的な世界でだったら発揮できる筈だ……!
そんな情熱を込めて、女神を睨みつけるようにしていると、
「……普通の者はみな、今までいた世界とそんなに変わらぬ世界へと転生する。所謂
「『作られた世界』だと……?」
……なんだソレ?新しい世界って事か?
そんなオレの疑問に応えるように、
「其方たちの中には、書物に物語を空想する者がおるだろ?それは自分が考えたように見えて、実は何処かにある別の世界に接続しているのだ。それこそ其方の言っていた、一種の
「……それは『二次元の世界』のものが、実は現実に存在する世界だと言いたいのか……?」
オレの好きなゲームやアニメ、漫画の世界なんかも、全て現実に存在する……?流石にそれは無いだろ……。例えばあのドラゴン〇―ルなんかの世界が現実にあるとは思えないしな……。
訝し気に問い掛けたオレに対し、目の前の女神は、
「信じるかどうかは其方が決めよ。一々証明してやろうとも思わぬ。どの道、こう説明してやれば行きたがる者は居なくなる。『其方たちの知る物語とやらの人物たちが居なくなった世界になら転生する事が出来るがどうする?』と伝えたらな」
「…………は?」
……ちょっと何言ってんのかわからない。そんな感じで頬けているオレに、
「要は、その『作られた世界』に接続した者は全て『過去』の世界での出来事なのだ。その世界へ行こうとしても、既にその者たちのいない世界へと行く事になんの意味があると、まあこんなところだな」
「ちょっと待て、さっきの理屈だとゲームやアニメの世界は『現実に実在する』とか言ってたな?その中にはドラ〇もんのように、タイムマシンかなんかで過去未来に自由に行き来する話だってあったんだぜ?過去には行けないって言ったけどよ、その世界では時間を遡ったりしてるって事は、過去に行ったり出来るって話にならないか?」
矛盾だらけじゃないかと女神に聞いてみると、少し感心したような様子で、
「ほぉ……、少しは頭もまわるようだな。時間の操作、時間の遡行は時空間を侵食する行為であり、神としてはその領域を禁止させたいところだが……、どうしても世界によってはその次元まで科学や魔法が発展してしまうケースがある。……正直、この話は複雑で長くなるから置いておきたいところだが……」
「……ところだが?」
先を続けるように促すオレに、女神はひとつ息をつくと、
「長くなると言っておろうに……。簡単に言えば、わらわ達、神もその矛盾については認めておる。神界において時間は一定と定め、どの世界、どの次元から死したとしても、この場所に訪れる事となってはおる。今、其方がここに居るようにな……。しかし、こうしてわらわが対応しておるように、同時に他の魂を相手取る事は出来ん。その順番において、どうしても前後で時間の概念が出てきてしまうのだ。『時』を司りし女神ノルンも、過去だけでなく未来が存在する事は暗黙の了解で認めておる。この先の未来がどのように続き、存在しておるかを理解しつつも、あくまでこの場で対応している事を『現在』と位置づけ、その矛盾についてはあえて考えないようにしておるのだ。つまり……」
「……つまり、早い話が転生するにしても『過去』にはいけない、と事か」
その通りだと答える女神に、オレは考える。色々ツッコミどころはあるが……、過去や未来の世界には行けないものと理解した方がよさそうだ。
ゲームとかの世界に行けるってんならそれもいいかと思ったが、その話を聞いて選択肢を捨てる。だったらやっぱり、剣や魔法のある見知らぬ異世界しかないな。そして……、
「……やっぱり、チートな力は絶対に必要だな……。なんか無いのか?そんな
「…………まだそんな事を言っているのか、わらわとしてはさっさと転生する先を決めて欲しいのだがな。後もつかえておるのだ。……まぁ、全く無い訳ではないが、お薦めはできん」
あるのか!?だったら、早く言えよこの駄女神め……!
「本当に消滅させてくれようか……?はぁ、もういい……、一応聞いておくが覚悟はあるのだろうな?」
「覚悟?」
女神ソピアーは一息つくと、話を続ける。
「……其方のような未熟な魂を調整するには相応の代償が必要となる。其方が今まで生きてきて溜めていた魂の修練値、それを使用する事で修練値に応じた調整が出来るようになる。このようにな……」
すると、オレの前の空間に何やらデータのようなものが映し出される。なんだ……これは……。
「それは、『
右上の数値っていうと……、この『80496』ってのがそうか。これが多いか少ないかはわからないが……。
「其方の年齢でいえば圧倒的に少ないな。全く……、今までどう生きてきおったのか……」
「それで?これをどのように使うんだ?」
「その前に……、本当に良いのか?其方はこの修練値があまりに低すぎるという事で転生するのだぞ?その修練値を消費し、それでまたここに来る事となったら……、良くて永久に地獄行きで、最悪の場合は魂の消滅もあり得る」
……さっきから散々脅すように言っているそれか。
「そんな生易しいものではないぞ?なにせ、魂の消滅は、自己の完全喪失。本能がそれを拒む究極の罰だ。ちょっとわらわが本気で其方を消滅させようとしてやろうか?そうすれば、嫌という程わかろうが……」
「いや、しなくていい……。ヤバそうなのは十分わかったからな」
目の前のこの女神とやらの存在感みたいなもんが、おかしなくらい膨れ上がっている事からも、オレ自身が酷く消耗していくのがわかる……。このままいけば、自分というものが無くなってしまうのではと、本能というのだろうか、ソレがオレの中でガンガンと警鐘を鳴らしていた。
こんな規格外な奴は放っておいてと……、おっと、まだこの『
「魂の消滅とやらは後で考えるから取り合えず置いて置くとして……、コレ、どうやって使うんだよ?」
「かるく考えおってからに……。まあ良いわ、後で後悔するのは其方だしな。使い方?そんなものソレで自分で調べよ。さっさと振り分けて、転生先を決めて去れ。わらわは忙しいのだ」
自分で調べろだと……?なんてヤツだ、これでも神か?この駄女神め……。
文句を言いたい気持ちを抑えつつ、その表示されたデータを適当に触ってみる。すると某通販サイトのような見慣れた項目が次々と表示され始める。
「これで選択したい項目を選べばいいのか……?だがどうやって……」
「……やれやれ、其方は用途すらわからぬ未知のものを適当に扱おうとするのか?普通はマニュアルなりを取り寄せる等して使い方を調べると思うがな……」
マニュアルだと?オレが
『
消費修練値:0
分類 :
概要 :
……煩いな。イライラしながらオレはその手引きとやらを選択する。新たに項目が追加され、その表示をクリックするように押してみると、一面にそれが表示される。
何々……。面倒だがそれを読んでみると、だいたいこんな事が書かれていた。
・
・
・魂の修練値は、その世界の価値ある物を対価として、相互依存の関係にある。
・
・
・その者の持つ、魂の修練値を越えて、それらを習得、調整、購入する事が出来る。但し、魂の修練値を大幅に越える事が出来ず、マイナスとなった修練値は『
……こんなところか。色々気になるところはあるが、要はオレの魂の修練値とやらを使って様々な力を好きなように得られる、と……。おまけにどんなアイテムでも修練値さえ払えれば入手出来るとも書いてあるし、これもある意味でぶっ壊れのチートな
(……ん?だが、その世界の価値ある物を対価として相互依存にあるって事は……、この場だけしか使えないって
試しにオレは、この『
『"限定"解除~お試しモードから正規
消費修練値:50000
分類 :
概要 :
5万も支払ってしまっては他の事が一気に制限される事となるが……、この
「……"限定"を取り払いおったな。余程消滅したいと見える……。ま、勝手にせい。それを渡した時点でもう、わらわから言う事は何もない。さっさと準備をすませ、転生先へ立ち去るがいい……」
「そうさせて貰うよっと……」
そこでオレは『
気を取り直して、ブクブクに太った体型を標準に戻し容姿も整えて、と……オッドアイっていうのもいいかもしれないな。オレだけのハーレムを作る上で女を魅了する
ああ、今の記憶も転生先に引き継ぐ必要もあるが……、と思ったがこれは
……『
さて、あとは……。そう思った時、
『……お願いです……私たちをどうか、お助け下さい……!』
次にどんな調整を施そうかと思っていた矢先、無音のこの世界に可憐な声が何処からか聞こえてきた。
「な、なんだ……、今の声は……!?」
「……そうか、もうそんな時期となるのか……」
驚くオレに、女神は感慨深そうに一言そう呟くと、何もなかった空間に映像のようなモノを表示させる。そこには……、
(うぉ!?な、なんだこのコ……!滅茶苦茶美人じゃんか!姿からして何処かの王女様ってところだろうが……、こんな美女、今まで見た事ないぞ!?)
ウェーブがかかった銀色のロングヘアーを腰のところまで伸ばし、両手をギュッと組み合わせて祈りを捧げる女性が映し出され、オレは彼女から目が離せなくなってしまう。一目惚れ、といってもいいかもしれない。今までゲームやアニメ等の中で見てきたどの美女よりも輝いて見えてしまい、彼女を手に入れたいという思いが次々と込み上げてくる。
「……アンタは、彼女が誰なのか知っているのか?」
「まあの……、この世界、ファーレルは中々特殊なところゆえ、わらわ達も特に気に掛けておる世界なのだ。これはある周期で行われる神々の定めた儀式のようなものでな……」
……神の定めた儀式、だと……?何やら助けを求めているようだが……。
彼女を見ながら女神の話す事を聞いていると、
『……勇者様、
勇者……?まさか、オレの事か……?彼女の呼び掛けに応えようとするも、如何せんその方法もわからない。いや、こちらが聴こえているだけで……そもそも向こうには伝わってはいないような……。
「其方の事ではないわ。ここが神界に近い場所ゆえ、聞こえておるだけの事。この空間におる他の者も同様だろう。これは、現世におる聞く資格のある者にしか届かんのだ。何処の世界、幾人の者に聞こえておるかはわからぬが……、召喚者の望む資格者に届き、心を捉える事でその境遇を理解し、その地へ赴くかを決める事となる。大抵の場合はすんなりと召喚される事となろうが……」
「……この呼び掛けに応えるにはどうすればいい?」
女神の話を聞き流して問い掛けると、呆れた様子で、
「……わらわの話す事を聞いておったのか?其方では呼び掛けに応えられんと言ったのだが……。暫くすれば、召喚すべき勇者へと繋がる事に……」
「だから……!その前にオレが召喚に応じるって言ってんだよ。決めた、オレはこの世界に転生する事とする」
オレがそう宣言する。彼女を見て確信した。オレは、彼女に会う為にここに来たんだ……!
「其方にこの世界は無理だ。未熟な其方の魂が、神格の高いこの世界に馴染める訳がない。悪い事は言わぬ。別の世界にしておくがいい」
「オレはもう決めたんだ。答えるつもりがないなら、勝手にやるまでだ」
グズグズしてたらその儀式とやらが終わってしまう。オレは『
『
消費修練値:10000
分類 :魔法
概要 :対象の事象に干渉し、割り込むことが出来る魔法。古代魔法に分類される。
よし、これだな……。魂の修練値で早速習得するも、何やら詠唱する必要があるらしい。そんな厨ニ病みたいな事をするつもりはなく、ライトノベルなどで大抵ありそうな
NAME:トウヤ・シークライン
AGE :20
HAIR:蒼
EYE :オッドアイ≪ディープブルー&ワインレッド≫
身長:182.0
体重:73.4
魂の修練値 :0
RACE:ヒューマン
Rank:1
HP:268
MP:263
力 :160
敏捷性 :100
身の守り:110
賢さ :155
魔力 :160
運のよさ:77
魅力 :200
古代魔法:
生活魔法:
剣技:
体術:集気法、気功拳、跳躍蹴り、身躱し脚
魔技:魅惑の魔眼
わざ?:煽る、周辺監視、不意打ち、寝る
……中々いいんじゃないか?『
『ファーレルといふ名の世界』で予備知識を得ると賢さが急上昇した。恐らくは世界観を知る事で数値が上昇するのだろう。一般教養も追加されたという事は、記憶が反映されたって事かな?
また、折角転生するのだから名前も心機一転その異世界に合いそうなものに変えておいた。年齢も……20歳になってるし、あれだけ容姿を調整したから魅力も見違える程高い。約15万ほど修練値をかけて他の能力値を振り分けて高くしたのだから、しっかりと役に立って貰うとしよう。
あとは……、前の人生が反映されたからなのか、『世捨て人』なんて舐めた職業しかなれないようだったので、勇者らしい職業を『
また、『ファーレルといふ名の世界』によると、どうもこの世界では転職は変更できる場所に行くか魔法で変えるようだから、一応その魔法も習得しておいた。大した修練値でもなかったしな。
「止めよ!その『
「そんな事はオレの知った事じゃない。……まぁ、アンタの責任になるんじゃないのか?『
「……ハッ!?し、しまった……!そういう事になるのか……!!い、いいから止めよ!消されたいのかっ!?」
消されるのは御免だ。オレはこの駄女神を無視して習得したばかりの『
「クッ……、やむを得ん、ここまで『
「ハハッ、じゃあな駄女神様!『
『
「お、出口のようなもんが見えるぜ!待ってろよ、王女様!!今から勇者様が助けに行ってやるからなっ!!」
こうして、オレはファーレルという世界に飛び込むのだった……。
「……それでしたら一度トウヤ様に鑑定魔法を掛けさせて頂いてもよろしいでしょうか?他人の魔法空間に干渉して、その方が御覧になっている情報を同意を得て確認する魔法なのですが……」
「ああ……、それならば是非……」
やっぱりこの国の王女であったレイファニーよりこう答えたオレだったが、ふと考える。
……オレがブレイバーである事は良しとして、世捨て人であった事や、『魅惑の魔眼』を所持している事まで知られるのは不味いのではないか?
出来れば『
(……これだな、『
『
消費修練値:5000
分類 :魔法
概要 :自身のステイタスにおいて知られたくない情報を覆い隠す事が出来る。但し、例外として隠匿できない情報もあるので注意。古代魔法に分類される。
オレは直ちに『
本当は『
準備が出来たので、オレは王女に鑑定魔法を掛けるようお願いする。彼女がなにやら詠唱している間に、改めてオレは一緒に召喚されたもうひとりの事を伺うと、
(それにしても……、『干渉』が上手くいったという事か。何処からどう見ても、コイツは勇者には見えない。なんでも普通その召喚で起こるような確認とやらも無かったようだし、全然関係ない奴が巻き込まれて呼ばれたってところか)
もし、本来の勇者が呼ばれたというならば、偽者と断じて折を見て始末しようと思っていたが……、こんな頭の薄い小太りのメガネと知ってはそんな気も失せる。本人も勇者ではないと頑なに固辞している事からも、放っておけばその内居なくなるだろう。万が一邪魔になるようなら、その時考えればいい……。
そんな事を考えていると、王女が驚きの声をあげる。自分の能力値を見て驚愕したのだろうが……、オレは「そんなに凄いんですかね……?」とおどけながらも、周りにもそのステイタスを伝える事を了承し、その反応から優越感に浸っていく。
これだ……!この感じ……!!前の人生では味わえなかった、この優越感!!これこそオレが待ち望んでいたものだ……!!
あとはハーレム、だな……。王女は当然加えるとして……、見た目麗しい者は次々とオレのハーレムに入れていきたいところだ。予備知識で得たところ、このファーレルとやらは紛れもなく剣と魔法のファンタジーな世界であるらしいし、エルフやダークエルフ、マーメイドといった種族がいるのだろう。その為にも……、
(……さっき、レイファニーが使ったような鑑定魔法は必要だな。相手に一々了承を求めるのは面倒だが……、いや、もっと使い勝手のいい鑑定魔法もあるかもしれないな……)
ハーレム形成はもとより、人やアイテムを鑑定する
『
消費修練値:10000~100000(熟練度に応じて変化)
分類 :魔法
概要 :対象の生物、物質を鑑定する事が出来る。生物である場合、相手の了承を必要とせずに鑑定出来るが、了承を得た方がより詳しい情報を知る事が出来る。知りたい情報をピックアップする事も出来るが、
あったあった……。今までの魔法には無い熟練度といった項目も出てくるが、消費修練値が大分違うな……。とりあえず相手の事を知れたらいいだろうと思い、1万を消費してオレはこの鑑定魔法を入手する。
(熟練度と言うくらいだから、使い続ければ上がるだろ。さて、早速試してみるか……)
そう思い、オレは人知れず王女に向かって『
NAME:レイファニー・ヘレーネ・ストレンベルク
AGE :20
HAIR:水色がかった銀
EYE :オーシャンブルー
身長 :160.3
体重 :45.2
スリーサイズ:84/56/85
性の経験:
HP:152
MP:438
力 :34
敏捷性 :48
身の守り:33
賢さ :180
魔力 :264
運のよさ:82
魅力 :255
(おおっ!!こいつはいい!!結構いいカラダしてるな……、これはその時が楽しみだぜ……!しかし、まさか処女かどうかまで分かるとはな……)
まさしく、オレが知りたい情報が表示された事に満足する。さっき『
王女の体も含めた情報を知り、にやけそうになるのを抑えながら、王座の間へと付いていったオレだったが、渡すものがあると言われて意識をこちらに戻す。持って来させた宝箱のような物を開かせると……、
(うぉっ!?金貨がギッシリ敷き詰められて……!これをくれるって言うのか!?)
支度金として勇者たちに渡すというおっさんに、流石オレの見込んだレイファニーの父親だな、と内心で褒める。某ゲームの王なんてしょぼい武具とはした金しか渡してこなかったから、それに比べても上々だろう。
金貨の価値は『ファーレルといふ名の世界』によると、前世の世界の換算で1枚およそ3万円程の価値とあったが、目の前のそれは明らかに金貨よりも大きく、恐らくは大金貨というやつに違いない。大金貨だったとしたら、15万円くらいに相当するとあったので、この世界における勇者への重要度、依存度はかなり高いと推察される。
ただ同時にオレだけでなく、このパッとしない小太りのメガネと分けなければならないのかと不満に思っていたところだったが、
「先程、協力は約束致しましたが、それでもトウヤ殿と比べて、私が彼ほど活躍できるとは思えません。ですので……、それは全てトウヤ殿にお渡しして下さい。それに、その金貨は元々召喚された勇者おひとりにお渡しするものだったのではありませんか?」
「それは……確かにそうじゃが……。それではお主は何もいらんと申すのか?」
……前言撤回。このデブメガネ、思ったより自分の立場がよくわかっているらしい。向こうがそういう態度でいるというなら、此方からわざわざ排除に出る必要もない。
「……そこで勇者殿にはそれぞれ侍女をお付けしよう……、ベアトリーチェ!ユイリ!」
王のおっさんの言葉に、スッと2人の女性がやって来る。どっちもレベル高いな……!先程の王女と同様に
NAME:ユイリ・シラユキ
AGE :21
HAIR:紺色に近い黒
EYE :パープルブラック
身長 :164.5
体重 :47.0
スリーサイズ:82/50/84
性の経験:
HP:196
MP:114
力 :79
敏捷性 :182
身の守り:85
賢さ :175
魔力 :96
運のよさ:63
魅力 :148
NAME:ベアトリーチェ・ヴァリエータ
AGE :22
HAIR:紅
EYE :クリムゾンレッド
身長 :176.0
体重 :52.8
スリーサイズ:95/59/92
性の経験:非処女
HP:244
MP:125
力 :138
敏捷性 :123
身の守り:90
賢さ :141
魔力 :100
運のよさ:44
魅力 :145
正直どちらも美人で捨てがたく、いっそ2人ともオレのハーレムにと思った矢先、王からそれぞれに派遣される。案内役という事で付けられたのはベアトリーチェと呼ばれる女だった。抜群のスタイルで、ナイスバディな彼女が付くのはいいが、あの処女の美女も良かったなと思いつつ、挨拶もそこそこにその場はお開きとなった……。
「うーむ……」
「……どうかなさいましたか?トウヤ様」
案内された王城内の一室で、オレは早速王から貰った大金貨を
「いや、何でもない。それよりさっきも言ったが……、敬語はかまわない。何となく調子が狂うからな」
「……ですが」
引き籠り歴30年のオレに他人と交流なんて出来るかとも思ったので、そこは抜かりなく『社交』という
「……まぁ、いきなりやってくれとは言わないから少しずつ慣れてくれ。それで……、これを身に付けろって?」
「はい、トウヤ様をはじめもう一人の勇者様もですが……、此方の世界ではそのような軽装では何があるかもわかりません。最低でも、そちらをお召しになって頂ければと……」
彼女に言われてそちらに目をやると……、鉄製の胸当てに丈夫そうな布で織られた衣服、それに皮の靴と……、あとマントのような物が用意されていた。
「それと、トウヤ様は
「ふーん……、ま、取り合えず貰っておくよ。これは……鉄の剣?」
「鉄よりも強度な物で作られた鋼鉄製の剣ですね。戦う術も既に身に付けておられるようですし、間に合わせで良いので使って頂けると……」
本当に間に合わせだよな……。勇者なんだしもっと強そうな……、それこそ伝説の聖剣とかを持たせてくれてもいい気がするが……。
それでもオレに渡してきた大金貨から見ても、優遇はされているようであるから良しとしておくか。気を取り直してオレは彼女に言われたものを身に付け、装備した後で『
大金貨 1枚 → 魂の修練値 1500
(大金貨が大体500枚あるから……、ざっと75万に換算できるって事か。一応、業は全て無くすことは出来るが……)
それにしたって換算率は微妙だな……。大金貨1枚で日本円で15万円程の価値があるんだろ?1万円で修練値が100くらいにしかならないってどんだけだよ……。さっき習得した『社交』の
取り合えず『業』を返せないと消滅する事になるので、返済しないという選択肢はない。あの駄女神め、とボヤキながら、30万近くまでになっていた業の数値を0にして、修練値が僅かにプラスに転じたのを確認し、オレは一息つく。
最悪、寿命を魂の修練値に加算させるしかないと思っていたから、この大金貨は本当に渡りに船であったと言わざるを得ない。流石は将来のお義父さん、と言ったところか。
オレは『社交』の
「今のは……、トウヤ様は『
「そんな魔法もあるのか……。まぁ、多分似たような物じゃないか?」
別の領域に金貨を送るってところはさ。オレのやっている事に若干驚いているようなベアトリーチェはおいといて、
(どんな奴が出ても完璧に粉砕できるようなものが必要だな……)
そうなるとオレの考えられる限り一番強力なものといえば……、核兵器かな?かといって一発限りの使い捨てにする訳にもいかない。出来れば魔法の様に永続的に使えるものでないとな……。
そんなものがないかと思って調べていたら……、出てきた。
『
消費修練値:100000000
分類 :魔法
概要 :核分裂や核融合反応による放射エネルギーを利用した、破壊、殺傷用の兵器を魔法へと転用したもの。膨大なMPを必要とする。この世界には存在しない独創魔法となる。
…………いちじゅうひゃく……一億?1万円で修練値が100だとしたら……100億円だと!?こんなん購入できる訳ないだろ!何かないのか、もっとお手軽で、威力が少なくてもいいから安いやつは……!!
約200枚の大金貨を消費した為、残された300枚、450000程の修練値で購入できそうなものはないかと検索を続ける。すると……、
『
消費修練値:500000
分類 :魔法
概要 :『核』といっていいのかわからない程、弱体化させた核魔法。威力、範囲共に非常に限定されているが、一応放射能も排出する。1日1回という使用制限もある。この世界には存在しない独創魔法となる。
これか……。一応『業』に換算させれば購入できない事もないが……、本当に効果は期待できるんだろうな?実際に前世で使われていたような、都市丸ごと破壊するなんて事は望まないから、対象をほぼ確実に殲滅するくらいの威力は欲しいのだが……。
色々悩んだ末に、オレは購入する事を決意する。よくよく考えたら、あまりに広範囲に渡ってしまうようだと、魔法を放つオレにまで影響を及んでしまうのは困るし、これだけ魂の修練値を消費するのだからいい加減な威力ではないだろう。
(……結局また『業』を背負う事になってしまったか。さっきまでのように返せない数値ではないとはいえ……)
『
まぁ、手段が存在する事はわかったので、自力で入手するしかないか……。あの駄女神いわく、神格とやらが高い世界であるようだから、そういった物もあるかもしれない。
「……ん?確か持ち物を対価に換算させることが出来るとあったか……?」
「……トウヤ様?先程からいったい何を……?」
ちょっとね……、と彼女には適当に誤魔化しながら、オレは先程渡されて着用している鉄製の胸当てに
『鉄の胸当て』
形状:防具<体>
価値:E → 銀貨3枚ほどに換金可能
銀貨三枚って確か3000円くらいか?二束三文にしかならないなと思いつつ、換金を選択すると自分の着ていた鉄の胸当てが消えて、銀貨へと変わる。それを見てベアトリーチェが「えっ!?」っと驚きの声を上げる。
「ト、トウヤ様!?本当に何をしているのですか!?」
「まあまあ……、次はこのマントに標準を当てて、と……」
『封豕のマント』
形状:
価値:S → 大金貨5枚ほどに換金可能
お、こいつはいい。これを換金したら『業』を完済出来るな、と思いながら実行に移そうとして、
「ま、待ちなさいっ!!貴方、さっきから何をしているの!?身に付けた胸当ては!?それにマントもって……、まさか売り払おうとしてるの!?その銀貨はまさか胸当てを売ってしまったって事!?」
「あー、まぁちょっとね……。正直オレ……私にこんな防具は必要ないしさ。伝説の防具とかいうのならいざ知らず……」
敬語が無くなる程興奮している様子の彼女にどうどうと宥めようとするが、
「それでも売ってしまっていい事にはならないでしょ!?それは、あくまで王宮からの支給品であって、貴方の持ち物って訳じゃないのよ!?ましてそのマントは……、もう一人の勇者様にお渡ししている『旧鼠のマント』と同様に、
「そう熱くならないでくれ……。勇者として呼ばれた以上、掛かる経費みたいなもんがあってさ……。だから、このマントみたいな
「だから……!そのマントも貴方のものじゃないの!売り払おうとするならそのマント、こちらに返しなさい!それは王宮で所有している物なのだから……!!」
……煩いな。タメ口をきかれるのは別に構わないが……、ここまであれこれ言われると少し煩わしくなってくる。
「……ああもう、それなら一度レイファニーを……王女を呼んでくれないか?彼女に直接話をするから……」
「『招待召喚の儀』を行って消耗しておられる王女殿下にお伺いを立てるなんて出来る訳ないじゃないですか!?それに呼び寄せろって……、いくら貴方が勇者で、他の世界から召喚されてこられたと言っても、不敬であるとは思わないの!?もう
こ、このアマ……!好き放題言ってくれるじゃないか……!お前らの為に呼ばれてやった勇者のオレに向かって……!いや、待てよ……。こんな時こそ、あの
まさに一石二鳥だと思い、オレは『魅惑の魔眼』を発動させる。普段はもう片方の眼と同じ深い蒼色の瞳が、オッドアイに調整した本来のように紅く輝いている事だろう。
一瞬ビクッと身体を硬直させた彼女を見て、ニヤリと笑みを浮かべながらワクワクしていたのだが……、
「…………今、私に何かした?」
「は?いや待て、効いてないのか!?」
嘘だろ!?結構高い修練値を払って手に入れた
この後のお楽しみに胸を躍らせていたのも束の間、一転して『魅惑の魔眼』が通じなかった事に、詐欺じゃねえか、あの駄女神め、と心の中で罵るも、ベアトリーチェからの追及が続く。
「……効いてないって、やっぱり何かしたのね。まさかとは思うけど……、『魅了』のたぐいの
「ッ!?い、いや、違うっ!!つーか、オレにも良くわからないっていうか……。多分、自然に発動したんだと思う。この世界にやって来て、まだまだオレの中でもわかっていない
それらしい言い訳をしながら何とか誤魔化そうとしているオレに、疑惑の視線を向けているベアトリーチェが、
「……一応、言っておくけど、もし魅了系の
「んなっ!?だ、大丈夫だ、オレはそんな
マジかよ!?持っているだけで追放対象だと!?じゃあこの
いずれにしても、ベアトリーチェの前では『魅惑の魔眼』は使えなくなった。まだ追及を続けようとするベアトリーチェにオレも疲れたからまた明日と話を切り上げさせて、その日は休むことにした……。
……思っていた以上に上手くいかないな。翌日になり、城下町を案内するという事で、先導するベアトリーチェの説明を聞き流しながら、オレはそう考える。
予定では『魅惑の魔眼』で王女を含めたハーレムを形成していき、圧倒的な力でこの世界の危機とやらを救って英雄ライフを満喫する予定だったというのに……。まぁ、これもしっかりと説明しなかったあの駄女神のせいだ。何が『叡智』と『心魂』を司る女神だ、笑わせやがって……。
「あそこが魔法屋で……、て聞いてますか、トウヤ殿?」
「……ああ、聞いてる聞いてる」
「…………絶対聞いてませんよね」
あからさまに溜息をつくベアトリーチェに仕方ないだろと毒づく。前世の都会を知るオレが、今更こんな数世代は遅れているような城下町とやらを見て心が躍る訳が無い。むしろ溜息をつきたいのはこっちだと文句を言いたいところだったが……。
そんな時、案内していた魔法屋なんていう場所の脇に、何やら見慣れたような物を発見する。
「あの入り口の脇にあるガチャっぽい物はなんだ?」
「……ガチャっぽいも何も、『ガチャ』だけど、これがどうかしました?それとも隣の『カードダス』の事を言ってるのかしら?」
ガチャにカードダスか……。両方ともガキの頃にやった覚えがあるな……。それも『ガチャ』と聞くと、オレのやり込んだソシャゲの事を思い出すが……。
「これも何が出るかわからないようなヤツなのか?玩具とかではなくて……?」
「玩具ではないけれど……、碌な物は出ないと思いますよ?何でも
ふむ……、カードダスの方は本当に唯のカードのようだな。値段も……、銅貨2枚、20円か。オレの知っている奴とほぼ同じヤツだな。そしてガチャの方は……、何やらこの筐体の中にカプセルのようなものが詰まっている訳ではなく、何処か別の空間に繋がっていて、そこから供給しているもののようだ。
(こっちはソシャゲの方の『ガチャ』の仕様のようだな。1回金貨1枚……、30000円のガチャか……。確か何枚か大金貨を崩した分の金貨があったっけか)
確認してみると10枚ほどの金貨があるのを確認して、オレはガチャのところへと向かう。
「……止めた方がいいと思いますけど。もっとお金が欲しいとか仰るのであれば、尚更こんなものに使うべきではないのでは……?」
「大丈夫だって……!オレ、ガチャ運はいい方だからな!どれ、早速やるか……!」
そう言ってオレは金貨を筐体に投入しガチャを回してみた。反対しているベアトリーチェを余所に、筐体がカタカタと反応したかと思うと、ひとつの白いカプセルをコトンと落とす。オレは出てきたカプセルを手に取るとそれが光り出し、何かの欠片を形取った。
『
形状:鉱物
価値:F
効果:大気中にある
……価値『F』ね。まぁ普通に考えてハズレかな?ほら見た事かと言いたげな顔をしているベアトリーチェを無視して、再びオレは金貨を投入すると今度は白ではなく、銀色のカプセルが出てきた……。
『魔法の
形状:
価値:B
効果:傾ければその時点で最良の成分がある魔法の水を掛ける事が出来る、農業向けの
さっきベアトリーチェが言ったように
それでも腐っても
『はずれ』
形状:簡雍紙
価値:H
効果:『はずれ』と書かれた簡雍紙。その名の通りハズレです。残念でした。
「……こんなものもあるのね。私、初めて見たわ……」
……。…………。………………金貨1枚投入して、3万円もかけて……、いくら何でもこれはないだろう……!?
「誰だ、こんなふざけたもん入れた奴はっ!!責任者連れて来い……!!」
「ち、ちょっと……!さっきも言ったけれど、ガチャの筐体の中身は私たちが干渉できるものではないのよ……!責任者なんていないから……っ」
「じゃあ、誰がこんなもんを……!クソッ……」
普通ならこんなもん訴訟ものだぞ……!地雷臭が漂ってきたガチャにこれ以上足を踏み入れるのは危険な感じがするが……、それでもここで止める訳にはいかないだろ……っ!
怒りに震えながらもオレは再び金貨を投入してゆく……。そうして出てきたものは……、
4回目、
5回目、壊れない木の棒
6回目、魔除けのスプレー
7回目、収納カプセル
8回目、使い捨て防御輪
9回目、
……本当に碌な物が出ないな。『
一番マシなのは……『収納カプセル』か?大きさ関係なく小さなカプセルの中に収納しておける物らしく、価値も『B』と
それでも俗にいう『爆死』には違いなく、その様子を見ていたベアトリーチェも、
「……もう止めておきましょうよ。このままだとお金が無くなるまで使ってしまう事になるのよ?悪い事は言わないから……」
「こ、こんな中途半端で止められるかっ!あと、1回っ!!」
止めるベアトリーチェを振り払うようにして、さらにオレは金貨を投入する。すると、ガチャが今までにない演出を見せ、筐体が輝きはじめたと思ったら、金色のカプセルが出てきた……。
今までに無かった演出に、間違いなく
『
形状:魔法書
価値:A
効果:読むと『
「そうそう、こういうのを待っていたんだよ!稲妻を操るなんて、如何にも勇者に相応しい魔法だ……っ!」
「良かったですね……、それではガチャはそのくらいにして、先に進み……」
「いやいや、何言ってんだ?漸く流れが来たんだぞ?ここで引かないでどうする?」
やっと糞みたいな流れが変わって勢いがついてきたところだろうに……。ここで引かなかったら、それこそ今まで耐えてきた意味が無くなってしまう。
気を良くしたオレがさらにガチャへ金貨を投入すると……、筐体がカタカタと揺れ始めて今までになく綺麗に輝き出すと、今までになかった虹色のカプセルを出してきた。今まで白<銀<金ときていたから、虹となると恐らくは……。オレの手の中でカプセルは形を取り始め……、
『星銀貨』
形状:貨幣
価値:SS
効果:失われし古代文明『アルファレル』にて使用されていたとされる硬貨。その素材は宇宙の鉱物に銀を混ぜて作られたとされており、魔術を増幅させるブースターの役目を果たす
価値『SS』が出たか!効果を見てみても、あの大金貨が何十枚の単位で変動するってあるから、かなりの換算額が期待できるだろう。期待できるのだが……、これ、何処かで見た事あるような……。確か……、オレと一緒にこの世界にやって来た、あの頭の薄いメガネがレイファニーから数枚貰ってなかったか……?
すぐさま
『星銀貨』
形状:貨幣
価値:SS → 大金貨200枚ほどに換金可能
…………は?何、この価値?1枚でこれって……。それも、変動する今の価値でこの価格っていう事だ。……アイツ、確か3枚以上は貰ってたよな……?するとオレが貰った大金貨500枚よりも……!
「まさか、星銀貨がガチャから出るなんて……、昨日の『選択の指輪』といい……、もしかして今が引き時なの……?」
「……ベアトリーチェ、王女に連絡は取れるか?」
何やらブツブツ呟いているベアトリーチェにそう問い掛けると、
「王女殿下にって……、貴方、何を考えているのかしら……?」
「決まってる。この星銀貨の件で王女に……」
「……お前なんかを購入したせいで買えなかったんでおじゃるぞっ!!どうしてくれるのだ、このクソアマッ!!」
この件でレイファニーに問い詰めようと思った矢先、この店の裏手の方から、何やら怒号のようなものが聞こえてきた。何だと思って声のした方へ行ってみると、成金風のブタがスラッとした美女を手にしたステッキで殴打しようとしていた。それを見てオレは無意識に
「ぐぽあっ!?」
「ヒルダブルク様……!?貴様、何をっ!?」
さっきのブタのボディガードなのか、その何人かが気色ばんでオレを睨むも、虐げられていた彼女をその背に庇いながらその視線を平然と受ける。こんな雑魚ども、例え束になって掛かって来られても、所詮オレの敵ではない。吹き飛ばされたブタが他の付き人に抱えられながら立ち上がり、血走った眼を向けてきた。
「痛いでおじゃる!!貴様、吾輩にこのような事をして……、タダで済むと思うなでおじゃる!!」
「おじゃるおじゃると煩いぞ。てめえが彼女に乱暴してるから成敗してやっただけだろ。もっと痛い目に遭いたいのか?」
そう言いながら殺気を込めると、怯んだようであったが、
「そ、そんな目で睨んでも怖くないでおじゃる!それに……、吾輩の奴隷をどうしようと……、吾輩の勝手でおじゃる!!それをこのような真似をしおって……、覚悟は出来ているでおじゃるか!?王宮内でも顔の利く吾輩を敵に回して……、精々後悔するがいいでおじゃるっ!!」
「てめえの……奴隷?」
そこでオレは後ろの座り込む彼女をチラッと見てみると、普通の人間じゃないと知った。2本の角のようなものに加え、翼と尻尾のようなものも生やしていて、首輪のような物が付けさせられている。恐らくこれが、奴隷とやらの証という事だろう。
それを見て、オレはムカムカと目の前の成金ブタに対して怒りが込み上げてくる。
「……そうか、無理やり彼女を奴隷にしている、という訳か……。許せないな、てめえは死刑だ」
「な、何を言っているでおじゃる!?別にこの国では、奴隷を持つ事は罪ではないでおじゃるぞ!?その女だって、吾輩が買った奴隷で……」
「黙れ成金ブタ。奴隷を買う等と言っている時点でてめえは悪なんだよ。奴隷を持つ事が罪ではない?そんな訳ないだろ……、勝手に人権も奪っておいて乱暴するのも自由なんて事が許される訳が無い……!グダグダ言ってないで、てめえの罪を数えろ……!」
ぶつくさ言い訳を並べる成金ブタに対し、オレは貰っていた鋼鉄の剣を抜き放つ。それを見て周りのボディガード風の男たちも武器を構えて臨戦態勢に入ったようだ。
「な、なんという無茶苦茶な男だ!?お、お前たち!さっさとこの男を殺ってしまうでおじゃるっ!!」
「「「うおおおお……っ!!」」」
成金ブタの命令で馬鹿な奴らが武器を片手に殺到してくる……。ちょうどいい、相手もオレを殺そうとしている訳だし、
「……『
掛け声と共に剣を掲げると同時に強烈な疾風が巻き起こり、目の前の奴らをあっという間に蹴散らしてしまった。想像していた以上に威力が高いな……、これが剣技か。いいね、流石は剣と魔法のファンタジーの世界だ。
殺気を向けてきたボディガード風の男たちが全員倒れ伏したのを見て、オレはニヤリと笑う。何人かは顔面を切り裂かれ、絶命しているかもしれないが……、そもそも向こうから仕掛けてきたのだ。殺そうとしてくるという事は……、当然殺される覚悟もしているという筈……。この世界ではこういった事も日常茶飯事なんだろうし、一々気にする必要もない。腰を抜かしている成金ブタの方へ剣を片手に近づくと、
「ま、待つでおじゃるっ!!吾輩が悪かった!!だ、だから、命だけは……っ!!」
「……今までてめえに命乞いをしてきた連中を、てめえは助けた事があるのか?どうせないだろ?生きてても無駄だろうし、潔く死ね」
「ヒッ、ヒィィィー……ッ!!」
「……はい、そこまでにして下さい」
トドメを刺そうと鋼鉄の剣を振りかざすと、経緯を見ていたベアトリーチェが割って入ってくる。
「お、おお……!王宮の騎士か!?は、早く吾輩を助けるでおじゃるっ!!そして吾輩を殺そうとした、この男を捕まえるのだ……!!」
「……邪魔するのか?そいつ、オレを殺そうとしたんだぜ?」
「貴方が先に挑発しているように見えましたけどね……。ですが、こう見えて貴方に危害が及ばないようにはしていたんですけど……」
ベアトリーチェのその言葉に、ふと倒れていた男たちをよく見てみると、皆手にした武器が壊れているようだった。
「へえ……、なかなかやるな。だが、それならどうしてソイツを庇う?殺しちゃいけない理由でもあるのか?」
「……一応、この人もストレンベルクの貴族なのよ。だから罪人だとしても、勝手に死なせてしまう訳にはいかないの」
そう言ってベアトリーチェは成金ブタの方を見ると、
「な、何をしているでおじゃる!?吾輩が誰か、わかっていないのか!?さっさとその男を……っ!!」
「……ヒルダブルク伯爵ですね。貴方には要人暗殺未遂の容疑が掛けられています」
成金ブタに対し、そのように断罪するベアトリーチェ。それを聞いて成金ブタが慌てた様に、
「な、なんの事でおじゃる!?吾輩は、そんなこと……」
「昨日の事です、忘れたとは言わせませんよ。それに、貴方には他にも余罪があるようですし、徹底的に洗ってさしあげましょう」
その言葉と同時にベアトリーチェは成金ブタを拘束。冤罪でおじゃるなどと喚く口も封じ、部下らしき者を呼び寄せて連行していった。同時に、オレが蹴散らしたボディガードの奴らの処理もしてゆく。
「……なんか釈然としないな。単純にオレ、襲われ損じゃないか?」
「襲われ損も何も、貴方が挑発した結果だとも思いますが……、まぁ恐らく、あの貴族はお家取り潰しとなるでしょう。それだけあの貴族が犯した罪は重いものです。叩けば余罪も出るでしょうから、一家も含めて追放処分が下される事になります。ですので……、トウヤ殿には今回襲われた事と、摘発していた頂いた功績を持って、あの貴族が持っていた権利等を引き継ぐ……、という事で如何でしょうか?まあ、この国の貴族、という扱いにもなりますが……」
……それなら、別にいいか?あの成金ブタがどれ程の権力や権利を持っていたのかは知らないが、貴族というからにはそこそこの影響力はあったのだろう。ボディガードを雇ったり、奴隷を買ったりできるくらいの金はあったのだろうからな……。
そこでオレは座り込んでいる美女に
NAME:エリス・ヴォルナンド
AGE :144
HAIR:栗色
EYE :スカーレット
身長 :180.6
体重 :55.0
スリーサイズ:72/51/75
性の経験:非処女
HP:265
MP:153
力 :172
敏捷性 :135
身の守り:106
賢さ :161
魔力 :118
運のよさ:24
魅力 :167
うん、いいじゃないか……!オレは座り込んでいるエリスと表示された美女に手を差し伸べる。戸惑う彼女の手を取って立ち上がらせると、オレは自己紹介がてら声を掛けていく。
「大丈夫かい、お嬢さん。オレはトウヤ・シークラインという。もう心配はいらない、君の身柄はオレが責任を持って預かるから」
もう知ってはいるが、君の名は何というのかと問い掛けると、
「わ、私はエリスだ。ご主人様は……捕まってしまったのか?貴方が私を預かる……?すまない、状況がよく……」
「言ったろ?あのブタとの奴隷契約はすぐに破棄される事になるから、君は何も心配する事はないってさ。ちゃんとオレがいいようにしてやるからさ……」
そう言ってオレは彼女の肩を抱き寄せながらこの場を離れる事にする。……解放するんじゃないの、とかブツブツ言っているベアトリーチェの言う事は聞こえない振りをして、
(他の人間の奴隷になってるっていうのは有り得ないが、オレの奴隷となったら話は別さ。そもそも、オレはそんな相手の人権を無視する事はないし、多分奴隷たちも幸せだろう)
魅惑の魔眼もいまいち使いずらいし、ベアトリーチェの目もある。あの成金みたいなブタの事だから、奴隷が彼女1人しかいないとも思えないし、ある意味簡易なハーレムになんじゃね?
そんな事を考えつつ、オレはウキウキしながらエリスとベアトリーチェを伴い、目的は果たしたとばかりに王宮へと戻っていった……。
結論から言うと、あの成金のブタ貴族はお家取り潰しの上、懲役奴隷と呼ばれる奴隷の中でもかなり悲惨なものに落とされたという事だった。どうもこのストレンベルクの要人の暗殺未遂以外にも色々と悪事に手を染めてきており、王家転覆に繋がりかねない事もやらかしていたらしいのだ。
成金ブタの後ろ盾になっていた裏の人間にも見限られたらしく、取り潰しはスムーズに進められ、罪はその家族にも及び、それぞれ幽閉処分や奴隷に堕とされるなどしたようで、他の貴族への見せしめにもなったらしい。
元々王宮の方でも内定が進められていたらしく、本日中には名実と共に、オレはブタ貴族の後釜に座る事となったのだが……、
(悪事の後始末の為に財産もかなり没収となったようだが……、それでもそこそこの財産が手に入ったのは間違いない。面倒な領地経営やらは今までの経営者としてやっていた人間に任せるとして、奴隷や貴重なアイテム、
奴が持っていた違法な金、大金貨にして約800枚ほどのポケットマネーは回収されてしまったが、それを補うほどの収穫はあったと思う。こうしてオレが彼女を待っている事も、その一環だ。
シャワーを浴びたエリスが王宮内に与えられているオレのところにやって来る。その姿はひどく扇情的で、何でも奴隷オークション時に身に付けさせられていた衣装であるという事だ。前世の世界でのアラビアの踊り子が着ているような際どい装束で、モデル並みのスレンダーな彼女を際立たせるのに一躍買っていると思われた。
「……こっちにおいで」
「……はい、失礼します」
呼び掛けると素直に返事し此方にゆっくりとやって来る。一足先に彼女の奴隷の手続きは、あのブタからオレに無事権限譲渡が済んだらしく、戸惑っていた彼女も今では落ち着いていたものだった。幸いと言うべきか、まだあのブタには昨日購入されたばかりだったという事で、手も出されていなかったらしい。最も、エリスはその前から代々仕えていた有名なある貴族の奴隷であり、特別な奴隷でもあったらしく、その家での騒動がなければこのようにオークションに出されてあんなデブが所有する事もなかったという話だ。
まぁ、そんな話はどうでもいい。大事なのは……、今、彼女はオレの忠実な奴隷であるという事、それだけでいいのだ。オレ自身はじめての経験になるのだし、ある程度わかっている娘の方が都合もいい筈だ。
待ちきれずにオレは彼女の手を取り、華奢な肩を抱きつつ座っていたベッドの方へと誘う。昨日の生殺しの状態だったのもあって、これからの行為を想像しながら興奮しているという事もある。
(……やっと、オレの望む展開になってきたな……)
そう思いながら、オレはエリスをベッドのところまで連れてくると、我慢できずやや強引に彼女を押し倒す。最初は慣れない事もあり、色々と手間取ってしまったが……、やがてその部屋からは嬌声が響きはじめる……。
そのようにして……、このファーレルに来て2日目の夜を過ごしてゆくのだった……。
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